稟議を通すためのマーケ予算の説得資料の作り方

マーケティング担当者にとって、「予算をどう確保するか」 は永遠のテーマです。
日々、SEO記事やホワイトペーパー、展示会や広告など、やりたい施策はいくつも思い浮かびます。

しかし、実際に稟議に上げてみると──

「営業投資はすぐ売上になるけど、マーケ施策は効果が見えにくい」
「数字の根拠が弱いから、今回は見送りで」

こんな理由で却下されることも少なくありません。多くの担当者が感じているのは、「良い施策なのに伝わらない悔しさ」ではないでしょうか。

では、どうすれば経営層や上長を納得させられるのか?
その答えは、「費用」ではなく「投資」として見せることにあります。

本記事では、マーケティング予算を稟議で承認させるための説得資料の作り方を解説します。
単なる費用申請ではなく、投資回収のシナリオを数字で示す 経営視点の資料に仕上げるポイントを、具体例を交えながらご紹介します。

現状課題と機会の明示

稟議資料で最初に伝えるべきは、「なぜ今、この予算が必要なのか」です。ここを曖昧にしたまま施策を並べても、決裁者にとっては“ただの願望リスト”に見えてしまいます。

市場環境の変化

デジタルマーケティングの環境は急速に変化しています。
たとえば、Google検索における生成AIの登場により、従来のSEOの成功モデルは通用しにくくなっています。AIが回答を要約することでクリック率が下がり、オウンドメディアの流入は確実に減少傾向にあります。
つまり「現状維持=機会損失」のリスクが高まっているのです。

競合の動き

同業他社は、すでにSEO記事・ホワイトペーパー・ウェビナーを組み合わせ、ファネル全体を設計した集客モデルを構築しています。

・競合A社:月間○件のDLリード獲得 → 受注率15%
・競合B社:展示会依存を脱却し、年間受注の30%をコンテンツ経由で獲得

「待ち」の営業スタイルだけではシェアを奪われる一方 という現実を、データで示すことが重要です。

自社の課題

・リードは獲得できても商談化につながらない
・施策が分断され、営業連携が弱い
・予算不足で十分な記事・ホワイトペーパー本数を投下できない

このままでは、営業現場から「マーケのリードは質が低い」と見なされ、さらに予算が削られる悪循環に陥ります。

今こそ投資の好機

一方で、生成AI時代は裏を返せばチャンスでもあります。

・AIに引用されやすいオリジナル情報(調査レポートや事例記事) を出せば、検索結果よりも目立つ位置で顧客にリーチできる
・営業と連動したナーチャリング設計 によって、DL → 商談化率を数倍に高められる

つまり「競合が守りに入っている今こそ、攻めの投資で差をつけられるタイミング」だと伝えるのがポイントです。

施策の全体像

課題と機会を示したら、次に伝えるべきは「投資すべき施策が全体戦略の中でどう機能するか」です。ここで重要なのは、単発の施策ではなく「ファネル全体をカバーする仕組み」として予算を設計している」ことを明示することです。

全体設計の基本方針

・予算は 認知 → リード獲得 → 商談化 → 受注 の一連の流れに紐づける
・各施策は単独ではなく、必ず隣接施策と接続されるように設計する
・「DL数」「商談化率」「受注率」というKPIを直結させ、ROIを測定できる形にする

ファネル別の主要施策

■認知拡大フェーズ
◯SEO記事制作
・トピッククラスター型の記事群を計画的に公開
・「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」を担保した記事でAI検索にも適応

◯展示会・ウェビナー集客
・SEO記事やSNSからウェビナー申込へ誘導
・外部チャネル(広告、パートナー施策)と連動

■リード獲得フェーズ
◯ホワイトペーパー制作
・課題解決型のDL資料を複数ラインナップ
・SEO記事や広告と連動してDL数を最大化

◯サービス紹介資料/導入事例集
・DL後のステップメールや営業利用に活用

◯ナーチャリングフェーズ
・MA × インサイドセールス設計
・DL直後48時間以内のフォロー架電ルール化
・スコアリングを用いて優先度の高いリードからアプローチ

◯シナリオ型メール配信
・ホワイトペーパーDL → セミナー招待 → 成功事例配信とシームレスに繋ぐ

■商談化・受注フェーズ
◯営業との連携フロー
・SAL→SQLの定義を明確化し、予算効果を追える仕組み化

◯コンテンツ活用型営業資料
・営業現場でも使えるFAQ資料や競合比較表を整備

施策を貫くポイント

・単なる施策の寄せ集めではなく、「リード獲得から受注までの回遊導線を一気通貫で作ること
・各施策の数値(DL数、CTR、商談化率)を紐づけ、稟議時に「どの投資がどの売上に繋がるか」を明確に示すこと
・成果を営業現場と共有し、「マーケ投資は売上を増やす武器だ」と体感させること

投資対効果(ROIシミュレーション)

予算稟議で最も重視されるのは「この投資がどのくらいの売上を生むのか」です。
ここを曖昧にすると「効果が見えない=カット対象」と判断されやすくなります。
そこで、投資額と回収見込みを数値で示し、「費用」ではなく「投資」であることを証明します。

投資額と効果の試算例

◯SEO記事制作
・年間50本 × 10万円 = 500万円投資
・想定効果:月間リード200件(記事経由DL)
・12ヶ月で 200件 × 12 = 2,400件のリード

◯ホワイトペーパー制作
・年間6本 × 40万円 = 240万円投資
・想定効果:1本あたりDL数200件
・6本合計 = 1,200件のDL

◯展示会・広告・ウェビナー
・年間300万円投資
・想定効果:リード600件

商談化率と受注率を掛け合わせる

・合計リード数 = 4,200件
・商談化率 5% → 商談 210件
・受注率 20% → 受注 42件
・平均単価 500万円 → 売上 2.1億円

ROIの算出

・総投資額:1,040万円
・売上効果:2.1億円
・ROI:約20倍
・Payback期間:半年以内に黒字化(初回リード獲得から受注までの営業サイクルを考慮)

経営層に響く見せ方

・「1,000万円の投資 → 2億円の売上」 とシンプルに伝える
・「現状維持の場合(受注停滞) vs 投資シナリオ(売上成長)」の比較表を並べる

最終的には「攻めなければ市場シェアを失い、守り続ければ長期的に損失が膨らむ」という危機感を数値で補強する

リスクと対策

予算稟議で必ず問われるのが、「リスクはないのか?失敗したらどうするのか?」という点です。
ここを先回りして明示し、対策をセットで提示することで、計画の信頼性が格段に高まります。

想定されるリスク

◯リードの質が低い
・数は獲得できても、営業が「商談につながらない」と感じるケース
・営業現場の信頼を失えば、施策全体が空回り

◯施策が分断される
・SEO記事、ホワイトペーパー、展示会などがバラバラに動き、成果が局所最適で止まる可能性

◯外部環境の変化
・Google検索のアルゴリズムや生成AI検索の普及で、従来の施策効果が減衰するリスク

対策

◯E-E-A-T強化でリードの質を担保
・記事やホワイトペーパーに一次情報(調査データ、インタビュー)を組み込み、信頼性を確保
・著者・監修者の明記、専門家コラボで権威性を担保

◯マーケ・IS・営業の連動設計
・DL後48時間以内にISが初回コンタクトするルール化
・スコアリングで「営業に渡すリード」と「ナーチャリング対象」を明確に区分

◯継続的なリライト・改善サイクル
・公開後もGA4・Search ConsoleでCTR・CVRをモニタリング
・四半期ごとにリライト計画を実施し、成果が落ちない仕組みを構築

◯強調すべきメッセージKPI・KGIの設定
稟議が通らない最大の理由のひとつは、「最終的な売上インパクトが見えにくい」 ことです。
経営層は「どの数字を見れば進捗が把握できるのか?」を重視します。そこで、施策ごとに KPI(途中指標) を設定し、それらが最終ゴールである KGI(売上・利益) にどう接続するのかを数式で示すことが効果的です。

KGI(最終目標)

・年間売上:2.1億円(第3章のROI試算に基づく)
・投資回収率(ROI):20倍
・Payback期間:半年以内に黒字化

KPI(施策別の測定指標)

■SEO記事
・月間記事本数:4本
・想定PV数:2万PV/月
・記事経由リード:200件/月

■ホワイトペーパー
・DL数:200件/本
・年間合計:1,200件

■展示会・広告・ウェビナー
・リード数:600件/年

■ナーチャリング(IS・MA連動)
・初回接触率:70%以上
・商談化率:5%
・受注率:20%

KPI → KGIへの接続

・総リード数:SEO(2,400件)+WP(1,200件)+展示会等(600件)= 4,200件
・商談数:リード × 商談化率(5%)= 210件
・受注数:商談 × 受注率(20%)= 42件
・売上:受注数 × 平均単価(500万円)= 2.1億円

経営層へのアピールポイント

・「KPIの積み上げがKGIに必ずつながる構造」 を明示する
・“見える化された管理指標” によって、途中段階での進捗報告・改善が可能であることを強調
・「感覚ではなく数字で管理している」というメッセージが、稟議承認を後押しする

予算内訳

稟議では「総額はいくらか」以上に「なぜその金額を、どの施策に投下するのか」が問われます。
ここで重要なのは、単なる金額一覧ではなく「売上インパクトに直結する配分設計」であることを示すことです。

年間予算総額

1,140万円(税抜)

施策別内訳

◯SEO記事制作
・本数:50本/年
・単価:10万円/本
・金額:500万円
・目的:検索流入からの安定的なリード獲得(年間2,400件想定)
・補足:生成AI時代でも評価される E-E-A-T強化型記事 に投資

◯ホワイトペーパー制作
・本数:6本/年
・単価:40万円/本
・金額:240万円
・目的:意思決定層に響くDL資料を設計し、リードを商談化へ進める(年間1,200DL想定)

◯展示会・広告・ウェビナー施策
・予算:300万円
・目的:SEOやWPでは拾えないターゲット層へのリーチ
・補足:獲得リード600件を想定、SEO/WPと組み合わせてナーチャリング導線を強化

◯運用・改善費用
・予算:100万円
・目的:GA4・Search Console活用による定点観測、リライト・改善PDCA
・補足:SEOは「継続的改善が前提」であり、投資を腐らせないための維持費

配分設計の根拠

・予算の7割を「リード獲得の母数拡大(SEO・WP)」に集中
・2割を「短期効果(展示会・広告)」に投下し、営業部からの即効性要望にも応える
・残りを「改善・維持」に充当し、投資が持続的に成果を生む仕組みを確保

経営層に響くポイント

・単なる消費ではなく、投資回収のための合理的な配分
・「記事・WPで母集団を増やす → 広告・展示会でブースト → 改善で回収率を維持」というストーリーを一貫させる
・この設計により、初年度から黒字化が可能であることを強調

経営メリット(まとめ)

ここまで見てきたように、今回のマーケティング予算は「費用」ではなく、売上を伸ばすための投資です。
最後に、経営層が承認すべき理由を整理します。

売上インパクトが明確

・投資総額:1,140万円
・想定売上:2.1億円
・ROI:約20倍
・半年以内に黒字化可能
・「投資回収の道筋」が数字で示されており、経営層の意思決定リスクを最小化できます。

営業効率の飛躍的改善

・DL直後の即時フォロー設計により、商談化率を最大化
・営業現場に「質の高いリード」を供給し、無駄なアプローチを削減
・結果として 営業生産性(受注率向上・工数削減) に直結

競合優位性の確立

・SEO記事+ホワイトペーパーで生成AI時代に適応したコンテンツ資産を構築
・一次情報・事例活用でAIに引用されやすいコンテンツを作成し、競合との差別化を実現
・短期・中期・長期のバランス投資により、競合が守りに入る今こそ攻めの姿勢を強化

ブランド価値・採用力の向上(副次効果)

・継続的な情報発信が、顧客だけでなく 候補者・パートナー企業 からの信頼向上につながる
・「情報発信が強い企業」というブランドポジションを確立

最終メッセージ

この投資は、単に「リード数を増やす」施策ではありません。
営業成果を最大化し、競合を引き離し、経営成長を加速させる戦略的投資 です。
承認いただくことで、今期の売上成長を確実に実現するとともに、来期以降の成長基盤も築けます。

まとめ|マーケ予算は「費用」ではなく「投資」へ

マーケティング予算の稟議は、単なる申請業務ではありません。
それは、会社の未来に対してどんな成長シナリオを描くかを経営陣に提示する場 です。

本記事で解説したように、稟議を通すためのポイントは以下のとおりです。

・現状課題と機会を明示し、投資しないリスクを伝える
・ファネル全体の施策設計を示し、単発施策ではないことを強調する
・ROIシミュレーションで投資回収の道筋を数値で証明する
・リスクと対策を先回りして提示し、信頼性を担保する
・KPI・KGIの接続を明確にし、進捗管理可能であることを伝える
・予算内訳の根拠を整理し、配分設計の合理性を示す
・経営メリットを売上・営業効率・競合優位・ブランド価値の4軸で整理する

こうした要素を押さえれば、マーケ予算は「費用」ではなく 確実に回収できる投資 として承認されやすくなります。

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