KPIの適切な決め方〜KPIの設定方法を具体例で解説します〜

会社や事業を目指す状態に導くためのマネジメント手法の一つにKPIによるマネジメントがあります。
KPIを適切に設定できるかどうかは、会社や事業が成功するかどうかに大きく関わっています。この記事では、KPIの適切な決め方を解説しています。

KPIの適切な決め方は「SMART×MECE」で設定すること

はじめに結論をお伝えします。
KPIの適切な決め方は、「SMART×MECE」で設定することです。
「SMART」とは、定めたKPIが適切であるかを確認する観点で、以下の単語の頭文字を取っています。

  • Specific|明確であるか
  • Measurable|計測可能か
  • Achievable|達成可能か
  • Related|(ゴールと)適切に関連しているか
  • Time-bound|期限が定められているか

設定したKPIの指標そのものが適切かどうかを確認するために「SMART」の観点を使います。

また「MECE」とは、「モレなくダブりなく」という意味で、以下の単語の頭文字を取っています。

  • Mutually|お互いに
  • Exclusive|重複せず
  • Collectively|全体として
  • Exhaustive|網羅的である

KGIを分解して設定したKPI同士や、KPIとKGIの関係性を確認するために「MECE」の観点を使います。

まとめると、以下の観点でチェックをすれば、KPIが適切に設定できているかを確認することができます。

【設定したKPI自体のチェック】
✓設定した指標が誰が見てもわかりやすく(Specific)、
✓数値で計測ができ(Measurable)、
✓現実的に達成可能な高さで設定がされており(Achievable)
✓経営指標や組織の最終的なゴール・KGIと関連していて(Related)
✓達成すべき期限が定められている(Time-bound)かどうか

【設定したKPIとKGIとの関係性のチェック】
✓KPIを組み合わせるとKGIになる構造となっているか(モレなく)
✓KGIから分解したKPIにおいて、同じ内容を意味する指標が複数存在しないか(ダブりがないか)

ここまでで、KPIの適切な決め方について結論をお伝えしましたが、以降で詳細をご説明します。

KPIとは何か?KGIとの違いは?


そもそもKPIとは何でしょうか。まず、KPIの言葉の定義をご説明します。

KPIとは、組織の目標達成度合いを定量的に表現したものです。
組織が目指すゴールの状態があり、そのゴールを定量的に示したものがKGIです。
ゴールに到達するために通るべきプロセスのなかで最も重要なプロセス(KFS)があり、そのプロセスを定量的に示したものがKPIです。

KPIについては以下の記事で詳しく解説していますので、以下の記事も合わせてご覧ください。
KPIとは何か?KGIとの違いは?

KPIの適切な設定方法その1:SMARTに設定する

KPIの適切な設定方法の1つめである「SMART」の観点について詳しくご説明します。

SMARTの観点で設計したKPIや目標は、具体的な行動に落とすことができます。
この「KPIを行動に分解できるか」が重要なポイントです。

設定したKPI自体を確認する観点1:Specific|明確であるか

設定したKPIはどこかの組織、または誰かの目標となります。
KPIを設計した関係者だけが理解できるような指標指標だと、社員が具体的な行動に落とし込むことができず、KPIや目標は”絵に描いた餅”となってしまいます。

例えば、「自社の取り扱う製品で業界トップになる」という目標を掲げたとします。
この目標だと曖昧な要素が残りすぎています。「自社の製品はどの製品でもよいのだろうか」「業界トップとは売上額だろうか、導入社数だろうか」といった、曖昧な要素が残りすぎていて、社員が具体的な行動に落とすことが難しくなってしまいます。

「取り扱い製品の中でも自社で開発した製品の売上額を5億円にする」のように、誰が見てもわかりやすい、明確で具体的な表現で、KPIを設定することが大切です。

設定したKPI自体を確認する観点2:Measurable|計測可能か

適切なKPIを設定すれば、適切なマネジメントがしやすくなります。
KPIが定量的に計測可能であることも、KPIによって適切にマネジメントをできるかに大きく影響します。

例えば、営業組織におけるKPI設定の具体例で考えてみましょう。

  • A.少しでも多くの未取引顧客への訪問を実施する
  • B.週に3件は未取引顧客への訪問を実施する

営業組織全体において、新規取引による売上額伸長が事業成長に寄与すると判断されたケースで、上記のようなKPIが設定されたとします。

A.とB.のどちらが適切なKPIの設定かは一目瞭然です。A.のKPI設定をした場合、上司は営業担当者の訪問数に対して「多い」「少ない」という主観の入った定性的な評価しかすることができず、客観的で定量的な評価をすることができません。

KPIは評価者の主観によって変わることがないように、定量的に設定をするようにしましょう。

設定したKPI自体を確認する観点3:Achievable|達成可能か

社員は設定したKPIを達成するために逆算して行動します。ただし、どう計算しても達成することのできない理想論すぎるKPIだと、社員のモチベーションを損ねてしまうリスクがあります。
KPIは、「従来どおりに行動していては少し足りないが、工夫をすれば達成できそうなギリギリの水準」に設定をすることが望ましいです。

具体的に説明します。
例えば、自社製品Aで業界トップシェアを狙おうとして、売上額を1億円目指すとします。そのために営業担当者一人につき1,000件/月の新規受注をKPIとなると計算されました。ただし、現状は一人あたりの新規受注件数は月に100件が平均だったとします。
上記のようなケースだと、社会情勢が変わって自社製品に対するニーズが急拡大したり、製品の機能が革新的に進化したりするなど、内外の環境に異常なほど大きな変化がない限り、なりゆきでは達成できないKPIの水準となってしまいます。
逆に今まで通りやっていたら、自然に達成できてしまう水準でも社員のモチベーションを高く維持することは難しいため、結果的に未達になってしまうようなリスクも考えられます。

最後にもう一度いいますが、「少しだけ背伸びすれば届く高さ」いい塩梅に設定することがKPIの適切な設定には重要です。

設定したKPI自体を確認する観点4:Related|(ゴールと)適切に関連しているか

Relatedは、KPIが適切に設定されているかどうかを確認する観点としては最も重要なものだと考えています。
設定したKPIが組織のゴールと適切に関連していること、つまりKPIを組み上げていけばKGIが達成される構造となっていることはKPIマネジメントをするにあたって非常に重要です。
組織の責任者や現場担当者が、KPIを必死に追いかけて日々の業務を遂行しても、その先の成果としてKGIや目指すゴールに到達できないとしたら、目的を見失った組織運営がなされていることになってしまいます。
また、できれば現場担当者の保有スキルや役割とも連動させられると理想的です。

具体例で説明します。
営業組織におけるKPI設計をするときに、

  • 3ヶ月で、営業担当者一人あたり、製品Aの受注4件を目標とする

というマネジメントよりも、

  • 3ヶ月で1,000万円の売上創出が必要。製品Aは平均単価が250万のため、営業一人あたり製品Aの受注4件を目標とする

というマネジメントのほうが、現場担当者の納得感も高く、モチベーションを維持しやすいと考えるのが自然です。
まとめると、KPIは達成した先にあるゴールやKGIと連動していて、KPIの実績を積み上げる現場担当者のミッションとも連動していることが理想的なKPIの設定であるということです。

設定したKPI自体を確認する観点5:Time-bound|期限が定められているか

KPIは未来永劫変わらないものではなく、市場環境や自社の戦略に合わせて適宜カスタマイズされるものです。つまり、「いつまでに」そのKPIを達成する必要があるのかは欠かすことのできない要素です。
設定したKPIをもとに、現場の社員は行動に落とすのだと説明しましたが、期限がなければ社員は行動計画を設定できない、あるいは社員によってバラバラな達成計画となってしまいます。

近年はテクノロジーの発展により、他社の成功事例を簡単に模倣される事業環境となっています。期限を定めずにゆっくりとKPIマネジメントしていると、競合に市場シェアを奪われてしまうリスクがあります。
KPIを設定したら、「いつまでに」「どの水準を」目指すのかを合わせて設計しましょう。

KPIの適切な設定方法その2:MECEに分解する

ここからは、KPIの適切な設定方法の2つめである「MECE」の観点について詳しくご説明します。
MECEの観点は、KPIとKGIとの関係性または、KPI同士の関係性が適切かを確認する観点です。

以下の記事でもご説明したとおり、KPIはゴール、KGI、KFSが設定されてから設定されるという関係性になっているため、KGIとの関係性に不具合があるとKPIは適切に設定されているとは言えなくなってしまいます。
【参考】KPIとKGI・KFSとの関係性

KPIとKGIの関係性を確認する観点1:抜け漏れがないか

KPIとKGIとの関係において、KPIが適切に設定できているかを確認する観点として「抜け漏れがないか」は最も重要です。抜け漏れがないかは、上記の図のような「KPIツリー」で自社の指標構造を分解、整理することでチェックすることができます。

現実には存在している指標構造がKPI設計の際に抜け漏れていると、実績を確認したときに数字が合わなかったり、計画と異なる実績の積み上がり方をしてしまうことになります。

予定していなかった実績が加算されるのであれば良いですが、設定したKPIの構造から漏れている要素については現場レベルでは具体的な行動に落とさない可能性が高いため、実績が不足してしまうリスクのほうが大きいと推察されます。

上記の図でいうと、企画部門のKPIは、①企画分門で管理しているWebフォームからの問い合わせ件数と、②企画部門でリストアップした架電候補リストの件数となっています。

例えば、②のKPIが抜け漏れてしまった場合、企画部門において架電候補リストの抽出業務は推進されづらくなるでしょう。
このように、KPIで組織をマネジメントする場合、設計から漏れてしまったKPIに紐づく行動は推進されなくなり、結果的に組織の成功が阻害されてしまうことになります。

抜け漏れがないかの、具体的な確認方法をひとつご紹介します。
やることはシンプルで、以下のとおりです。

1)KPI構造をツリーで整理する
2)KPI指標に紐づく行動(業務)まで分解する
3)実際に行っている業務がKPIツリーにすべて表現されているかをチェックする

定期的(四半期または半期単位)にKPIツリーを見直して、業務の実態と齟齬がないかを確認することをおすすめします。

KPIとKGIの関係性を確認する観点2:重複がないか

KPIとKGIの関係性を確認する2つめの観点は、KPI指標に重複(ダブり)がないかを確認することです。
抜け漏れがないかを確認する作業と同様に、重複についてもKPIツリー上で確認することがおすすめです。すべての要素がKPIツリー上に表現されていても、同じ内容を意味する要素が複数ツリー上に表現されている場合は要注意です。

KPIを使ってマネジメントする場合には、KPIツリーの最小の要素である「業務」や「行動」をマネジメントすることになりますが、行動Aと行動Bを管理していたと思ったら現実的には行動A=行動Bだったとなると、その行動管理でKPIを達成できるのかが怪しくなります。

具体例で説明します。上の図のように、営業組織のKPIとして、①未契約顧客へのアポ件数、②新規顧客へのアポ件数が設定されていたとします。営業組織の定義では、未契約顧客=新規顧客だった場合、KPI①とKPI②は同一の指標であるといえます。これがKPIのダブりです。

この例は分かりやすいので誰でも気づけると思いますが、実際の自社のKPI構造を整理していくと複雑になってきて、ダブりに気づきづらいこともあると思います。複数人の目でKPI構造に不具合がないか確認することは重要かつ不可欠なプロセスだと思います。

さいごに

KPIの適切な決め方を「SMART」と「MECE」のフレームでご説明しました。
KPIの設定には正解・不正解はありません。ただし、不具合はありえます。設計したKPIに不具合があると、現場部門が日々の業務に困り、最終的な成果に到達できないリスクを抱えて経営に不安が生じます。
KPIを適切に設定して、組織をマネジメントしていきましょう。

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