製品ライフサイクルとは?4つのステージと5つの顧客タイプの特徴について解説します

新しい製品を市場に受け入れてもらうことが大切なフェーズ、あるいは既に市場に受け入れられた製品をもっと多くのお客さまに使ってもらうことが大切なフェーズなど、どのフェーズの製品を扱うかによって、適切なマーケティングのアプローチは変化します。

一般的に製品は、時間の経過とともに顧客の製品理解度や競合の数、生み出される利益などの特徴が変化していきます。このことを体系立てて説明した理論は、製品ライフサイクル(プロダクトライフサイクル)と呼ばれてします。

本記事では、製品ライフサイクルとは何かということや、製品ライフサイクル4つのステージと5つの顧客タイプについて、それぞれの特徴を解説します。

製品ライフサイクルとは

製品ライフサイクルとは、製品の導入から衰退までの売上推移や、市場や競合などの特徴を把握するためのフレームワークです。1950年にジョエル・ディーンによって提唱されました。

製品ライフサイクルの理論によると、製品は時間の経過とともに異なるステージを経ると言われています。製品の置かれたステージを把握し、顧客や競合の特徴や自社の課題などを知ることで、マーケティング施策に活かすことができます。

製品ライフサイクルの4つのステージ

製品ライフサイクルでは時間の経過とともに異なるステージを経ると説明されていますが、具体的には導入期→成長期→成熟期→衰退期の4つのステージを経ると言われています。そして、ステージ毎に顧客の製品理解度や競合の数、生み出される利益などに特徴があります。

製品ライフサイクルの4つのステージごとの特徴については、記事中盤から後半にかけて詳しく解説します。

製品ライフサイクルの5つの顧客タイプ

製品ライフサイクルでは、導入期→成長期→成熟期→衰退期の4つのステージを経ると言われていますが、合わせて、製品ライフサイクルの初期に製品を購入する顧客や後期になって購入する顧客など、顧客のタイプは5つに分類されると言われています。

製品ライフサイクル上の顧客タイプの分類は、新製品や新サービスの普及に関する理論として、別名イノベーター理論とも呼ばれています。社会学者のエベレット・ロジャーズによって提唱されました。

製品ライフサイクルの5つの顧客タイプごとの特徴についても、記事中盤から後半にかけて詳しく解説します。

製品ライフサイクルの活用方法

製品ライフサイクルとは、前述したとおり、製品の導入から衰退までの売上推移や、市場や競合などの特徴を把握するためのフレームワークです。

製品をいつから使いはじめるか、という切り口で顧客のタイプはイノベーター→アーリーアダプター→アーリーマジョリティ→レイトマジョリティ→ラガードの5つに分類されます。更に、製品ライフサイクルのステージごとにマーケティング上の課題や効果的な施策が異なります。

そのため、製品ライフサイクルとは、顧客や競合の特徴、そして自社のマーケティング上の課題を把握するために当たりをつけ、マーケティング戦略の企画や実行に役立てることを目的に活用されます。

覚えておきましょう。

製品ライフサイクルの4つのステージごとの特徴

それでは、製品ライフサイクルの4つのステージごとの特徴を見ていきましょう。

導入期

導入期は、製品が市場に広まっていない段階です。見込み客からの製品認知度も低く、大きな売上を見込みづらい時期です。

競合はまだ少ないですが、見込み客に製品やサービスを理解してもらうために費用をかける必要があるので、利益は見込みづらいです。

成長期

成長期は、より多くの見込み客が製品の特性を理解しはじめ、利用者が増えはじめている段階です。顧客数の増加に伴い、売上の増加を見込める時期です。

一方で、新規参入する競合の数は増えてきます。また、導入期に比べると製品やサービスを理解してもらうために費用をかける必要がないため、利益が見込みやすくなります。

成熟期

成熟期は、ほとんどの見込み客が既に利用している状態です。製品の認知度が上がり低コストで提供できるようになる時期のため、新たにコストをかけて新規参入する企業は減ります。

一方で、既存の競合との競争は激しくなり、販売価格が下がるなどして利益は減少していく傾向があります。

衰退期

衰退期には、新たな市場の流れが起こるなどして、売上が低下し、競合も減っていきはじめる段階です。売上は低下するのに事業コストはほとんど変わらないため、利益は減少していく傾向があります。

このように、製品ライフサイクルの4つのステージでは、それぞれのステージに移行するごとに、競合企業数、そして売上や利益などに変化が生じていく傾向があります。

製品ライフサイクルの5つの顧客タイプごとの特徴

ところで、どんな顧客が、いつから製品を使いはじめるのでしょうか?製品ライフサイクルの4つのステージ内に現れる、5つの顧客タイプごとの特徴を見ていきましょう。

社会学者のエベレット・ロジャーズは、顧客がどのタイミングから購入するかに着目して、顧客をイノベーター→アーリーアダプター→アーリーマジョリティ→レイトマジョリティ→ラガードの5つに分類しました。

イノベーター

導入期の初期には、イノベーターと呼ばれる人が購入しはじめます。いわゆるマニアと言われる層で、新製品が出るとすぐに試すタイプの顧客です。全体の3%を占めると言われています。

アーリーアダプター

導入期の後期には、新しいものが好きであるアーリーアダプターと呼ばれる人が購入しはじめます。全体の13%を占めると言われています。マニアの様子なども伺い、新商品の将来性も予測した上で購入するタイプの顧客です。

彼らは、製品を評価・発信する、いわゆるオピニオンリーダー(集団の意思決定に関して、大きな影響を及ぼす人)として、後に続く一般大衆層に大きな影響を与えます。

アーリーマジョリティ

成長期には、一般大衆層も購入をはじめます。その中でも比較的早いタイミングで購入をはじめる層はアーリーマジョリティと呼ばれます。全体の34%を占めると言われています。

アーリーマジョリティは、オピニオンリーダーの情報を参考にして購入する傾向が高いです。

レイトマジョリティ

成熟期に入ってから遅めに購入を決断するのは、レイトマジョリティと呼ばれる人たちです。アーリーマジョリティが購入して活用する様子を確認してから自分も購入を決断する、いわゆる保守的とよばれる層です。全体の34%を占めると言われています。

アーリーマジョリティとレイトマジョリティ、あわせて約7割の人々が、一般大衆層と呼ばれる人たちです。

ラガード

最も保守的と言われるのが、ラガードと呼ばれる人たちです。全体の16%を占めると言われています。ラガードの人たちは新しいものを好まない傾向が強く、成熟期や衰退期に入っても、最後まで購入しない可能性があります。

このように、製品ライフサイクルのステージによって顧客のタイプも異なります。

製品ライフサイクルに基づいたビジネスフレームワーク

製品ライフサイクルに基づいたビジネスフレームワークについても解説します。

キャズム理論

製品ライフサイクルに基づいたビジネスフレームワークの一つ目は、キャズム理論です。1991年にコンサルタントのジェフリー・ムーアによって提唱されました。

新商品を使い始める人の数は、製品ライフサイクルのステージの変遷とともに、正規分布の形をとります。新規ユーザーが順調に増えていったとしても、急に新規ユーザーが増えないというポイントが現れることがあります。

それまでのやり方は通用しなくなり、多くの企業は乗り越えるのを困難に感じるポイント、それがキャズムです。

キャズムが生じる要因は、製品・サービスを求めている目的が製品ライフサイクルの5つの顧客タイプごとに異なるためです。

初期市場にあたるイノベーターとアーリーアダプターは、新しい製品や技術を率先して利用することで、環境に変化を起こすことを目的に購入します。彼らはリスクを取ってでも先んじて新製品や新技術を導入し、差別化を図ろうとします。

一方、普及市場にあたるアーリーマジョリティやレイトマジョリティ、ラガードは、差別化よりも確実に効果や利益が見込めるものを求めています。そのため、新しいものの採用には慎重であり、リスクが無い(あるいは少ない)と判断できるようになってから採用するという行動をとります。

初期市場(イノベーターやアーリーアダプター)と普及市場(アーリーマジョリティやレイトマジョリティ、ラガード)では根本的なニーズが異なるため、アプローチの仕方を変えないと売れなくなってしまうのです。

キャズム理論に関しては、別記事「キャズム理論とは?キャズムが生じる要因と乗り越え方について解説します」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)

製品ライフサイクルに基づいたビジネスフレームワークの二つ目は、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)です。ボストン・コンサルティング・グループによって1970年代に提唱されました。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)は、市場成長率、相対マーケットシェアの二軸のマトリックス上に、自社の独立した事業を配置することで、それぞれの事業の特徴と、事業のバランスを把握するフレームワークです。

縦軸に市場成長率、横軸に相対マーケットシェアを取り、4つのマトリクス、花形(Star)、金のなる木(Cash Cow)、問題児(Question Mark)、負け犬(Dog)、に分類します。

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)という名称ではありますが、分析する対象は製品ではなく事業になります。簡単にいうと儲かる事業や追加投資が必要な事業、撤退した方が賢明な事業などを仕分けするために利用されるフレームワークです。

そのため、複数の事業を抱えるコングロマリット型の企業でない限り、活用が適さないことが多いです。有名なフレームワークのため本記事でも触れましたが、活用する際には注意するようにしましょう。

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)に関しては、別記事「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とは?考え方と注意点をわかりやすく解説します」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。

留意点

製品ライフサイクルを活用する際の留意点です。全ての製品が導入期から衰退期まで同じような時間軸で変遷を遂げるとは限りません。

例えば、何年もヒットしなかったにも関わらず、TVや雑誌に取り上げられるなど、何かのきっかけで急に売れ出す製品もあります。一方で、導入まもなく急成長するも、すぐに衰退してしまう製品もあります。

そのため、さまざまな製品ライフサイクルの周期がある、という前提で活用するようにしましょう。

また、効果的なマーケティング戦略を練って実行することができれば、成長期の到来を早めることができる、あるいは成熟期に入ってからもブランドが支持されれば、衰退期に入るまでの期間を大幅に遅らせることができるかも知れません。

このように、製品ライフサイクルを自分たちでコントロールする、という意識を持つことも大切です。

さいごに

本記事では、製品ライフサイクルの概要と、4つのステージと5つの顧客タイプそれぞれの特徴について解説しました。

マーケティングの戦略や戦術を検討する際など、顧客や競合の特徴、そして自社のマーケティング上の課題を把握するために当たりをつけることができるので、基本フレームワークとして抑えておきたい理論です。

さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。ビジネスリーダーが知っておきたいフレームワークを中心にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。

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