BtoBマーケティングに携わる方なら、一度は「ホワイトペーパーを作りたい」と考えたことがあるのではないでしょうか。
リード獲得の王道施策とされるホワイトペーパーは、「資料ダウンロード → リード獲得 → 商談化」という流れを生み出し、展示会や広告に依存しない効率的な顧客獲得チャネルとして、多くの企業で活用されています。
ところが、いざ実行に移そうとすると壁にぶつかります。
・上司から「費用対効果はどのくらい?」と聞かれて答えに詰まる
・稟議書を出したが「数字の根拠が弱い」と差し戻される
・競合は次々と魅力的なホワイトペーパーを公開しているのに、自社は動けない
このように、「やりたい」と「実現できる」の間には、意外と大きなギャップがあるのです。
しかしご安心ください。ホワイトペーパー制作は感覚や思い込みで進めるものではなく、費用対効果をシミュレーションし、数字で裏付けることができる施策です。
むしろ、その数字を根拠に稟議を上げられるからこそ、他のマーケ施策よりも承認を取りやすい側面もあります。
本記事では、ホワイトペーパー制作のROI(費用対効果)の算出方法から、稟議書に落とし込む際のポイントまでを、実務でそのまま使える形で解説していきます。
「もう一度、稟議を通してチャレンジしてみよう」と思えるヒントを、ぜひ持ち帰ってください。
目次
なぜホワイトペーパー制作に稟議が必要なのか
ホワイトペーパーを制作するには、10〜50万円ほどの費用がかかります。さらに、外注デザインや取材、広告出稿まで含めると、数十万円〜100万円規模になることも珍しくありません。
マーケ担当者からすると「このくらいの金額なら、成果が出れば十分回収できる」と直感的に感じるかもしれません。
しかし、上長や経営層の視点は違います。彼らが見ているのは、「本当にその投資は回収できるのか?」という一点です。
ここでつまずくのがよくあるパターンです。
・「とりあえず作ってみたい」という提案では説得力に欠ける
・「他社もやっているから」という理由だけでは承認されない
・「期待できる効果は?」と問われ、言葉に詰まってしまう
承認者が求めているのは、感覚的な期待値ではなく、具体的な数値根拠です。
つまり、「このホワイトペーパーで◯件のリードを獲得し、そのうち◯件が商談化、最終的にROIは◯倍見込める」という説明ができて、はじめて稟議は通りやすくなります。
言い換えれば、稟議を通す力は“数字”にあります。
単なる「資料を作りたい」ではなく、「事業成果につながる投資」であると証明できるかどうかが、勝負の分かれ目です。
なお、ホワイトペーパーの基本的な制作フローや費用相場についても押さえておきたい方は、こちらの記事が参考になります。
ホワイトペーパー制作の完全ガイド|費用相場・制作会社・代行活用のポイント
費用対効果(ROI)シミュレーションの基本
ホワイトペーパー制作の稟議を通すうえで、もっとも説得力を持つのは「数字」です。
その中心にあるのが 費用対効果(ROI)シミュレーション。
「この施策に◯万円投資したら、どれくらいの売上につながるのか?」
承認者が知りたいのはまさにここであり、感覚ではなく 定量的な根拠 です。
この章では、ROIとは何か、どの指標を使えばよいのか、そして実際のシミュレーションのやり方を具体的に解説していきます。
読み終えるころには、あなた自身が自社データを使ってROIを算出し、稟議書に説得力のある数字を盛り込めるようになるはずです。
ROIとは何か?
稟議を通すうえで最も強力な武器になるのが費用対効果(ROI)です。
マーケティング施策は「費用をかけて終わり」ではなく、どれだけの成果を生み出せるかが勝負。
ホワイトペーパー制作も例外ではなく、「制作費に対して、どのくらいの売上を生み出せるのか」を数字で示すことが、承認者を動かす決め手になります。
シミュレーションに必要な指標
シミュレーションを行うときに押さえておきたいのは、以下の5つの指標です。
①制作費用:ライティング・デザイン・取材費など。外注すると10〜50万円が相場。
②ダウンロード数:広告・SNS・メルマガ配信で見込める資料DL数。
③商談化率:ダウンロードしたリードのうち、商談に進む割合。一般的には3〜10%。
④受注率:商談から実際に契約に至る割合。10〜30%が目安。
⑤顧客生涯価値(LTV):1顧客から得られる平均売上。
この5つを掛け合わせれば、「投資がどのくらい回収できるか」を具体的に見せることができます。
実際のシミュレーション例
例えば、制作費用を30万円と仮定してみましょう。
①制作費用:30万円
②ダウンロード数:500件
③商談化率:5%(25件)
④受注率:10%(2.5件)
⑤LTV:100万円
見込み売上 = 2.5件 × 100万円 = 250万円
ROI = 250万円 ÷ 30万円 = 約8.3倍
つまり、30万円を投資して250万円の見込み売上を生み出せる計算になります。
上司や経営層に「ROI8倍」という数字を突きつけられれば、稟議の説得力は一気に増します。
ポイントは「自社データに当てはめること」
このシミュレーションはあくまで一例ですが、自社の過去データや業界平均を使えば、さらにリアリティのある数字を示すことができます。
承認者が「納得感」を持つのは、一般論よりも「自社で実際にあり得る数字」です。
まずは一度、自社の営業データやMAツールの実績をもとに、この計算を試してみてください。
数字に置き換えた瞬間、ホワイトペーパー制作は「ただの資料づくり」ではなく、明確な投資対効果が見込めるマーケティング施策として認識されるはずです。
稟議書に盛り込むべき情報
ホワイトペーパー制作のROIをシミュレーションできても、そのまま数字を並べるだけでは稟議は通りません。
承認者が求めているのは、「なぜやるのか」「本当に成果が見込めるのか」「誰が責任を持つのか」といった全体像です。
逆に言えば、このポイントを押さえていれば、稟議はスムーズに承認される可能性が高まります。
では、稟議書にはどんな情報を盛り込めばよいのでしょうか。
企画の目的と背景
まず重要なのは「なぜホワイトペーパーを作るのか」という企画の意図を明確にすることです。
承認者にとって最も納得しやすいのは、現状の課題 → それを解決する手段としてのホワイトペーパー という流れです。
例)
現状:リード数が前年同期比で20%減少している
課題:競合との差別化が難しく、商談数が頭打ち
解決策:専門性あるホワイトペーパーを制作し、検索流入や広告経由で新規リードを安定的に創出
こうして課題と目的を結びつけることで、「作りたいから作る」のではなく「解決策として必然」という筋道を示せます。
費用と予算
次に必要なのが、費用の妥当性です。
・見積もり:制作会社から取得した正式な見積書を添付
・費用内訳:企画・ライティング・デザイン・取材・広告配信費など
・相場感:自社調査や他社の料金事例を併記
承認者は「金額が適切か」を最もシビアに見ます。
「一般的に制作費は10〜50万円、今回の見積は30万円で相場範囲内」といった形で根拠を示せば、承認へのハードルは下がります。
期待される効果(KPI)
費用の次にチェックされるのが「どれだけ成果が見込めるのか」です。
・リード獲得数
・商談化数
・受注数
・ROI(投資対効果)
これらをシミュレーションの数字として具体的に記載することがポイントです。
さらに、「営業資料として活用できる」「ブランドイメージの向上」「SEO効果」といった定性的な副次効果も盛り込むと説得力が増します。
制作・運用体制とスケジュール
最後に、実行可能性を担保する情報です。
・制作体制:外注先と社内担当を明記(責任の所在をはっきりさせる)
・スケジュール:企画1週間、執筆2週間、デザイン1週間 → 公開まで合計1か月
・運用計画:公開後の配布方法(メルマガ、広告、SNSなど)
承認者は「計画倒れにならないか」を気にします。具体的な体制・日程・運用を提示することで、安心感を与えることができます。
稟議書は「数字+ストーリー」で仕上げる
稟議書は単なる数字の羅列ではなく、課題 → 解決策 → 投資額 → 見込成果 → 実行体制というストーリーを描くことで説得力が増します。
この流れを押さえれば、承認者は「これならやる価値がある」と納得しやすくなるでしょう。
ホワイトペーパー制作の稟議が止まってしまう最大の理由は、「承認者が腹落ちできる材料が不足している」ことです。
「やりたい」気持ちは十分でも、経営層に届くのは数字とストーリー。
ここでは、稟議を通すために押さえておくべきポイントと、実際に成果を出した事例をご紹介します。
定量的根拠を示す
まず承認者が気にするのは「数字で説明できるかどうか」です。
・ROIは◯倍
・リード獲得見込み数は◯件
・商談創出数は◯件
このように、投資額と見込成果を数字で対比させることで、説得力が一気に増します。
稟議書の中にシミュレーション表を入れるだけで、承認スピードがぐっと上がることも珍しくありません。
定性的な価値を補足する
数字だけでは語りきれない価値も必ずあります。
・営業資料として流用できる
・SEO流入の強化につながる
・企業ブランドの専門性を高められる
これらは短期的には測定が難しいものの、経営層にとっては大きな納得材料です。
「ROIは8倍見込める上、営業の武器としても活用できます」
──このように定量+定性の両面で価値を示すことが、稟議通過の鍵になります。
他社や過去事例を引用する
承認者は「うちだけがやっている施策」よりも、「業界で一般的な成功施策」に安心感を覚えます。
例えば、
・SaaS企業A社:制作費30万円 → DL500件 → 商談化25件 → 受注3件 → ROI約10倍
・自社の過去施策:展示会出展費100万円で商談数50件 → ホワイトペーパーなら同等成果を1/3のコストで見込める
このような比較があると、「やってみる価値がある」という判断がぐっとしやすくなります。
成功事例のストーリーを語る
ある企業の担当者は、初めてホワイトペーパーを提案した際、上司から「予算が高すぎる」と却下されました。
そこで彼は、ROIシミュレーションを行い、「30万円の投資で250万円の売上見込み、ROIは8倍」と稟議書に明記。さらに「営業資料としても全社活用できる」と定性的効果も補足しました。
結果、承認は即決。公開から1か月で予定以上のDL数を獲得し、営業チームから「提案が楽になった」と感謝されたといいます。
このように、数字とストーリーを組み合わせることが、稟議を通す最短ルートなのです。
費用対効果を最大化する運用の工夫
ホワイトペーパー制作は、公開した時点がゴールではありません。
むしろそこからが本当のスタートです。
せっかく数十万円を投資して制作したのに、「公開しただけで放置」してしまえば、成果は限定的。ROIを高めるには、公開後の運用設計がカギを握ります。
配布導線を徹底的に整える
ホワイトペーパーは作っただけではダウンロードされません。
・メルマガで既存リードに案内する
・SNSやオウンドメディアで拡散する
・リスティング広告やSNS広告で新規層を集める
このように複数のチャネルを組み合わせることで、ダウンロード数が一気に伸びます。
実際、ある企業では「広告+メルマガ併用」でDL数が単独施策の2倍以上になった事例もあります。
ダウンロード後のナーチャリングを設計する
ダウンロードしてもらったリードが、すぐに商談化するとは限りません。
そこで効果を分けるのが、ナーチャリング(育成施策)です。
・DL直後にお礼メールを送る
・数日後に関連記事や事例記事を案内
・1〜2週間後にセミナー招待やデモ体験を提案
この流れを組むだけで「DLで終わりのリード」が「商談につながるリード」へと変わります。
特にBtoBでは検討期間が長いため、このステップを挟むかどうかが成果を大きく左右します。
効果測定と改善を継続する
公開してから3か月後、数値を振り返ってみたときに「思ったほど商談につながらない…」ということもあります。
大事なのは、そこで終わらせず、原因を見つけて改善することです。
・DL数は多いのに商談化しない → ホワイトペーパーのテーマが広すぎるのかも
・商談化はするが受注につながらない → 想定ターゲットと顧客層がズレている可能性
・DL数自体が少ない → 広告やLPの導線を見直すべき
こうして仮説を立てて改善すれば、同じホワイトペーパーからでもROIを高めていくことが可能です。
リライトで“資産”に育てる
ホワイトペーパーは一度作ったら終わりではなく、アップデートして資産化するコンテンツです。
・最新のデータを追加する
・事例を差し替える
・デザインをリフレッシュする
こうした小さな改善を重ねることで、常に「旬」で信頼できるコンテンツとして使い続けられます。
結果的に、ROIは時間の経過とともにさらに伸びていくのです。
運用の工夫がROIを決める
制作だけでROIが8倍になるわけではありません。
公開後の配布導線 × ナーチャリング × 改善・リライトの3つを徹底してこそ、投資が“成果”として返ってきます。
つまり、ホワイトペーパーは単なる「一度きりの制作物」ではなく、継続的に育てるマーケティング資産なのです。
まとめ
ホワイトペーパー制作は、BtoBマーケティングにおける強力な武器です。
しかしその一方で、「稟議が通らない」「効果を数字で示せない」という壁にぶつかり、多くの担当者が足踏みしているのも事実です。
今回お伝えした内容を振り返ると──
・ROIシミュレーションで、投資対効果を数字で証明できる
・稟議書には「目的・背景」「費用」「期待される効果」「体制とスケジュール」を整理して盛り込むことが重要
・数字に加えて、ブランドや営業活用といった定性的効果も伝えることで説得力が増す
・公開後の運用(配布導線・ナーチャリング・改善)がROIをさらに高める
この流れを押さえれば、ホワイトペーパー制作は単なる「資料づくり」ではなく、成果に直結する投資であることを上長や経営層に納得してもらえるはずです。
大切なのは、「作りたい」という思いを数字とストーリーに変えること。
その一歩を踏み出すだけで、稟議の通り方も、施策の成果も大きく変わります。
次はぜひ、この記事で紹介したフレームを使って、自社データでROIを試算してみてください。
「この施策でROIは8倍見込めます」と胸を張って稟議を提出できる日が、すぐそこまで来ています。
さいごに
ホワイトペーパー制作について、こんな悩みを感じていませんか?
・「稟議を通すための数字の根拠をどう示せばいいか分からない」
・「社内リソース不足で、企画があっても形にできない」
・「ダウンロード数は増えたのに、商談につながらない」
こうした課題を放置してしまうと、せっかくのホワイトペーパー施策が 「ダウンロード数だけの自己満足」で終わってしまいます。
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