「もっと効率的に売上や利益を増やしたい」
「そのためにも、もっと効果的なマーケティング活動や営業活動を行いたい」
「でも、そのためにはどのようなコンテンツを準備すればいいのか、よくわからない」
このようなお悩みをお持ちの経営者や事業責任者、マーケティングや営業の担当者の方も多いのではないでしょうか?
効果的なマーケティング活動や営業活動を行うためには、どのような状態のお客さまに対して、どのような情報を提供し、どのような反応を引き出したいのかを事前に整理しておく必要があります。
情報整理の効果的な手段として、バイヤージャーニーを作成し、マーケティングや営業に必要なコンテンツを整理する方法があります。
本記事では、バイヤージャーニーの作り方や、実際にマーケティングや営業に活用する方法について解説します。
目次
バイヤージャーニーとは
バイヤージャーニーとは、企業間取引(BtoB)における見込み客が商品やサービスを認知してから興味を持ち、情報を集めて比較検討して購入を決定するまでの一連の流れのことを指します。
買い手を意味するバイヤー(Buyer)と、旅を意味するジャーニー(Journey)を掛け合わせた造語で、バイヤーズジャーニーと呼ばれることもあります。
バイヤージャーニーとカスタマージャーニーの違い
バイヤージャーニーとよく似た言葉にカスタマージャーニーがあります。カスタマージャーニーは、見込み客が商品やサービスに興味を持ってから購入に至るまでのフェーズだけではなく、購入後の利用定着など、さまざまなフェーズを表すために活用されています。
それに対し、バイヤージャーニーは、BtoBで見込み客が商品やサービスに興味を持ってから購入に至るまでのフェーズに限定して活用されます。つまり、バイヤージャーニーとカスタマージャーニーの違いは、指し示すフェーズの広さにあります。
カスタマージャーニーとバイヤージャーニーは同じ意味で使われることもありますが、商品やサービスの認知〜購入までのフェーズに限定して考える場合には、バイヤージャーニーが使われることが多いです。
バイヤージャーニーの5つの段階
バイヤージャーニーの各フェーズは、以下の5つの段階に分かれています。
認知とは、問題や悩みを認知し、課題を認識し始めるフェーズです。
興味・関心とは、自身の課題を解決するための糸口が見つかり、その解決策に興味や関心を持ち始めるフェーズです。
理解とは、その課題の解決策として商品やサービスが存在することや、その商品やサービスがどのようなものか理解するフェーズです。
比較・検討とは、課題の解決策として実際に商品やサービスの購入を検討しており、競合企業の商品と比較・検討しているフェーズです。
購入とは、最終的に商品やサービスを購入してもらうフェーズです。
詳しくは、後述するバイヤージャーニーの作り方で詳しく解説します。
バイヤージャーニーを作成するメリット
バイヤージャーニーを作成することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。本記事では、4つのメリットについて紹介します。
◎顧客理解が深まる
一つ目のメリットは、顧客理解が深まることです。バイヤージャーニーを作成していく過程において見込み客が選択する可能性の高い行動や、感情の変化について推測することができます。結果、顧客理解を深めることができます。
◎複数担当者で共通認識を持つことができる
二つ目のメリットは、マーケティング担当者、営業担当者、サポート担当者、開発担当者など、複数担当者で共通認識を持つことができることです。共通認識を持つことにより、施策の立案や実行といったアクションをスムーズに行うことができ、資金や時間といったコストの削減にも繋がります。また、精度の高い施策を練ることができるようになります。
◎フェーズ別に必要な情報を整理できる
三つ目のメリットは、フェーズ別に必要な情報を整理できることです。バイヤージャーニーを作成することによって、認知→興味・関心→理解→比較・検討→購入とスムーズに移行していくために必要な情報をフェーズ別に整理することができます。これに合わせて、誰に、どのような手段で情報を伝えるのが良いのかも整理しておくことが大切です。
◎顧客視点でマーケティング施策を評価できる
四つ目のメリットは、顧客視点でマーケティング施策を評価できることです。バイヤージャーニーを作成することによってフェーズ別に必要な情報を整理できれば、自社のマーケティング施策を顧客視点で評価できるようになります。自社のマーケティング施策がバイヤージャーニーに対応しきれていないのであれば、改善や追加施策を検討することができるようになります。
バイヤーペルソナとは
バイヤージャーニーの作り方やマーケティングや営業に活用する方法について解説する前に、バイヤーペルソナについても解説します。
バイヤーペルソナとは、企業間取引(BtoB)においてアプローチ対象となる見込み客像のことです。どのような業種、規模の会社に勤めていて、どのような職種でどのような権限と責任を持ち、どのようなニーズで商品やサービスの導入を検討しているのか、などの情報を洗い出していき、バイヤーペルソナを設定します。
バイヤーペルソナを設定する際には、個人にフォーカスしたペルソナだけではなく、企業にフォーカスしたペルソナも合わせて作成するようにします。また、バイヤーペルソナは一人である必要はなく、アプローチする市場セグメント別に複数人設定しましょう。
ペルソナとバイヤーペルソナの違い
ペルソナとバイヤーペルソナの違いについても解説します。
バイヤーペルソナが、前述したように企業間取引(BtoB)においてアプローチ対象となる見込み客像のことを指します。
それに対し、ペルソナの場合には、企業間取引(BtoB)だけでなく消費者向取引(BtoC)のアプローチ対象や、サービス購入後に登場する利用対象など、さまざまなフェーズに登場する見込み客像を表すために活用されています。
そのため、カスタマージャーニーとバイヤージャーニーの関係と同様に、ペルソナとバイヤーペルソナがほとんど同じ意味で使われることもありますが、バイヤージャーニー(認知→興味・関心→理解→比較・検討→購入)に関連するアプローチ対象に限定したい場合には、バイヤーペルソナが使われることが多いです。
バイヤーペルソナの設定に必要な情報
バイヤーペルソナの設定には、以下のような情報が必要です。
・業種
・所在地
・売上規模
・従業員数
・企業風土
・部署
・役職
・上司
・部下
・年齢
・ミッション
・業務内容
・購入における役割
・購入の動機や課題
・購入の際に重視するポイント
・製品に対する理解度
・比較検討している競合製品
・情報収集方法(専門サイト、展示会、SNSなど)
・情報収集形式(動画形式、記事形式、対面形式など)
バイヤーペルソナを設定する際には、これらの情報を収集して言語化していきます。
バイヤーペルソナの設定に必要な情報の集め方
バイヤーペルソナの設定に必要な情報の集め方についても紹介します。バイヤーペルソナを設定する際には、事実ベースで情報を集めてまとめることが大切です。
事実ベースで情報を集めてまとめるにあたり、対象事業が既存事業なのか新規事業なのかによっても、効果的な手段が異なります。
◎既存事業の場合
既存事業の場合、既存顧客から事実ベースで必要な情報を集めていきます。
例えば、既存顧客に対してインタビューやアンケートの実施や、営業担当者へのインタビューや顧客管理システムに蓄積された過去商談データの調査から、バイヤーペルソナの設定に必要な情報の集めていくのがおすすめです。
既存顧客を分析することにより、どのような見込み客を獲得すれば受注につながる可能性が高いのか、その見込み客はどのような企業に所属しているのか、どのような職務やミッションを持っていることが多いのか、購入の動機や課題、購入の際に重視するポイントに共通点はないか洗い出していきます。
得られた情報から受注につながりやすいバイヤーペルソナを設定し、バイヤージャーニーを作成し、受注目標から逆算してマーケティングを仕掛けていきましょう。
◎新規事業の場合
新規事業の場合、既存事業の場合とは違い、ほとんど顧客がいない状態であることも多いです。そのため、既存顧客から事実ベースで必要な情報を集めていくことができない場合があります。
そのため、受注につながりやすいバイヤーペルソナを設定しようとしても、はじめから精度が高いバイヤーペルソナを設定することは難しいと言わざるを得ません。
新規事業の場合、ターゲット市場に存在する新規の見込み客から事実ベースで必要な情報を集めていくことになります。
例えば、市場調査を行う、あるいは見込み客の候補を絞って複数人にインタビューを行うのがおすすめです。また、プレ営業をかけてしまい、営業ヒアリングを通じて確認することも効果的です。地道に情報を集め、検証を続けることによってバイヤーペルソナの精度を高めていきましょう。
バイヤージャーニーの作り方
ここからは、バイヤージャーニーの作り方について手順を紹介していきます。
バイヤーペルソナを設定する
一つ目の手順は、バイヤーペルソナの設定です。バイヤーペルソナの設定に関しては、前述の内容を参考いただければと思います。
注意点としては、妄想で自社に都合よく設定したバイヤーペルソナを設定しないことです。
妄想で自社に都合よく設定したバイヤーペルソナや、それを基に作成されるバイヤージャーニーでも、情報を整理する上では都合よく働いてくれます。しかし、それを施策に落とし込んで実施してみると、全く効果が出ない、という結果になりかねません。
そのため、事実に裏付けされた人物像を設定することが非常に大切です。バイヤーペルソナを設定する際には、事実ベースで情報を集めてまとめることが大切です。
5つの段階別に求められる情報を整理する
二つ目の手順は、バイヤージャーニーの5つの段階別に求められる情報を整理することです。5つの段階とは、前述した認知→興味・関心→理解→比較・検討→購入の5つのフェーズのことです。
例えば、以下のような悩みが生まれたとします。
「マーケティング部門の予算を削減するように言われたが、どうしたらいいのだろう?」
解決するために、マーケティングの費用を削減するためにはどのようなすればいいのか、インターネットを活用して情報収集を開始したとします。これが認知のフェーズです。
続いて、
「マーケティング部門の予算を見直したところ、LP作成やフォーム作成、メールコンテンツ作成などの外注費をかなり使っているな。内製化できれば今よりもかなりマーケティングの費用を削減することが出来そうだけど、内製化する方法って何があるのだろう?」
と、自身の課題を解決するための糸口が見つかり、その解決策に興味や関心を持ち始め、インターネットを活用して更なる情報収集を開始したとします。これが興味・関心のフェーズです。
続いて、
「MAという製品があれば、LPやフォーム、メールコンテンツの作成が自社でも簡単にできるのか!これがあれば、マーケティング施策の実施数も増やせそうだな。へー、あの会社も使っているのか、これは良さそうだな!」
と、解決策となる製品やサービスを見つけ、その製品やサービスがどのようなものか、機能や事例について情報収集を開始し、概要について理解できたとします。これが理解のフェーズです。
続いて、
「でも、実際に導入するとしたら、どんな基準でどの製品を選べばいいのだろう?」
と、課題の解決策として実際に商品やサービスの購入を検討しはじめ、競合企業の商品との比較・検討を開始したとします。これが比較・検討のフェーズです。
そして、
「よし、買おう!御社のサービスに決めました!」
と、言っていただき、買ってもらうのが購入のフェーズです。
売り手側としては、見込み客となってもらえるよう、各フェーズで発生する課題や疑問の解決に役立つコンテンツを提供していくことが大切です。
各フェーズで発生する課題や疑問の解決に役立つコンテンツがどのようなものになるかを考える上では、バイヤーペルソナを設定する際に集めた事実ベースの情報を参考にしましょう。
5つの段階別に情報収集方法を追記する
三つ目の手順は、5つの段階別に情報収集方法を追記することです。5つの段階別に求められる情報が整理できたら、最適な情報収集方法(専門サイト、展示会、SNSなど)や情報収集形式(動画形式、記事形式、対面形式など)についても情報を整理し、バイヤージャーニーに追記していきましょう。
情報収集方法を追記する際にも、バイヤーペルソナを設定する際に集めた事実ベースの情報を参考にしましょう。
5つの段階別に関与者を追記する
四つ目の手順は、5つの段階別に関与者を追記することです。5つの段階別に求められる情報、情報収集方法、情報収集形式が整理されたら、関与者についても整理し、バイヤージャーニーに追記していきましょう。
情報収集方法を追記する際にも、バイヤーペルソナを設定する際に集めた事実ベースの情報を参考にしましょう。
法人取引(BtoB)の場合、製品・サービスの購入の際に関与者への説明責任が発生するため、合理的に購入可否を判断する傾向があります。そのため、関与者が合理的に判断するための情報が提供できれば、効率的な商談発生につながります。
バイヤージャーニーに関与者も追記しておくことで、関与者に対しても合理的な説明をするために必要な情報は何か、言い換えれば、関与者が合理的に判断するために必要な情報は何か、ということも意識することができるようになります。
以上が、バイヤージャーニーの作り方の手順になります。
バイヤーペルソナ、バイヤージャーニーを作成する過程で、アプローチに必要な情報が整理されていくことを感じていただけたのではないでしょうか?
バイヤージャーニーをマーケティングや営業に活用する方法
ここからは、バイヤージャーニーをマーケティングや営業に活用する方法について紹介します。
コンテンツが準備できているか確認する
まずは、バイヤージャーニーの各フェーズで発生する課題や疑問の解決に役立つコンテンツが準備できているか確認してみましょう。十分でないと感じるフェーズがあれば、そのフェーズで発生する課題や疑問の解決に役立つコンテンツの準備から始めてみることをおすすめします。
バイヤージャーニー上で発生する課題や疑問の解決に役立つコンテンツは、見込み客の課題解決に直接的な貢献ができることが理由です。そのため、自社への信用や信頼の気持ちの醸成にも繋がりやすいです。
また、自社がそれまで手掛けていなかったコンテンツを発信することにもなるため、マーケティングや営業において、新しいアプローチが企画しやすくなります。
コンテンツと情報収集の方法・形式の整合性を確認する
次に、コンテンツと情報収集の方法・形式の整合性を確認してみましょう。バイヤージャーニーの作成によって導き出された情報収集の方法・形式と、自社のコンテンツの提供方法・形式に整合性がない場合には、見直しを行うようにしましょう。
ただし、コンテンツの提供方法・形式については、多ければ多いに越したことはありません。そのため、イヤージャーニーの作成によって導き出された情報収集の方法・形式に合わせたコンテンツを追加していく、という考え方で良いと思います。
もちろん、コンテンツを提供するための運用コストとの兼ね合いもあると思いますので、効果が見込めそうなコンテンツの提供方法・形式に絞るという判断もあると思います。自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間)との兼ね合いを鑑みながら、柔軟に対応しましょう。
競合他社のコンテンツを考慮する
競合他社のコンテンツを考慮することも大切です。特に、商談の際に比較検討されることが多い競合他社のコンテンツであれば、商談の相手(見込み客)も見ている可能性が高いです。
そのため、競合他社が提供しているコンテンツについてもベンチマークしておき、自社にとって必要なコンテンツは追加で用意するようにしましょう。
ただし、競合他社のコンテンツをただ模倣するだけにならないように注意が必要です。見込み客からの信頼を失ってしまう可能性もあります。競合他社のコンテンツを考慮しながらも、自社独自のコンテンツを作成するようにしましょう。
施策の優先順位を決める
そして、追加する施策の優先順位を決めていきます。まずは、バイヤージャーニーの各フェーズで発生する課題や疑問の解決に役立つコンテンツの準備を優先することをおすすめします。
それらのコンテンツは、マーケティング活動と営業活動、どちらにも活用することができる可能性が高く、非常に汎用性が高いものになると考えられます。
また、工数(ヒト・モノ・カネ・時間をどの程度投下するか)と見込み効果との兼ね合いを図ることも大切です。工数が小さく、見込み効果が高いと考えられる施策から手掛けることをおすすめします。
コツ・留意点
バイヤージャーニーをマーケティングや営業に活用する際のコツ・留意点です。バイヤージャーニーの各フェーズで発生する課題や疑問を解決するための施策を用意する際には、コミュニケーションの量と質についても考慮して決めましょう。
一般的には、1対N(一人対複数人)の施策(広告やブログ、ウェビナーなど)の方がコミュニケーションの量を担保できますが、一人ひとりとの深いコミュニケーションは図りづらくなります。反対に、1対1(一人対一人)の施策(個別相談会や営業担当者による商談など)方がコミュニケーションの質を担保できますが、量を担保することは難しくなります。
そのため、バイヤージャーニーの前工程(認知→興味・関心→理解)はマーケティング部門、後工程(比較・検討→購入)は営業部門が担うことが多いです。
見込み客とのコミュニケーション方法を検討する際には、1対N(一人対複数人)の施策の方が有効か、あるいは1対1(一人対一人)の施策の方が有効か、あるいはハイブリッド型(ウェビナーの後に個別相談会を設けるなど)でいくのかなど、どこまでの経営資源を投下できるかも考慮しつつ、見込み客がバイヤージャーニーの各フェーズで発生する課題や疑問を解決するための施策を決めていきましょう。
さいごに
本記事では、バイヤージャーニーの作り方や、実際にマーケティングや営業に活用する方法について解説してきました。
「もっと効率的に売上や利益を増やしたい」
「そのためにも、もっと効果的なマーケティング活動や営業活動を行いたい」
「でも、そのためにはどのようなコンテンツを準備すればいいのか、よくわからない」
このようなお悩みをお持ちだった方も、どのように進めていけばいいかご理解いただけたと思います。
効果的なマーケティング活動や営業活動を行うためには、どのような状態のお客さまに対して、どのような情報を提供し、どのような反応を引き出したいのかを事前に整理しておく必要があります。
関わっている事業が新規事業ではなく既存事業だったとして、
「見込み客の求めていることなんて、そんなのもうとっくに分かっているよ」
と思っていたとしても、あらためて事実ベースで情報を集めてバイヤージャーニーを作成し、マーケティングや営業に必要なコンテンツを整理し直してみることをおすすめします。新しい気付きや発見があるものです。
さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。マーケティングの基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。