BANT vs MEDDIC|営業案件化のためのリードクオリフィケーション比較

営業やマーケティングにおける大きな課題の一つが、「獲得したリードをいかに案件化につなげるか」です。
単に名刺やホワイトペーパーのDL数を増やすだけでは、受注には直結しません。重要なのは、案件化の精度を高める「リードクオリフィケーション(見極め)」です。

その代表的なフレームワークが BANT と MEDDIC。

BANTとは?予算・決裁・ニーズ・導入時期で見極める基本フレーム
MEDDICとは?複雑商材・大手企業案件で使える営業フレーム

それぞれ単独での理解も重要ですが、実際の現場では「どちらをどう使い分けるか」が成果を大きく左右します。

 → まずはリードの定義整理から知りたい方は、こちらも参考にしてください:

MQLとSQLの違いとは?定義・測り方・営業連携のベストプラクティス

本記事では、BANTとMEDDICを比較しながら、

・どんな場面で活用すべきか
・どのように使い分けると効果的か

を解説します。

BANTとは?概要と活用方法

BANT は、IBMが提唱したリードクオリフィケーションの基本フレームワークです。
以下の4要素で案件化の可否を判断します。

・Budget(予算):支払い能力があるか
・Authority(決裁権):意思決定者と接触できているか
・Need(ニーズ):自社が解決できる課題があるか
・Timing(導入時期):検討・導入はいつか

このフレームの強みは、シンプルで誰でもすぐに使えること。
特にインサイドセールスがMQLからSQLへ仕分ける際の「一次判定基準」としてよく使われます。

詳細な解説はこちらにまとめています:
BANTとは?予算・決裁・ニーズ・導入時期で見極める基本フレーム

BANTが有効なシーン

・大量のリードを効率的に仕分けたいとき
・短期決裁が中心の商材を扱っているとき
・営業リソースが限られているとき

MQLとSQLの仕分けに関しては、こちらの記事も参考になります:
MQLとSQLの違いとは?定義・測り方・営業連携のベストプラクティス

注意点

便利な反面、BANTだけに依存すると以下のようなリスクがあります。

・「今は予算がないが将来有望な案件」を切り捨ててしまう
・短期志向に偏り、長期的な関係構築が弱くなる

そのため、BANTで仕分けしつつ、ナーチャリング施策で中長期リードを育成する流れが不可欠です。

実践的なフォロー手法はこちらで詳しく解説しています:
展示会リードを活用したナーチャリング戦略と失敗しないフォロー手法

MEDDICとは?概要と活用方法

MEDDIC は、複雑な意思決定が絡む大手企業案件や高額ソリューションに特化したリードクオリフィケーションのフレームワークです。
1990年代に米国のテクノロジー企業で広まり、今もエンタープライズ営業の現場で広く使われています。
6つの要素で案件を評価するのが特徴です。

・Metrics(定量指標):導入効果を示す数値はあるか?
・Economic Buyer(経済的決裁者):最終的な購買権限者は誰か?
・Decision Criteria(意思決定基準):評価のポイントは何か?
・Decision Process(意思決定プロセス):社内承認のフローはどうか?
・Identify Pain(課題の特定):解決すべき「痛み」は何か?
・Champion(推進者):導入を後押ししてくれる社内の味方はいるか?

このフレームは、単に「案件があるかどうか」ではなく、どうすれば競合に勝てるかを戦略的に可視化するのに役立ちます。

詳しくは個別記事で解説しています:
MEDDICとは?複雑商材・大手企業案件で使える営業フレーム

MEDDICが効果を発揮するシーン

・ERP・基幹システムなどの高額商材導入
・複数部署・購買委員会型の意思決定
・競合他社が多く、案件攻略に戦略が不可欠な場合

大口・複雑案件の攻略方法は、ABM(アカウントベースドマーケティング) とも相性が良いです:
ABM(アカウントベースドマーケティング)完全ガイド|BtoBで成果を出す実践法

BANTとMEDDICの違いを比較

BANTとMEDDICはいずれも「リードを案件化するための判断基準」ですが、評価軸・適用フェーズ・得意領域 に明確な違いがあります。

評価軸の違い

・BANT:予算・決裁権・ニーズ・時期という「基本条件」で判定
・MEDDIC:数値効果、購買プロセス、推進者など「戦略的条件」を深掘り

言い換えると、BANTは「案件化できるか」を見極めるのに強く、MEDDICは「案件を勝ち取れるか」を見極めるのに強いフレームです。

営業プロセスとの親和性

・BANT:インサイドセールスがMQLからSQLに仕分ける一次スクリーニングに最適
・MEDDIC:フィールドセールスが商談を進める段階で有効

BtoB vs 複雑商材での適用性

・BANT:中小規模の案件、比較的短期決裁の商材
・MEDDIC:大企業、複雑な意思決定プロセスを伴う高額商材

項目 BANT MEDDIC
主な目的 リードの一次判定 案件の勝ち筋を見極める
評価軸 予算・決裁権・ニーズ・導入時期 数値効果・購買プロセス・推進者 など
強み シンプルで導入しやすい 複雑商材・大手企業案件に強い
弱み 潜在案件を切り捨てがち 教育・定着に時間が必要
適用場面 MQL → SQL仕分け、短期案件 大手企業・競合激しい案件

このように両者は補完関係にあります。BANTで案件の入口をふるい分け、MEDDICで戦略的に深掘りするのが実務的なベストプラクティスです。

BANTが有効なシーン

BANTはシンプルな評価軸で短時間にリードを判定できるため、大量のリードを効率的にふるい分けたいシーンで特に効果を発揮します。

代表的な活用場面

・インサイドセールスでの一次仕分け
マーケティングリード(MQL)の中から営業リード(SQL)へ引き渡すかどうかを判断する際に有効です。
 → 関連記事:MQLとSQLの違いとは?定義・測り方・営業連携のベストプラクティス

・短期決裁型の商材を扱う場合
SaaSの低価格プランや導入ハードルの低いサービスなど、予算・決裁・導入時期が明確な案件。

・営業リソースが限られている場合
「誰から優先的にアプローチするか」を判断するフィルターとして役立ちます。

注意点

便利な一方で、BANTには以下の落とし穴があります。

・潜在的に有望な案件を見落とすリスク
たとえば「現時点では予算がないが、将来的には大口顧客になる可能性がある企業」を切り捨ててしまうケース。

・短期的な成果に偏りがち
ニーズや時期を重視するあまり、長期的な関係構築を軽視してしまう危険性があります。

そのため、BANTで仕分けした後は、ナーチャリング施策で中長期的に関係を温めることが不可欠です。
展示会リードを活用したナーチャリング戦略と失敗しないフォロー手法

BANTの基本フレームそのものについて詳しく知りたい方はこちら:
BANTとは?予算・決裁・ニーズ・導入時期で見極める基本フレーム

MEDDICが有効なシーン

MEDDICは、複雑な購買プロセスや複数部署が関与する大規模案件に強みを発揮するフレームワークです。
単に「案件があるか」を判定するのではなく、どうすれば勝ち切れるかを可視化できる点が最大の特徴です。

代表的な活用場面

・高額ソリューションの導入案件
ERP・基幹システム・大規模SaaSなど、投資額が大きく導入判断が慎重になるケース。

・購買委員会型の意思決定
経営層・IT部門・現場部門など、複数のステークホルダーが関与する案件では、MEDDICの「Decision Process」「Champion」が力を発揮します。

・競合が激しい案件
単に価格や機能だけでなく、誰が社内の推進者となるか(Champion) を特定することで競合との差別化を図れます。

MEDDICが強い理由

・Metrics(数値指標)でROIを示し、導入の正当性を裏付けられる
・Decision Criteria / Process を把握することで、意思決定の遅延や想定外の障害を減らせる
・Champion を巻き込むことで、営業が直接動かせない社内調整を加速できる

MEDDICの6要素の詳細や具体活用例はこちらで解説しています:
MEDDICとは?複雑商材・大手企業案件で使える営業フレーム

ABMとの相性

大企業や複雑案件の攻略では、ABM(アカウントベースドマーケティング) と組み合わせることでより効果を発揮します。
ABM(アカウントベースドマーケティング)完全ガイド|BtoBで成果を出す実践法

BANTとMEDDICの使い分け戦略

BANTとMEDDICは、どちらか一方を選ぶものではなく、営業プロセスのフェーズごとに役割分担して使い分けるのが理想です。

営業プロセスにおけるBANTとMEDDICの使い分け

MQL(リード獲得)
BANT(一次仕分け)
SQL(営業へ引き渡し)

MEDDIC(案件深掘り)
商談(提案・比較)
受注

※BANTは大量リードの一次判定、MEDDICは大口・複雑案件の勝ち筋設計に有効。CRM/SFAで一元管理するとスムーズです。

基本的な使い分け

・リード獲得直後 → BANT
大量に獲得したMQLを効率的にスクリーニングし、SQLへと仕分ける段階ではBANTが有効。
(例:予算・導入時期が明確な案件を優先して営業に引き渡す)

・商談化〜深耕フェーズ → MEDDIC
高額商材や複数部署が関与する案件は、MEDDICで購買プロセスや社内推進者を把握し、勝ち筋を明確化する。

活用イメージ

①マーケティング/インサイドセールス
BANTで一次評価し、営業に渡す案件を絞り込む。

②フィールドセールス
MEDDICを活用して、ROI(Metrics)、購買プロセス、Championを押さえながら受注率を高める。

ハイブリッド運用のポイント

・BANTとMEDDICをCRM/SFAで一元管理
 ・各フェーズで得られた情報を分断せず、システム上で一気通貫に可視化する。

・案件規模・商材特性に応じて柔軟に選択
 ・小規模・短期案件ではBANTで十分。大規模・長期案件ではMEDDICが必須。

・営業とマーケの役割分担を明確に
 ・マーケ&IS:案件化の確度を高める(BANT)
 ・営業:案件の勝率を高める(MEDDIC)

BANTとMEDDICを組み合わせることで、「案件を選ぶ基準」と「案件を勝ち取る戦略」の両面をカバーでき、リードクオリフィケーションの精度が大幅に向上します。

成功するためのコツと注意点

BANTもMEDDICも強力なフレームワークですが、導入の仕方と運用ルール次第で成果が変わる点に注意が必要です。

案件規模・意思決定の複雑さ別:推奨フレーム
案件規模 意思決定者数/複雑さ 主要な課題感 推奨フレーム 補足
小規模・短期 1〜2名(部門内で即断) スピード重視、工数最小化 BANT 一次仕分けの効率化が最優先
中規模・中期 2〜5名(部門横断の合意) 要件整理と期待効果の明確化 BANT+一部MEDDIC Decision Criteria/Process だけでも押さえると精度UP
大規模・長期 5名以上(購買委員会/経営層) 社内調整とROIの証明、競合対策 MEDDIC ChampionとMetricsを核に勝ち筋設計

※小規模案件にMEDDICをフル活用すると過負荷になりがち。案件規模・複雑さに応じて段階的に適用してください。

BANTに依存しすぎない

BANTは効率的なスクリーニングに向いていますが、条件に当てはまらないリードを「今は不要」と判断して切り捨てがちです。

・将来的に有望な顧客候補を見落とすリスク
・「今予算がない=今後も案件化しない」と誤解するリスク

解決策は、ナーチャリングと組み合わせること。
BANTで優先順位を付けつつ、条件未充足のリードはメール・セミナー・ホワイトペーパーなどで継続的に関係を育成しましょう。

MEDDICは教育と浸透がカギ

MEDDICは要素が多いため、営業担当者にとっては理解・習得に時間がかかります。

・「チェックリスト化」して形骸化する危険
・項目ごとに深掘りせず、BANTと大差ない運用になる危険

営業マネージャーが案件レビューやロールプレイングを通じて、現場に定着させる仕組みづくりが必要です。

CRM/SFAに統合して管理する

BANTやMEDDICの情報を担当者ごとのメモに留めず、CRMやSFAで一元管理すると活用度が飛躍的に高まります。

・「どの要素が不足しているか」を可視化できる
・チーム全体で同じ基準をもとにディスカッションできる
・マーケティング部門と営業部門が共通言語で会話できる

チーム間の役割を明確にする

・マーケティング/インサイドセールス:案件化の確度を高める(BANT中心)
・フィールドセールス:案件の勝率を高める(MEDDIC中心)

役割を混同すると、マーケは「リード数」、営業は「受注数」とKPIが食い違い、連携がうまくいきません。
BANTとMEDDICはそれぞれの強みを活かしつつ、適切な場面で適切なチームが運用することが成功の鍵です。

まとめ|自社の営業プロセスに最適なフレームを選ぶ

BANTとMEDDICはどちらも「リードを案件化するためのフレームワーク」ですが、役割と得意分野は異なります。

・BANT:予算・決裁・ニーズ・導入時期で一次判定
 → リードを効率的にスクリーニングし、SQLへと仕分ける場面に最適

・MEDDIC:数値指標・購買プロセス・推進者まで深掘り
 → 大手企業・複雑商材案件で勝率を高める戦略設計に有効

重要なのは「どちらを選ぶか」ではなく、営業プロセスのどの段階で使うかです。

・MQL → SQLの移行:BANTで効率的に仕分け
・商談深耕・大口案件攻略:MEDDICで勝ち筋を明確化

さらに、CRMやSFAに情報を統合すれば、マーケティング〜営業まで一貫した基準でリードを評価できます。

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