Webマーケティングは、部分最適に陥りやすい傾向があります。さまざまな指標が存在するため、特定の指標は改善しているけれども全体的なパフォーマンスは向上していない、ということもよく起こります。Webマーケティング業務の分業化が進んでいる組織ほどこの傾向が見られます。
しかし、特定の指標が改善しても、全体的なパフォーマンスは向上していなければWebマーケティングとして効果が上がっているとはいえません。そのような背景もあり、Webマーケティングを部分最適ではなく全体最適で捉えるCRO(コンバージョン最適化)の考え方に注目が集まってきています。
本記事では、CRO(コンバージョン最適化)が注目される理由や、施策例についてわかりやすく解説していきます。
目次
CRO(コンバージョン最適化)とは
CRO(コンバージョン最適化)とは、Conversion Rate Optimization の頭文字をとった略語で、シーアールオーと呼ばれます。CROは、Webマーケティングを部分最適ではなく全体最適で捉えながらCVRの向上を図っていくことを指します。
CRO(コンバージョン最適化)は、BtoC(消費者向けビジネス)のECサイトを運営している事業者の方であれば、近年よく耳にする言葉かも知れません。
反面、BtoB(法人向けビジネス)の領域にいらっしゃる方にはまだまだ聞き馴染みのない言葉かも知れませんが、BtoC、BtoBを問わずWebマーケティングにおいて主流となっていく考え方だと思いますので、これを機にしっかりと理解しておきましょう。
CRO(コンバージョン最適化)が注目される理由
CRO(コンバージョン最適化)が注目される理由は2つあります。
Webマーケティングは部分最適に陥りやすい
一つ目の理由は、Webマーケティングは部分最適に陥りやすいということです。
Webマーケティングには、リスティング広告やリターゲティング広告、SEO対策などさまざまな手法がありますが、例えば、リスティング広告だけのCVRに着目した場合、効果的なキーワードのみを残し、他を全部削除してしまえば、すぐにCVRを数%向上させることができる可能性があります。
しかし、リスティング広告のCVRは向上しても、キーワードを削除したことによってリスティング広告の表示回数は減ってしまい、結果としてWebマーケティング施策全体で見たときにCV数が下がってしまう、という可能性もあります。
また、CVRはCVに設定する内容によっても大きく値が変わります。そのため、CVに設定する内容を追加する、あるいは基準を下げるなどによって、CVRを大きく見せることも出来てしまいます。
このように、Webマーケティングは部分最適に陥りやすいため、部分最適ではなく全体最適で捉えながらCVRの向上を図っていくCRO(コンバージョン最適化)の考え方に注目が集まっているのです。
Webマーケティングの競争は激しい
二つ目の理由は、Webマーケティングの競争は激しく、サイトのトラフィックを伸ばすことが難しくなってきているという点が上げられます。
既に様々な企業がリスティング広告やリターゲティング広告などを利用していることはもちろん、独自にオウンドメディアを立ち上げて情報発信をしていることも多く、Webマーケティングにおける競争環境は年々激化しているといえます。また、似たような情報が乱立しているため、Web上での差別化が難しいということもあり、Webマーケティングの難易度は年々上がってきています。
しかし、サイトのトラフィックを伸ばすことが難しいと感じるときでも、サイトのCVRを数%上げることができれば、既に流入が見込めるトラフィックの中からCV数を増やすことができる可能性があります。これも、CRO(コンバージョン最適化)に注目が集まっている理由です。
Webマーケティングの主な指標
CRO(コンバージョン最適化)の施策例を確認する前に、Webマーケティングの主な指標についても理解しておきましょう。
IMP(インプレッション数)
インプレッション数とは、広告なら特定の広告がユーザーに表示された回数、SNSなら特定の投稿がユーザーに表示された回数、SEOなら検索結果に表示された回数のことを指します。
インプレッション数は表示先となる媒体の表示ロジックによって左右されるため、インプレッション数を増やすためにはその媒体の表示ロジックをできるだけ正確に把握しておくことが大切です。
Click(クリック数)
クリック数とは、ある特定の期間のうちに、広告、SNS、または検索エンジン上に表示されたリンクをユーザーがクリックした回数のことを指します。
CTR(クリックスルー率)
CTR (クリックスルー率)とは、Click Through Rate の略語で、インプレッション数のうち、ユーザーがクリックした回数の割合を計算したものです。
- CTR(クリックスルー率)=Click(クリック数)÷IMP(インプレッション数)×100(%)
CPC(クリック単価)
CPC(クリック単価)とは、Cost Per Clickの略語で、広告が1回クリックされるのにかかる費用のことを指します。CPC(クリック単価)は、広告の費用対効果を測る指標として用いられます。
- CPC(クリック単価)=Cost(費用)÷Click (クリック数)×100(%)
Cost(費用)
Cost(費用)とは、広告なら広告費用、SEOなら対策に費やした外注費用等を指します。
CV(コンバージョン)
CV(コンバージョン)とは、目標に至った成果のことです。法人向けビジネスの場合には、問い合わせや資料請求、見込み客の獲得数などをコンバージョンにすることが一般的です。
CVR(コンバージョン率)
CVR(コンバージョン率)とは、Conversion Rateの略語で、サイトに流入したユーザーのうちCV(コンバージョン)に至った割合を示します。
サイト全体ではCVRが高くても、特定のページのCVRが低ければ、そのページは改善する必要があります。そのため、CVRをサイト分析に活用する場合には、なぜその母数を使用するのかを明確にしてから分析を行うようにすることが大切です。
- CVR(コンバージョン率)=CV(コンバージョン)÷セッション数×100(%)
セッション数とは、特定の期間内にサイトに訪問したユーザーの訪問回数のことを指します。
CPL(見込み客獲得単価)
CPLとは、Cost per Leadの略語で、見込み客獲得単価のことを示します。法人向けビジネスの場合、CAC(顧客獲得単価)に影響を与える重要指標とされており、マーケティング担当者にとって非常に関心の高い指標であるといえます。
- CPL(見込み客獲得単価)=Cost(費用)÷リード獲得数×100(%)
法人向けビジネスの場合、獲得した見込み客情報に対して営業のアプローチをかけることがほとんどのため、常にアプローチできる見込み客数を増やす意識を持っておくことが大切です。CPLを低く抑えることができれば、より少ないコストで多くの見込み客を獲得できるということになります。
CPA(コンバージョン獲得単価)
CPA(コンバージョン獲得単価)とは、Cost Per Acquisitionの略語で、コンバージョンを1件獲得するためにかかった費用のことです。主にリスティング広告において活用されることが多く、一回のコンバージョンを獲得するのにかかる費用を表すのに使われます。
設定するコンバージョンは、新規顧客獲得数、お問い合わせの数、資料請求の数などがあり、コンバージョンの難易度によってもCPAの値が大きく変わります。
CPLは見込み客の獲得数を評価しますが、CPAはさまざまなコンバージョンを評価するための指標になります。そのため、場合によってはCPAとCPLが同じ意味として扱われることもあります。
CAC(顧客獲得単価)
CAC(顧客獲得単価)とは、Custmer Acquisition Costの略語で、新規顧客を1件獲得するためにかかった費用のことです。新しい顧客を獲得するために費やしたコスト(マーケティング費用だけでなく、セールスの人件費などすべて含む)に対して、顧客獲得件数を割ることで計算できます。
CAC(顧客獲得単価)は、ユニットエコノミクス(事業単位・プロダクト単位での収益性を表す指標)を算出するためにも用いられます。CAC(顧客獲得単価)は、SaaS型のビジネスをしている企業でよく用いられる用語です。
各用語は実務上でのコミュニケーションでも混同されやすいので、それぞれの違いをおさえておきましょう。
CRO(コンバージョン最適化)の施策例
続いては、CRO(コンバージョン最適化)の施策例について解説します。
STPの見直し
一つ目は、STPの見直しです。STPとは、誰に対してどのような価値を提供するのかを明確にするために決める3つの要素(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)のことです。
STPは、マーケティング戦略の柱とも言えるポイントです。マーケティング戦略においてこのSTPの組み合わせの整合性が取れていなければ、戦術・試作レベルで改善を図ることはかなり難しいといえます。
そのため、CRO(コンバージョン最適化)を考えるに際にも、まずはマーケティング戦略の要となるSTPの見直しから始めるようにしましょう。
3つのMの整合性の見直し
二つ目は、3つのMの整合性の見直しについてです。3つのMとはMarket(市場、顧客)、Message(伝えたいこと)、Media(手段、媒体)の頭文字を表しています。
どのMarket(市場、顧客)を狙うかによって、適切なMessage(伝えたいこと)はもちろんのこと、適切なMedia(手段、媒体)も変わってきます。そのため、3つのMの整合性の見直しについても行うことが大切です。
導線の見直し
三つ目は、導線の見直しです。サイトのトップページやランディングページからコンバージョンポイントの置かれているページに遷移するユーザー数の割合や、フォーム入力から完了して送信するまでのユーザー数の割合に注目しましょう。
サイトのトップページや閲覧ページからコンバージョンポイントに導かれるユーザー数の割合が低い場合には、LPO(ランディングページ最適化)やCTAの改善について検討しましょう。
フォーム入力から完了して送信するまでのユーザー数の割合が低い場合には、エントリーフォームそのものに問題がある可能性があるため、後述するEFO(入力フォーム最適化)について検討しましょう。
CTAの改善
四つ目は、CTAの改善です。CTAとはCall To Actionの略で、日本語では行動喚起を意味します。
CTAを改善する際には、CTAボタンが設置されている位置はユーザー視点で最適なところにあるか、あるいは、CTAによって促されるオファーはユーザー視点で魅力的なものになっているかどうか、という点を確認していきましょう。
表示スピードの改善
五つ目は、表示スピードの改善です。一般的に、Webサイトのページの表示速度が遅いと離脱者が増える傾向があるため、ユーザーがサイトにアクセスしてからページが表示されるまでのスピードを改善するとCVRも改善される可能性があります。
表示スピードを改善するには、画像コンテンツの容量を圧縮する、あるいは、アニメーションなどのリッチコンテンツを減らす対策が有効です。
ABテストの実施
六つ目は、ABテストの実施です。一から五までの見直しと改善の活動を行なってもCRVがあまり向上しない場合には、CVの内容と乖離のない範囲で、ユーザーの興味や関心を引く可能性が高いキャッチコピーやフレーズを用意し、複数のコンテンツでABテストを実施してみましょう。
LPO(ランディングページ最適化)
七つ目は、LPO(ランディングページ最適化)です。LPO(ランディングページ最適化)とは、ランディングページの内容やデザインなどを改善してCVRを高める施策です。広告とランディングページの親和性を高めたり、ボタンの配置や色を変えたりしながらユーザーの反応を検証するような施策が一般的です。
検索意図や広告からユーザーが期待する情報を推測し、その期待に応えられる内容がランディングページ内のコンテンツとして満たされているかを検討していきます。ユーザーの反応を見ながら継続して改善していくことが大切です。
EFO(入力フォーム最適化)
八つ目は、EFO(入力フォーム最適化)です。EFO(入力フォーム最適化)とは、問い合わせや資料請求のために個人情報を入力する、入力フォームを最適化する施策です。
代表的なEFOの施策としては、入力の手間を減らす(ある程度の自動入力)などのユーザー側の入力の手間を減らすための自動処理が挙げられます。また、フォームの設問項目を減らすことや入力例を示すこともEFO(入力フォーム最適化)の取り組みの一種です。
せっかくユーザーがフォームまで到達していても、フォーム入力から完了して送信するまでのユーザー数の割合が低い場合、フォームに問題がある可能性があります。
コツ・留意点
CRO(コンバージョン最適化)について考える際のコツ・留意点は、コンバージョン率(%)とコンバージョン数(実数)のバランスを見ることです。
CRO(コンバージョン最適化)の取り組みによっていくらコンバージョン率(%)が良くなったとしてもコンバージョン数(実数)が目標に到達しなければ、それは目標を達成したことにはなりません。
そのため、コンバージョン率(%)とコンバージョン数(実数)のバランスを見ることが大切です。
さいごに
本記事では、CRO(コンバージョン最適化)とは?注目される理由や施策例について解説いたしました。
CRO(コンバージョン最適化)はBtoC、BtoBを問わず、今後のWebマーケティングにおいて主流となっていく考え方だと思いますので、これを機にしっかりと理解しておきましょう。
さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。マーケティングの基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。