製品ライフサイクルを踏まえたプロモーション戦略の考え方について解説します

マーケティングや商品開発に携わる人であれば、製品ライフサイクルという言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。新製品は程度の差こそあれ、導入期→成長期→成熟期→衰退期と製品ライフサイクルの4つのステージを辿ることがほとんどです。

製品ライフサイクルの各ステージでは競争環境などの条件が違うので、おのずとプロモーション(販売促進)戦略も変わってきます。本記事では、製品ライフサイクルを踏まえたプロモーション戦略の考え方について解説します。

製品ライフサイクルとは

人間は、生まれてから乳児期→幼児期→学童期→青年期→成人期→老年期を経て、やがて寿命を迎えます。この流れをライフサイクルといいます。製品ライフサイクルとは、この人間のライフサイクルの流れと同様に、製品にも発売されてから製品寿命をむかえるまでの流れがある、ということを説明したフレームワークです。

製品ライフサイクルには、導入期→成長期→成熟期→衰退期の4つの段階があります。横軸に時間、縦軸に売上高と利益を取ると、成熟期をピークとした山の形を描きます。この形は、市場の成熟スピードや技術動向によって変化します。

発売前の新製品のプロモーション戦略を考えるような場合には、標準的な山の形を想定するか、過去の類似製品、競合製品で描いた曲線を参考にするか、もしくはその両方を考慮してその新製品が描くであろう製品ライフサイクルの時間軸と売上や利益を推測することになります。

製品ライフサイクルに関しては、別記事「製品ライフサイクルとは?4つのステージと5つの顧客タイプの特徴について解説します」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。

導入期のプロモーション戦略

導入期は、製品が市場に導入されて販売が開始された時点から、徐々に販売数が伸びてゆく期間です。大きな売上は見込めず、市場を開拓して啓蒙していく必要があるので、プロモーション費の支出は高くなり、利益は見込みづらいです。先行企業以外は、市場があるか様子を見ていることがほとんどのため、競合はまだ少ないです。

このタイミングで導入を決めるのは、イノベーター(Innovators:革新者)と呼ばれる新しいものを進んで採用する人々です。全体の2.5%といわれています。ほぼ認知度がない状態なので、イノベーターの目に留まるような場所や媒体を選んで、製品の使用方法や従来製品に対する優位性をアピールしていく必要があります。

成長期のプロモーション戦略

成長期は、製品が市場で受け入れられ、大幅に売上高が増える期間です。プロモーション費の支出も増えますが、売上高がそれを上回って増えるので、利益が出るようになります。成長期の最終段階では、利益がピークをむかえます。

しかし、良いことばかりではなく、市場性を確認できたタイミングで参入する企業もあるので製品数も増え、導入期に比べて競争は激しくなります。この競争にも勝ち残っていかなくてはなりません。

成長期に導入を決めるのは、前期はアーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者)と呼ばれる層、後期はアーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者)と呼ばれる層です。アーリーアダプターは、流行に敏感で自ら情報収集を行い判断する人々です。オピニオンリーダーとなって、他に大きな影響力を発揮することもあります。全体の13.5%程度です。アーリーマジョリティは、ブリッジピープルとも呼ばれ、新しい様式の採用には比較的慎重な人々です。全体の34%程度です。

先行企業は、後発企業に追いつかれないようにプロモーション費を抑えすぎないように注意しましょう。なぜなら、後発企業は安価な製品を出したり膨大なプロモーション費をかけたりと、必死に追いついてこようとするからです。後発企業の戦略としては、スピードと資金力を生かしてシェアを取ったり、先行企業とは差別化を図ったりします。

製品自体の認知度はあるので、どの企業もマスへのアプローチを強化していくとよいでしょう。訴求内容は、自社製品の優位性や差別化ポイントです。アーリーアダプターに対しては、新しいメリットが享受できること、製品が適している理由を実感させるよう意識しましょう。

アーリーマジョリティは比較的慎重な人々なので、イノベーターやアーリーアダプターの導入事例などを訴求すると、相手の興味度や購買意欲をグッと引き上げることができます。

成熟期のプロモーション戦略

成熟期は、製品が市場の潜在的購入者の全てに行き渡り、成長期での販売の伸びに比べて減速する期間です。プロモーションの支出も少しずつ減っていきます。利益はプラスで、安定的に得られるか、競争が激しい場合は減少していきます。一定の需要があり、技術も陳腐化しづらい 製品では、この成熟期が長期間続くこともあります。

このタイミングで導入を決めるのは、レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者)です。新しい様式の採用には懐疑的で、周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をする人々で、全体の34%程度といわれています。

成熟期の市場は、少数の企業が大部分のシェアを持ち、その他のシェアはニッチな企業が占めるという固定化した構造になりがちです。大きなシェアを持つ企業では、シェアの保持と顧客の奪い合いが激化します。低価格を謳ったり、インセンティブで乗り換えを促したりするプロモーションがよく実施されています。ニッチな企業は、シェアを持つ企業との製品やサービスでの差別化をアピールしていきます。

どのケースも留意すべきは、成熟期の後半では売上高が減っていくので、プロモーション費用を使いすぎないということです。市場は縮小しはじめているのに、同じ予算を使い続けないように管理することが重要です。

衰退期のプロモーション戦略

衰退期は、製品の売上が徐々に減少していき、それに伴って利益も減少していく期間です。市場が縮小していくので、プロモーション費用も減らします。大きなシェアを持つ企業は、新規投資をしないので、利益を確保できる場合もありますが、シェアが低い企業になればなるほど利益が激減します。利益がゼロやマイナスに近づくと、事業からの撤退も選択肢に入ってきます。

このタイミングでは製品の利用者も減っています。採用を決めるのはラガード(Laggards:遅滞者)と呼ばれる最も保守的な人々です。ラガードの人たちは世の中の動きに関心が薄く、新しいものを好まない傾向があります。全体の16%程度といわれています。

最後まで購入しない可能性も十分にあるため、積極的なプロモーション施策は取らないという思い切りも必要です。成熟期と同様に、プロモーション費を使いすぎないよう注意し、意識的に減らしていくようにします。

さいごに

本記事では、製品ライフサイクルの各段階と、そこで必要となるプロモーション戦略を解説してきました。導入期→成長期→成熟期→衰退期のどのステージなのかを見誤らずに、適切な施策の方向性を見定めることが大切です。

製品の品質や機能に自信を持っている企業ほど、プロモーションがおざなりになることも多いようです。良いものは売れる、ではなく、良いものなのだからもっと売ろう!という考えを持ってみるのはいかがでしょうか?

特に導入期や成長期は、時間をお金で買うという意識も求められます。この時期の動き次第で、成熟期に大きなシェアを確保できるか、十分なシェアを確保できずに撤退を強いられるかが決まるからです。適切なプロモーション(販売促進)のために限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間)を適切に投下して、製品ライフサイクル全体での利益を最大化させましょう。

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