BtoB事業においても顧客の状態や状況に応じてアプローチを変える「One to Oneマーケティング」という手法が注目されています。
この記事ではOne to Oneマーケティングの基本的な考え方から、BtoB事業における事例、実践の手順、One to Oneマーケティングを実践するためのツールの解説をします。
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目次
One to Oneマーケティングとは
まずはOne to Oneマーケティングについての基本知識を解説します。
One to Oneマーケティングとは、顧客一人ひとりのニーズに合わせて、個別最適なアプローチを行なう取り組みのことです。逆の考え方として、テレビ広告や公共交通機関の広告に代表されるような「マスマーケティング」という取り組みがあります。
顧客一人ひとりのニーズは顧客の状態(心理・行動)や状況(社会環境・組織の方針)から推察します。
One to Oneマーケティングが注目されるようになった背景:価値観の多様化
One to Oneマーケティングが注目されるようになった背景の1つは、「価値観の多様化」です。
マスの情報発信を受け取って多くの人が共通の価値観を共有していた時代から、インターネットやSNSの普及により、個人が主体的に情報収集をできるようになったことで、多様な価値観が発生するようになりました。
これにより、画一的なプロモーションでモノやサービスが売る手法に限界が訪れ、一人ひとりの価値観=ニーズに合わせたコミュニケーションをしなければモノやサービスが売りづらい状況になりました。
その結果、One to Oneマーケティングという考え方が生まれ、注目されるようになったと言われています。
One to Oneマーケティングが注目されるようになった背景:技術の進歩
技術の進歩もOne to Oneマーケティングの普及に寄与しています。
価値観の多様化前にも、営業担当者は担当企業に対して、個別の提案書を作成して営業活動をしていたように、個別の提案がより物を売りやすい手法であることは明らかでしたが、それをマスと同じ規模で展開することには技術的な制約がありました。
しかし、ITの発展により、オンライン、オフライン問わず、ありとあらゆる情報がデータとして取得できるようになってきたことで、One to Oneマーケティングを実現するための環境が整ったと考えられています。
例えば、クラウドサービスであれば自社製品の利用ログを取得できますし、多くの人がスマートフォンを所持していることによりどんな属性の人がどんな時間にどこにいるのかといった位置情報も容易に取得できるようになりました。
これまではやろうとしてもできなかったOne to Oneマーケティング施策が、技術の発展によりできるようになったことも、One to Oneマーケティングが注目されるようになった一因と考えられています。
One to Oneマーケティングのメリット・効果
One to Oneマーケティングを実施することで、個人別のメッセージングやアプローチタイミングのマネジメントができるようになります。当然、画一的な施策よりも個人別の施策の方が効果は高くなります。
つまり、One to Oneマーケティングを実施すると、実施施策の効果を高めることができるというメリットがあると言えます。
データの解釈さえ誤らなければ、顧客は自分のニーズに合った情報やアプローチを受けられます。つまり、自社のマーケティング施策が顧客からポジティブに受け取られるということを意味します。
一方、個人別にアプローチを出し分けるためには顧客の分析やセグメントの作成など実施までのハードルが存在していますが、これについては先述したとおりITの進歩により実施のハードルを下げられています。
BtoB事業におけるOne to Oneマーケティングの手法
One to Oneマーケティングをより具体的にイメージするために、いくつかの手法をご紹介します。
レコメンデーション
ECサイトで「あなたへのおすすめ」などのように、サイトからおすすめ商品が表示されることがあると思います。これがレコメンデーションです。
おすすめ商品を選定するロジックはサイトや企業によって様々ですが、顧客が過去に閲覧または購入した商品といった、過去の行動履歴を活用して選定していることがよくあるパタンです。
閲覧または購入した商品と類似の商品が表示されることもありますし、その商品を購入した別のユーザーがよく購入しているものをおすすめするというようなロジックで選定することもあります。
レコメンデーションの目的は顧客の関心が高いであろう商品を表示することで、より購買の可能性を高めることです。
リターゲティング
リターゲティングもOne to Oneマーケティングの代表的な手法の一つです。
リターゲティングとは言葉の通り、自社サイトを訪れた顧客に対して、再訪問させるために広告を表示したり、メールを送信したりする手法のことです。
リターゲティングは多くの場合、広告の手法として語られますが、メールでのリターゲティングもOne to Oneマーケティングではあり得る手法です。また、その逆でメールのリターゲティングを広告で行なうといったやり方もあります。
リターゲティングの目的は、サイトへの再訪問などの行動喚起や単純接点頻度を高めることにより第一想起率をあげることです。
パーソナライズされたメールやDM
メールアドレスや住所情報が取得できている場合には、メール配信やダイレクトメール(DM)の発送という手段もOne to Oneマーケティングにおいては有効です。
匿名の誰かに向けた広告よりも、宛名や個人の志向に合わせた内容をパーソナライズした内容のメールやDMの方が、より顧客の興味関心を惹くことは言うまでもないでしょう。
LPO(ランディングページ最適化)
LPO(ランディングページ最適化)もITが発展した現在のOne to Oneマーケティングにおいては、よく用いられている手法です。
LPOとは「Landing Page Optimization」の略称で、ランディングページのコンテンツを訪問顧客に合わせて出し分けることで、問い合わせ発生率や購買率を高める手法です。
自然検索や広告から自社サイトに流入してきたタイミングは、自社と顧客の最初の接点です。
このタイミングで顧客にとって興味のない情報を表示してしまうと、顧客がサイトから離脱してしまう確率が上がってしまいます。
離脱させずに興味関心を惹くためには、顧客の興味関心に合わせたコンテンツをサイト上に表示させる必要があります。例えば、マーケティングコンサルの会社であっても、「営業 成約率改善」というキーワードで流入した顧客にランディングページ上で画一的に「マーケティングのプロ集団」と訴求するよりも、「営業成約率を向上させるためのマーケティング支援」と、検索ワードに応じて訴求する方が問い合わせにつながりやすくなるはずです。
このように、顧客の興味関心に合わせたコンテンツをサイト上に表示させる手法がLPOです。
One to Oneマーケティング実践に必要な3つの要素
One to Oneマーケティングを実践するためには、3つの要素が必要です。
One to Oneマーケティングを実践するために必要な要素は以下の3つです。
- 1.顧客データ
- 2.筋の良い仮説
- 3.効果測定の仕組み
One to Oneマーケティングに必要な要素:顧客データ
One to Oneマーケティングを実践するためにまず必要なのは「顧客データ」です。
顧客データは「行動データ」と「属性データ」に分けて考えます。行動データとは、顧客のオンライン上・オフライン上での行動ログや、購買履歴などの動的な情報です。属性データとは、氏名・所属会社名・メールアドレス・電話番号などの静的な情報です。
One to Oneマーケティングは顧客一人ひとりに応じてアプローチを変えるため、顧客がどういう興味関心を持っているのかを推察する必要があります。施策を実施するたびに、顧客全員にアンケートをすることは現実的ではないため、データベースに保存されている顧客の情報をもとに推察をする必要があります。
One to Oneマーケティングの実践のためには、日頃からメールマガジンの登録や電子ブックのダウンロードやアンケートなどを使って顧客データを蓄積していくことが重要です。
One to Oneマーケティングに必要な要素:筋の良い仮説
One to Oneマーケティングを実践するためには「筋の良い仮説」が最も重要と言えます。
ニーズを推察するための顧客データが手元に揃っていても、データの解釈をするための仮説がなければ意味がありません。「自社サイトの料金ページを複数回訪問しているが、問い合わせページヘの訪問履歴はないから、まだ情報収集フェーズの顧客ではないか」といった仮説を前提として、打ち手の検討をします。そのため誤った仮説に基づいて打ち手を実行すると、期待する効果が得られない結果となってしまう可能性があります。
よって、One to Oneマーケティングには、適切なデータの解釈、すなわち筋の良い仮説が必要です。
One to Oneマーケティングに必要な要素:効果測定の仕組み
One to Oneマーケティングを実践するために必要な3つ目の要素は「効果測定の仕組み」です。
One to Oneマーケティングの目的は施策の効果を高めることです。One to Oneマーケティングを実行した結果の効果がどうだったのか、PDCAサイクルを回す必要があります。
そのためには、目的変数とする指標の効果を計測できるようにしておくことが非常に重要です。
One to Oneマーケティングの実践を助けるツール
One to Oneマーケティングを実践する際には、データの蓄積→分析→打ち手の実施→効果測定というプロセスを通りますが、どのプロセスでも自力で実践するには負荷が高いことが想定されます。
One to Oneマーケティングの実践を助けてくれる代表的なツールをご紹介します。
MA(マーケティングオートメーション)
One to Oneマーケティングと最も相性がよいツールと言っても過言ではないのが、MA(マーケティングオートメーション)です。
MA(マーケティングオートメーション)は、顧客データを蓄積するデータベース機能から、データを活用してメールをOne to Oneに送信できる機能、施策の結果をレポート化する機能が備わっています。
詳しくは以下の記事で詳述していますので参考にご覧ください。
【参考】マーケティングオートメーションとは?導入するメリットと使い方をわかりやすく解説します
CRM(顧客管理システム)
CRM(顧客管理システム)もOne to Oneマーケティングの実践を助けてくれるツールです。
CRM(顧客管理システム)とは、顧客関係の維持・向上を目的に、事業におけるおよそ全ての顧客情報とやり取りを記録するために活用されるソフトウェアのことを指します。
CRM(顧客管理システム)単体では、顧客へのアプローチといった施策の実行ができないツールも多いですが、MA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業管理システム)との連携ができるシステムが多いことも特徴です。
詳しくは以下の記事で詳述していますので参考にご覧ください。
【参考】顧客管理とは?顧客管理システムの種類やシステム導入時の注意点について
SFA(営業管理システム)
SFA(営業管理システム)は営業活動の履歴をシステムで記録するツールですが、マーケティング施策に営業活動の結果データを活用することは多々あります。
そのため、SFA(営業管理システム)もOne to Oneマーケティングを実践することを助けてくれるツールの一つです。
詳しくは以下の記事で詳述していますので参考にご覧ください。
【参考】SFAとは?導入するメリットとMA・CRMとの違いをわかりやすく解説します
さいごに
One to Oneマーケティングの基本概念から具体的なやり方まで丁寧に解説してきました。
ぜひ実際の業務に活かして、施策効果の向上にお役立てください。
さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。マーケティングの基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。