突然ですが、あなたの会社では、顧客管理(リードマネジメント)を適切に行なっていますか?
- 営業やマーケティング、CSがアプローチできるリードの数は?
- データベースにアクセスすれば、すぐに調べられる?
- データベースにすぐにアクセスできる?
- 管理している顧客情報は、営業やマーケティングの施策に活用できる?
- それぞれのセグメントにおけるリードの数は?
- アプローチせずに、放置されている名刺は?
- 今月受注の可能性のある案件の数、売上見込みは?
- 受注に繋がった案件の発生経路は?
冒頭から不躾な質問をしてしまいましたが、上記の質問の中に、わからない、もしくはすぐに調べることが難しいという内容があれば、顧客管理の方法に改善の余地があるかもしれません。
顧客管理は、企業がBtoBマーケティングを実践する上で、要(かなめ)となるプロセスです。営業やマーケティング、CSが顧客にアプローチするために必要な情報を適切に管理し、それぞれの顧客にあった情報を提供することができれば、顧客との良好な関係を長期的に継続することや、ビジネスを大きくスケールさせることにもつながるでしょう。
本記事では、主にBtoBマーケティングにおける顧客管理(リードマネジメント)の基本を説明するともに、顧客管理の方法や顧客管理システム導入時の注意点について解説します。
目次
顧客管理とは
顧客管理とは、顧客とのやりとりに関連する多面的な情報を一元管理することを指します。顧客管理というと、会社名や部署名、役職、連絡先といった情報を管理することだけを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、実際に顧客管理を行う際には、過去に実施したマーケティング活動の履歴、過去の商談の記録、取引実績などといった多面的な情報を対象に管理できた方が得策です。
顧客管理には、営業やマーケティング、CSが有効活用できることや、蓄積したデータを分析できることなど、多面的な役割を求められます。簡単なことのようで非常に奥が深いのが、顧客管理です。
顧客管理が注目される背景
インターネットやデジタルマーケティングの普及により、10年前と比べ、企業間取引においても購買行動の変化が見られるようになりました。以前であれば、付き合いのある業者から情報を得ていた買手側の企業も、最近ではインターネットを使って自ら情報を収集しています。市場には製品やサービスの供給が飽和しており、競合他社との競争も激しくなっています。また、買手側の企業も自ら情報を収集するようになったこともあり、競合他社と比較検討される可能性も高くなりました。
このような顧客側の購買行動の変化に対応するため、One to Oneマーケティング(企業がマーケティング活動を行っていく際に、顧客一人ひとりの趣向や属性などを基とした上で、顧客に対して個別にマーケティングを行うこと)が広まり、One to Oneマーケティングを実施するためのツールも急速に普及してきています。MA、SFA、CRMなどは、正にそのためのツールであるといえます。顧客管理を行い、顧客とのやりとりに関連する多面的な情報を一元管理することは、MA、SFA、CRMなどを使いこなすためにも、とても重要な役割を担っています。
顧客管理を実施するメリット
顧客管理を実施するメリットは、大きく4つあります。
1.顧客情報の管理漏れを減らすことができる
一つ目のメリットは、顧客情報の管理漏れを減らすことができることです。展示会で獲得した名刺など、机の引出しに眠っている名刺は無いでしょうか?組織的に顧客管理を実施することができれば、それまで営業担当者の机の引出しに眠っていた名刺も、有効活用されるようになるでしょう。
2.One to Oneマーケティングを実施することができる
二つ目のメリットは、One to Oneマーケティングを実施することができることです。顧客管理を適切に行うことができれば、属性情報や行動情報、取引情報などのデータを活用して、顧客をセグメンテーションできるようになります。営業やマーケティング、CSでは、顧客ニーズに最適な製品やソリューションを提案することができるようになり、アプローチの効率を上げることができます。
3.合理的な戦略・戦術の立案に生かすことができる
三つ目のメリットは、合理的な戦略・戦術の立案に生かすことができることです。顧客とのやりとりに関連する多面的な情報を一元管理することができれば、受注案件に共通する傾向や、失注案件に共通する傾向も分析できるようになるでしょう。経験や勘に頼った戦略や戦術は、失敗のリスクも高くなります。顧客とのやりとりに関する多面的な情報を蓄積し、事実に基づく合理的な戦略・戦術を立てましょう。
4.顧客の引継ぎ業務を容易にすることができる
四つ目のメリットは、顧客の引継ぎ業務を容易にすることができることです。例えば、A社を担当している営業担当者が急に退職することになったとします。顧客管理が適切にされていなかった場合、A社とのこれまでのやりとりや、担当者の連絡先がわからなくなってしまうかもしれません。これは極端な例かもしれませんが、全ての情報が無くならないまでも、引継ぎの漏れが発生するなど、顧客情報が欠損する可能性があります。顧客の引継ぎを容易に行うためにも、顧客管理は必要な取り組みとなります。
Excelによる顧客管理が抱える3つの問題
Excelは非常に優秀なツールです。多くの人が使いなれている、かつPCにインストール済みの人も多いため手軽に活用することができます。初めて顧客管理に取り組む場合や小規模な特定のプロジェクトだけで活用する場合などには、Excelによる顧客管理で十分対応できることもあるでしょう。
しかし、中長期的な顧客管理の観点から申しますと、Excelでの顧客管理はあまりおすすめできません。Excelで顧客管理を行う場合、大きく3つの問題に直面します。
入力性の問題
一つ目は、入力性の問題です。Excelは、情報が横に積み上がる性質のため、入力漏れが起こりやすいという問題があります。また、データ量が増えるとファイルを共有して複数人で開くことが大変になります。ファイルのコピーや拡散も容易なため、バージョン管理やデータのマージ作業なども複雑化してしまう傾向があります。
拡張性の問題
二つ目は、拡張性の問題です。Excelは単一目的のためにデータを管理、加工するには非常に優秀なツールです。しかし、メールマーケティングの実施、インサイドセールスの導入など、業務領域を拡張していく際には、他部門の活用しているデータベースやツールとの連携が即時性の観点から難しく、新しい施策の実行難易度が上がってしまう、といった問題が生じてしまう傾向があります。
通知性の問題
三つ目は、通知性の問題です。入力されたデータを起点として通知する機能が弱いため、顧客管理に活用する場合「適切なリード」に「適切なタイミング」でアプローチすることが難しいです。Excelの顧客とのやりとりを記録する欄に「◯月○日に△△について連絡する」と書いていたとしても、うっかり連絡し忘れてしまう、といった具合です。
小さい問題のように感じるかもしれません。しかし、営業部門やマーケティング部門といった組織体で顧客管理を行う上では、Excelでの顧客管理では限界が生じてしまいます。
顧客管理システムの種類
顧客管理システムの種類について見ていきましょう。顧客管理を行うためには、顧客情報のデータ蓄積を行うためのシステムが不可欠です。そのため、扱う顧客情報の種類やデータの量によって、顧客管理を行うための要件を満たせるシステムも異なってきますし、データの共有や顧客情報へのアクセスのしやすさも考慮しておく必要があります。
代表的な顧客管理システムは、以下のとおりです。
MA(マーケティングオートメーション)
MA(マーケティングオートメーション)は、顧客管理を含め、マーケティング施策を行う上で必要な複数の機能を備えたツールです。また、Web閲覧履歴やメールの開封履歴、アンケートの回答に至るまで、主にマーケティング活動(見込客の獲得〜案件化まで)で得た顧客の反応を記録することができ、それらの情報を顧客リスト作成時のセグメンテーションに利用することができます。
◎メリット
・行動情報(マーケティング活動で得た顧客の反応)をセグメンテーションに活用できる
・業務の一部をシステムで自動的に行うことができ、工数削減ができる
◎デメリット
・初期費用やランニングコストが比較的高価
・システム要件を検討するだけでも、かなりの工数がかかる
・MAの設定や最適化を行うためには、専門的な知識が必要
SFA(営業支援システム)
SFA(営業支援システム)は、顧客管理を含め、営業活動を行う営業担当者や、営業担当者の活動を管理するマネージャーの業務を効率化するために必要な機能を備えたツールです。主に営業活動(案件化〜受注に至るまで)のプロセスや顧客とのやりとりについて記録することができ、営業活動や受注見込み情報の可視化、営業プロセスの分析を行うことができます。
◎メリット
・営業活動を効率化できる機能が搭載されており、Excelより少ない工数で運用できる
・売上や成約率などを可視化するレポート機能やToDo機能などを活用し、スムーズに情報共有できる
◎デメリット
・初期費用やランニングコストが比較的高価
・MA同様、システム要件を検討するだけでも、かなりの工数がかかる
・MA同様、SFAの設定や最適化を行うためには、専門的な知識が必要
CRM(顧客管理システム)
CRM(顧客管理システム)は、顧客管理の専用ツールといえます。顧客管理を含め、経理などの部署が扱う顧客情報も一元的に扱うことが可能です。顧客になってから(受注後)の顧客とのやりとりや、取引情報、支払情報など、様々な情報を管理することが可能です。そのため、戦略的な全社横断的に顧客管理を行うのに適しています。最近では、CRM(顧客管理システム)にMAやSFAの機能がセットになっているツールも存在しています。
◎メリット
・全ての顧客情報の一元管理ができるため、情報の有効活用ができる
・マーケティング、営業、CS、経理などの部門間のデータ共有が容易になる
・MAやSFAなど、他のシステムとのデータ連携が可能なシステムが多い
◎デメリット
・初期費用やランニングコストが比較的高価
・MAやSFA同様、システム要件を検討するだけでも、かなりの工数がかかる
・MAやSFA同様、CRMの設定や最適化を行うためには、専門的な知識が必要
会計管理ソフト
会計管理ソフトは、入出金の記録管理などをおこなうためのツールです。顧客情報を管理するための機能も一部備わっていますので、それらを活用して顧客管理を行う方法もあります。
◎メリット
・購買実績などの情報をもとに、アプローチの優先順位を決めることができる
・アップセル・クロスセルの戦略作りの基礎データとして購買実績を活用できる
◎デメリット
・顧客の行動履歴を詳細に把握するための機能は備わっていない
・営業やマーケティング、CSなどのアプローチにそのまま活用できる形のデータ抽出が難しい
名刺管理ソフト
名刺管理ソフトとは、名刺に印刷されている会社名、氏名、メールアドレス、電話番号などのさまざまな情報を、スキャン機能を使って読み込み、データに変換して管理できるソフトを指します。顧客情報を営業やマーケティング、CSなどのアプローチに活用しやすくするためにも、名刺管理ソフト活用してデータ化しておくことが大切です。
◎メリット
・名刺に印刷されている様々な情報をデータに変換して管理することができる
・データ化した顧客情報にPCやスマートフォンなどからアクセスすることが容易
・MAやSFA、CRMなど他の顧客管理システムと連携させることが容易
◎デメリット
・データが正しく変換されておらず、補正が必要になることがある
・営業やマーケティング、CSなどのアプローチを行うための機能は実装されていないことが多い
ここまで見てきたように、顧客管理システムは複数種類存在し、顧客管理システムによって得意な業務領域が異なります。また、システムによっては、複数のシステムの機能を備えているものや、システム間のデータ連携機能が備わっているものもあります。
自社の求めている要件を満たせる顧客管理システムを選定することが大切です。
顧客管理システム導入時の注意点
顧客管理システムを導入する際には、以下の3点に注意しましょう。
導入目的を明確にしておく
導入目的を明確にしておきましょう。顧客管理システムを導入検討時点で「どのような顧客管理を実現するために顧客管理システムを導入するのか」を明確にしておくと、導入後の効果測定もしやすくなり、企業の進むべき方向性を示せます。「現状の仕組みでは実現することが難しいのか」「どのような理由で実現が難しいのか」などについても明確にしておくと、関係者の理解も得られやすくなります。システムを導入するという手段が目的になっていないか、という視点で確認することも大切です。
関係者全員に事前に告知しておく
顧客管理システムを導入する前には、必ず、関係者全員に事前に告知しておくことが大切です。新システムの導入により、関係部署で成り立っていたオペレーションが変化する、もしくは成り立たなくなる、といった問題が発生するリスクもあります。そのため、関係者全員に事前に顧客管理システムの導入の目的や時期について告知しておき、不要な問題が発生しないように配慮する必要があります。また、顧客管理システムの導入をきっかけに、関係部署との連携方法やオペレーションについて見直しを行なってみるのも良いでしょう。
要件を満たせるシステムを選定する
顧客管理の目的を明確にし、関係者全員に事前に告知した上で、自社の顧客管理の要件を満たせるシステムを選定することが重要です。顧客管理システムの導入に失敗するケースとしてよくあるのが、「導入前にあると思っていた機能が実際にはなかった」というケースです。これでは、システムを導入したにもかかわらず、顧客管理の目的を達成できない、といった事態になりかねません。また、成り立っていたオペレーションが成り立たなくなってしまい、業務に支障をきたしてしまう可能性もあります。このような事態に陥ることが無いよう、要件を満たす機能が実装されているかどうか、用心深く確認しておくようにしましょう。
さいごに
本記事でご紹介したように、顧客管理はマーケティングや営業の「質」を改善し、顧客との良好な関係を築くために取り入れるべき手法です。顧客管理の質の向上は、顧客とのコミュニケーションの質の向上につながります。
しかし、管理する情報は必ずしも多ければ良いという訳ではありません。顧客とのコミュニケーションを円滑にするために把握しておいた方がいい情報とは何か、その情報をどのように使うのかといった考えを持つことが大切です。あなたの会社にあった顧客管理を検討し、顧客との良好な関係を築くためのコミュニケーションを実施していきましょう。
さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。マーケティングの基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。