営業ヒアリングは、プレゼンテーション(提案)を行う前にお客さまのことを知るための大切なステップです。商談が失敗してしまう大きな原因に、お客さまの情報を聞き漏らしてしまうことが挙げられます。また、営業ヒアリングをする上で、自分よりもお客さまに話していただくことなども、意識したいポイントです。
本記事では、営業ヒアリングを行うメリットなど基礎知識や、フレームワークの項目別にやり方とコツをまとめてご紹介します。
目次
営業ヒアリングとは?
営業ヒアリングとは、営業活動における代表的なプロセスの一つです。主に、商品やサービスの提案(プレゼンテーション)の前に行われます。
営業ヒアリングでヒアリングした情報は、その後の提案(プレゼンテーション)、クロージングのために活用されますので、重要であると同時に、確認する項目自体も多くなります。
本記事では、営業ヒアリングのフレームワークの項目別にやり方とコツを紹介しますが、紹介する順番通りに聞いていく必要はありません。臨機応変に、お客さまのペースに合わせながら聞き出すことを心掛けてください。
営業ヒアリングを行うメリット
営業ヒアリングを行うメリットはいくつかありますが、一番大きなメリットは、商談の受注確度を高めることにつながるということです。ほとんどの場合、商談が失敗してしまうのはお客さまの情報を聞き漏らしてしまうことが原因です。
営業ヒアリングを行うメリットをまとめると、以下のようなメリットがあります。
- 商談の受注確度が上がる
- お客さまが考えていることが理解でき、ニーズを掴むことができる
- 共通点に焦点を合わせることで共感を獲得し、信頼を構築できる
- 相手も話したい・伝えたいという欲求を満たすことができる
- 相手の人間性がわかり、商談を進めやすくなる
- 適切な質問や回答ができれば、プロフェッショナル感を演出することができる
◎営業ヒアリングを行うメリット
営業ヒアリングを行う際の心構え
営業ヒアリングを行う際の心構えについても紹介します。一番意識しておきたいのは、自分ではなく、お客さまに話していただくことが大事だ、ということです。営業は、トークが上手いことの前に、聞き上手でなければなりません。
多くの営業担当者は、とにかく売ろうと必死で、自社の商品やサービスを説明するところから始めてしまいます。しかし、自分の話をすればするほど、お客さまは遠のいていくものです。
こちらの提案を受け入れて検討していただくには、相手にも徹底的に話していただく必要があります。お客さまの考えていることや意見をできるだけ多く吐き出していただくにはどうしたら良いかを考えるようにしましょう。
心構えとしては、話す量は自分が3、お客さまが7くらいを意識すると良いと思います。少なくとも、お客さまに話していただいている比率の方が多くなるようにしましょう。
営業ヒアリングに必要なスキル
営業ヒアリングに必要なスキルとしては、次の5つのことを意識しましょう。お客さまから情報を抜け漏れなく聞き出す上で、ヒアリング項目を抑えることと同じくらい大切です。
- 仮説を冷静に検証する
- 自分の立てた仮説にお客様を強引に誘導しない
- 営業ヒアリングの要点を抑える(プレゼンやクロージングに必要な要点)
- 必要ならば相手の話に割って入る(講釈や雑談が好きなお客さまの場合)
- 発想を促すためのフックとして、他社事例などを呼び水に使う
◎営業ヒアリングに必要なスキル
営業ヒアリングのフレームワークの項目別のやり方とコツ
営業ヒアリングを行う際に心構えや必要とされるスキルについて確認してきましたが、ここからは、営業ヒアリングのフレームワークの項目別にやり方とコツを紹介していきます。
お客さまの会社概要、事業内容の確認
ヒアリングは、お客さまの基本属性の確認から入ります。まずは、お客さまの会社概要、事業内容に関する情報を確認しておきましょう。事前準備で調べた情報がここで生かされます。「貴社の事業は○○と○○でお間違い無いですか」「東京と大阪以外に事業エリアはありますか」といった感じです。
- 会社概要(年商、社員数、組織、営業数、事業エリア、拠点など)
- 事業内容(ビジネスモデル、営業スタイル、市場規模、成長性など)
◎情報収集しておくこと
お客さまの競合他社の確認
お客さまのビジネスを理解するためには、お客さまの会社やお客さまが取引先、競合相手も全て含めて考えなければなりません。これを「5C」と言います。自社からみた3Cだけでなく、お客さまにとっての3Cも考えることでお客さまの立場になって考えることができるようになります。ここでは、競合についてヒアリングしましょう。
◎確認するときの質問
「よく競合する他社はどこですか?」
「特に気になっている競合他社といえばどこですか?」
商談相手についての確認
商談相手が社長や専務、部長など決裁権のある人なら話は早いのですが、部下がとりあえず話を聞いて上司に伝える、というケースも多々あるでしょう。最初の段階で、お客さまの立場や協力度を確認しておきましょう。
◎確認する情報と確認するとき質問
【立場】①利用者 ②窓口担当者 ③評価者 ④推進者 ⑤決裁者 ⑥承認者
【協力度】①支援者 ②賛同者 ③中立 ④反対者 ⑤敵対者
「○○さんに決裁権があるのですか」と聞くのは失礼にあたります。
「今回やどのような経緯で、この件に関しては○○さんがご担当されているのですか?」
と、聞きたい情報を相手が自ら話すような質問を投げかけるようにしましょう。
BANT条件(BANT-CH条件)の確認
続いては、BANT条件(BANT-CH条件)の確認です。BANTは、ヒアリング項目の頭文字、Budget(予算)、Authority(決裁フロー)、Needs(ニーズ)、Timeframe(導入時期)を指しています。営業ヒアリングでは、BANTを確認することで、提案やクロージングに必要な要素を明らかにしていきます。
BANT条件や、後述するBANT-CH条件のヒアリングの抜け漏れをなくすことによって、受注確度を高めることができるようになります。
- BANTの「B」:Budget(予算)
- BANTの「A」:Authority(決裁フロー)
- BANTの「N」:Needs(ニーズ)
- BANTの「T」:Timeframe(導入時期)
◎BANT条件
続いて、BANT-CH条件です。BANT-CHとは、先程ご紹介したBANTに、Competitor(競合相手)、Human resources(人的資源)をプラスしたフレームワークになります。
BANT-CHはバントチャンネルとも呼ばれます。最近では、BANTよりも使われるようになっています。BANT-CHの全ての項目がヒアリングできるように、営業ヒアリングの流れを工夫しましょう。
- BANT-CH の「C」:Competitor(競合相手)
- BANT-CH の「H」:Human resources(人的資源)
◎BANT-CH条件のCH
BANT条件(BANT-CH条件)の項目別のヒアリングのやり方とコツについては、別記事「BANT条件とは?法人営業におけるヒアリングの代表的なフレームワーク」に詳しくまとめました。合わせてご覧ください。
ヒアリングの手法について
ヒアリングの手法についても紹介します。ここでは、深堀質問と展開質問、拡大質問と限定質問について説明します。
深堀質問と展開質問
まずは、深堀質問と展開質問についてです。
深堀質問とは、その名のとおりヒアリング項目に対して深掘りした質問を行い、問題点を洗い出す方法です。例えば、「それは、どういうことですか?」「具体的に言うと?」「それは、どうしてですか?」と言った質問の仕方になります。
展開質問とは、相手の視野を広げたり、新たな視点を付与することを目的とした質問の方法です。例えば、「他にございませんか?」「○○の視点から見るとどうですか?」と言った質問の仕方になります。
深堀質問と展開質問の概要は、下図になります。この図では、商談(受注)を増やしたい企業の担当者さまへの深堀質問と展開質問を例にあげています。
深掘り質問と展開質問をうまく活用し、お客さまのニーズの全容を把握するように努めます。テーマを変えて展開していきながら、それぞれを深掘りしていきましょう。
拡大質問と限定質問
続いて、拡大質問と限定質問について説明します。
拡大質問とは、お客さまの立場に立ったとき、自由に答えることができる質問を指します。潜在ニーズや背景やゴールを聞き出すときに利用します。例えば、「次回もその商品を購入するのは、どんな点が良かったからですか?」「この商品のどのような点が気に入りましたか?」といった質問の仕方になります。
限定質問とは、お客さまの立場に立ったとき、回答が限定される質問(YES/NO、数字などで回答するもの)を指します。時間が限られている時や、お客さまの答えた内容を確認するときに利用します。例えば、「あなたは次回もその商品を購入しますか?」「競合他社商品の○○と比較して、操作性は優れていますか?」といった質問の仕方になります。
拡大質問と限定質問は、お客さまから見てさまざまな答えが想定されるものか、それとも限定されるものかどうか、このあたりを想定しておくことが使い分けのポイントになります。
さいごに
本記事では、営業におけるヒアリングのやり方とコツを項目別にまとめました。BANT条件(BANT-CH条件)のヒアリングのやり方とコツの詳細に関しては別記事をご参照ください。
商談アプローチの営業ヒアリングのタイミングで、お客さまの情報を聞き漏らしてしまうことを避けることができれば、その後の提案やクロージングからの受注確度を高めることができるようになります。
さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。法人営業の基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。