KPIとは「Key Performance Indicator」の頭文字を取った略語で、目標管理において重要な指標です。日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。
KPIを正しく理解し、適切に設定し運用することは組織を目標達成に導くための非常に重要な要素です。
この記事では、KPIについてKGIやKFSとの違いや適切な設定方法、管理方法、そして具体的な事例というテーマでわかりやすくご説明します。
目次
KPIとは何か?KGIとの違いやKPIの適切な設定方法とは?
最初に、KPIの言葉の定義をご説明します。
KPIとは、組織の目標達成度合いを定量的に表現したものです。
わかりやすく言うと、「組織が目指すゴールに到達するための”成功の鍵”を数値で定義したもの」がKPIです。
2つ目に、KPIとKGIの違いなど、関連する指標との関係性をご説明します。
関連する用語にGoal、KGI、KFSなどがあります。
各用語の意味と関係性をかんたんに説明すると、
- Goal:最終的に到達したいゴール。組織としての成果。
- KGI:Goalを数値目標で定めたもの。
- KFS:Goal到達のために最も重要となるプロセス。組織としての”成功の鍵”。
- KPI:KFSを数値目標で定めたもの。
という関係になります。
KPIとその他の関連する用語を、わかりやすくドライブで例えるならば、
- Goal:目的地
- KGI:目的地までの距離と到着時刻
- KFS:目的地までの通過点
- KPI:各通過点までの距離と到着時刻
という関係性になります。
3つ目に適切なKPIの設定方法についてご説明します。
KPIと関連する指標との関係性でご説明したとおり、KPIは目的地に到達するための最も重要なプロセスを数値で定義したものです。
つまり、KPIが適切に設定できているかどうかは、KPIを達成し続ければKGIも達成することができるという構造になっているかどうかで判断することができます。
さらに、KPIが適切に設定できているかを判断する代表的な考え方として「SMART」という考え方があります。
SMARTとは、以下の頭文字です。
- S:Specific|明確であるか
- M:Measurable|計測可能か
- A:Achievable|達成可能か
- R:Related|(ゴールと)適切に関連しているか
- T:Time-bound|期限が定められているか
設定したKPIを上記5つの観点で評価することで、自社の定めたKPIが適切であるかを判断することが一般的です。
ここまでで「KPIの定義」「KPIとKGIやKFSとの関係性」「KPIの適切な設定方法」についての概要をご説明しました。
以下に、さらに詳しく説明していきます。後で読む場合はブックマークなどをして保存しておくことをおすすめします。
KGIとは?
KGIについてもう少し詳しくご説明します。
KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。つまり、KGIとは最終的に目指したいゴール(目標)の状態を定量的に定義したものです。
KGIの設定に必要な要素は「期限」「指標」「高さ」です。
つまり、「いつまでに(期限)」「なんの数字を(指標)」「どのくらいまで(高さ)上げる」のかを定めることが必要という意味です。
たとえば、「上半期に(期限)、商品Aの申込書受付件数を(指標)1万件まで(高さ)引き上げる」というKGIの定め方をすれば、誰が見ても解釈にずれが生じないと考えられます。これが押さえるべき要素を含んだKGIの具体例です。
KGIとKPIの違いと関係性
KGIとKPIの違いと関係性についてご説明します。
KGIは最終的に目指す状態を数値で定義した「最終目標」で、KPIはKGI達成のために達成すべき状態を数値で定義した「中間目標」という違いがあります。
KGIとKPIの関係性は「KPIを達成していなければ、KGIが達成できない」という関係性です。つまり、KPIが達成されていないのにKGIが達成しているというような状況が発生しているならば、KPIの設定が誤っているか、KPI構造の外部にある外的要因によって前提条件が大きく変動してしまっている可能性が考えられます。
KFSとは?
次にKFSについてとご説明します。
KFSは「Key Factor for Success」の略で、重要成功要因と訳されます。CSF(Critical Success Factor)とも同義です。
KFSはゴールを達成するために実施すべきプロセスの中でもゴール達成に最も影響を与えるプロセスのことです。
KFSを正しく特定することで、組織におけるゴール達成の確度や速度が上がります。
KFSとKPIの違いと関係性
KFSを数値で定義したものがKPIです。
つまり、KFSはゴールを達成するために最重要な「プロセス」そのものを指し、KPIはKFSとするプロセスにおける目標の「数値」を指します。
先述の内容と重複しますが、KFSゴールに達成するためのプロセスであるので、KFSを数値化したKPIを達成すれば、ゴールを数値化したKGIが達成される設計になっていることが理想です。
KGI・KPI・KFSの関係性
ここまで説明してきた、KPIとKGIやKFSの関係性をまとめます。
- KPIとは、KGI達成につながる「中間指標」であり、KPIが未達でKGIが達成されている事態はどこかに不具合が生じている。
- KPIとは、KFSを数値で定義したものでありKPI達成の先にはKGIの達成がある。
- KFSとは、ゴール達成のために最も影響の大きいプロセスのことであり、正しいKFSの特定が事業の成否を大きく左右する。
KPI設定の方法とコツ
ここまででKPIの定義についてご説明しました。
ここからはKPI設定の方法とコツをご説明します。
KPIの設定は以下の手順で設定するのが理想的です。
- ゴールの設定
- KGIの設定
- KFSの設定
- KPIの設定
1.ゴールの設定
まずは組織全体として目指すあるべき理想の状態を設定および合意します。
ゴールの設定は組織として最終的に目指したい成果を日本語(定性)で定義します。組織として目指す成果は組織の役割やミッションによって設定するもので、売上だけではありません。
例えば、採用部門であれば組織としての成果には、候補者の入社や現場部門の欠員充足などを設定するでしょう。
2.KGIの設定
次にKGIを設定します。
KGIは、設定したゴールの状態を定量的に定義することで設定します。組織としてのKGIを分解すると組織に属する個人の目標になるので、組織のKGI設定は非常に重要です。
KGI設定のポイントは、以下の3点です。
- 設定のプロセスにできるだけメンバーを巻き込む
- 論理的に実現可能な高さで設定する
- 数値で計測可能な指標で設定する
管理職や企画部門でKGI設計をすることが多いと思いますが、目標達成のための行動をするのは現場のメンバーや現場部門です。
そのため、ヒアリングをするなど一部でもいいので、KGI設計のプロセスに現場のメンバーを巻き込んで設計をすることが達成の推進力に繋がります。
また、理想のゴールを掲げたからといってKGIも理想的な数値で設定すると、どう頑張っても達成できないという事態が発生します。KGIの高さは「ちょっと背伸びしたら手が届く」くらいの高さを設定するのがコツです。ここはマネジメントの腕の見せどころです。
そして、当然ですがKGIは数値で計測可能な指標を定めます。数値で計測可能なKGIでないと評価する人によって達成/未達成が変わるといった曖昧な事態になりかねません。
3.KFSの設定
3番目にKFSの設定をします。
KFSの設定は以下の手順で進めます。
- ゴール達成までのプロセスを洗い出す
- 各プロセスを数値・計算式に変換する
- コントロール可能かつゴールへの影響度が大きいプロセスを絞る
- KFSを選ぶ
KFSの設定についての詳細は別の記事でご紹介させていただきます。
4.KPIの設定
ゴール、KGI、KFSの設定が終われば最後にKPIの設定をします。
ここまで来ればお分かりの通り、KFSを数値化するのみです。
KPI設定のポイントは、設定したKPIを達成していけば、KGI達成ができる水準の高さで設定することがポイントです。
KPIマネジメントのやり方
KPIを設定したら、KPIを使って組織の実績進捗を管理します。
ここでは、KPIマネジメントの定義とKPIマネジメントのやり方についてご説明します。
KPIマネジメントとは
まずはKPIマネジメントとは何かをご説明します。
KPIマネジメントとは、名前の通り「KPIを使って組織をマネジメントすること」です。
KPIマネジメントはPDCAの要素で以下のように分解できます。
- Plan:組織の実績・目標をKPIで設定
- Do:KPIの目標達成のために業務プロセスを設計・推進
- Check:定期的にKPIの進捗を確認
- Action:設定したKPIの見直し
KPIマネジメントのやり方
次にKPIマネジメントのやり方をご説明します。
KPI単体でのマネジメントは先ほどご説明した通り、P・D・C・Aの順番で推進します。ここではKPI単体ではなくKPIマネジメントの全体の流れをご説明します。
KPIマネジメントの全体の流れは以下のとおりです。
- ゴールの設定
- KGIの設定
- KGIまでの業務プロセスの分解
- KFSの特定
- KPIの設定
- 定期的な進捗管理
- 振り返り
- KPIの見直し
ゴールや、KGI、KFSの設定については先述したとおりです。
6.のプロセス以降について詳しくご説明します。
6.定期的な進捗管理
KPIを設定して、業務の推進が始まればKPIを定期的に進捗管理する必要があります。
進捗管理とは「実績取得」「目標達成状況の確認」「達成/未達の要因仮説と検証方法検討」に分けられます。
- 実績取得
- 目標達成状況の確認
- 達成/未達の要因仮説と検証方法検討
まず、事前に設計したとおりの頻度や指標で実績取得を行います。継続的かつ安定的に取得できるKPI指標を定めておくとこのプロセスが複雑ではなくなります。また、取得方法や実績の確認形式も事前に設計しておくことが必要です。
実績を取得したら、目標との差分を確認します。
達成あるいは未達している場合、KPI構造の中のどの要素(=プロセス)が影響しているのかを分解して確認しましょう。
目標-実績の進捗を確認したら、「なぜ未達なのか?」「何をしたら達成し続けられるのか?」の仮説を立てて、次の改善行動を決定します。
例えば営業組織におけるKPIマネジメントであれば、達成している部と未達の部の行動の差は何かを特定し、訪問後の提案実施率を改善すれば、KGIである受注件数の伸長に寄与するのでは?という仮説を立てます。その仮設に基づいて、翌週は「訪問後の提案実施率を現状+30%とする」などの改善計画を立てて、仮説が正しいかの検証を実施します。
7.振り返り
KPIマネジメントのやり方における、定期的な進捗管理の次のフェーズとして「振り返り」があります。
振り返りは基本的には定期的な進捗管理と同じことをしますが、定期的な進捗管理では実績確認の頻度が週次や月次であるのに対して、振り返りでは四半期や半期といった少し長いスパンで行うことが多いです。
定期的な進捗管理が個人単位の行動改善につなげるのに対して、振り返りでは組織レベルでの方針や戦略の見直しにつなげていくという目的の違いがあります。
8.KPIの見直し
KPIマネジメントの最後のフェーズは、「KPIの見直し」です。設定したKPIは未来永劫変わらないものではなく、外部環境や組織の方針に沿って定期的に見直すことが必要となります。
頻繁に見直してしまっては振り返りがしづらくなるので、頻繁に変える必要はありませんが、振り返りの頻度で見直しが必要かどうか判断をすることはおすすめです。
さいごに
KPIの定義や設定方法、KPI設定のコツ、KPIマネジメントのやり方についてご説明しました。
情報量の多い記事ですので、実際の業務に取りかかるときにこの記事を参考にしながら実業務を推進していただければ幸いです。あとから読み返せるようにブックマークをしておくことをおすすめします。
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