戦略と戦術の違いとは? BtoBマーケティングにおける具体例をわかりやすく解説します

皆さまは、戦略と戦術の違いについて説明できますか?

戦略も戦術も、「戦」という言葉が入るとおり、もともとは戦争から生まれてきた考え方です。ビジネスにおいても、限られた経営資源で競合との争いに勝つためには、戦略と戦術の考え方が必要とされます。

本記事では、マーケティングを理解するためにどうしても必要な「戦略と戦術」の考え方について、具体例を交えながらわかりやすく解説します。

戦略とは

戦略とは、目的を達成するための資源配分の選択のことを指します。ビジネスにおける資源とは経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間)を指しますが、目的を達成するために経営資源をどこにどのくらい配分するのかを「決める」ことが大切であり、「決める」ことを戦略と呼びます。

戦略の意味を理解していくためには、戦略が必要とされている理由を知っておくことが近道となります。戦略が必要とされる理由は、大きく2つあります。

  • 達成すべき目的があるから
  • 資源は常に不足しているから

裏を返せば、達成すべき目的がないなら戦略は必要ないですし、資源が無限にあるのであれば戦略は必要ありません。ただし、ビジネスにおいては、達成したい目的に対して資源が足りないことがほとんどです。そのため、多くの場合、限られた経営資源で目的を達成するためのプランを考えることが求められます。

戦略を立てるときには、前提条件を整えておくことが必要になります。前提条件とは、その戦略に求められる「成果」や「制約」のことを指します。

    戦略に求められる成果:どのような成果を満たせば目的が達成できたと言えるのか
    戦略に求められる制約:戦略に活用できる経営資源はどのくらいか

このような前提条件を明確にしておかないと、戦略の立案に時間がかかってしまったり、実行性に欠ける戦略が出来上がってしまったりするので注意が必要です。

戦略の考え方

戦略の考え方をご紹介します。
例えば、部隊Aと部隊Bが5つの地域で戦うとします。
前提条件は、以下とします。

    戦略に求められる成果:3つ以上の地域で勝利すること
    戦略に求められる制約:部隊Aの兵力は100名、部隊Bの兵力は80名

この場合、もちろん兵力数が多い方が有利です。部隊A、部隊Bが共に5つの地域に兵力を均等に振り分けたら、それぞれの地域で兵力数が多くなる部隊Aの方が有利です。

しかし、部隊Bが5つの地域ではなく、3つの地域に兵力を集中させた場合はどうでしょうか?

兵力を集中させた3つの地域においては部隊Aよりも兵力数を多くすることができ、部隊Bの方が有利になります。戦略に求められる成果は、3つ以上の地域で勝利することです。そのため、上記のように部隊Bが3つの地域に兵力を集中させた場合、部隊Aよりも少ない兵力数で目的を達成することができます。

このように、戦略的に考え、目的を達成するための資源配分をうまく選択できれば、競争相手よりも少ない資源で高い成果を上げることが可能になるのです。

戦術とは

戦術とは、戦略を実行するための「具体的なプラン」ことを指します。目的を達成するためには、戦略だけではなく、立てた戦略を実行するための戦術(具体的なプラン)も同時に必要になります。戦術は、常に戦略と連動して議論され、常に戦略の下位概念になります。戦略や戦術を考える際には必ず「目的→戦略→戦術」と下方展開していくことを覚えておきましょう。

戦術は戦略の下位概念にあたりますが、戦略と同じくらい重要です。例えば、市場が飽和していたり参入障壁が低く競合がひしめき合っている場合、戦略だけでは大きく差がつかない可能性や、自社と同じ戦略を採用する企業が他にも存在する可能性があります。

そんなときは、戦術の精度や実行度合いで差をつけるしかない場合もあります。

    戦略 × 戦術 = 競争力

と考えるようにしましょう。

戦術の考え方

戦術の考え方をご紹介します。
先の例と同様に、部隊Aと部隊Bが5つの地域で戦うとします。
前提条件は、以下とします。

    戦略に求められる成果:5つの地域で勝利すること
    戦略に求められる制約:部隊Aの兵力は100名、部隊Bの兵力は80名

この場合も、もちろん兵力数が多い方が有利です。しかも、今回は5つの地域で勝利しなければならないため、部隊Aよりも兵力の少ない部隊Bは、かなり厳しい戦いを強いられることになります。

しかし、部隊Bが部隊Aに比べ、2倍の効率で兵力を有効活用できる戦術を持っていたらどうでしょうか?

部隊Bは、各地域において兵力こそ部隊Aに劣っていますが、競争力においては勝ることになります。こちらは、少し極端な例かもしれませんが、このように部隊Bが部隊Aよりも限られた資源をより有効活用できる戦術を持っていれば、少ない兵力数で目的を達成することもできます。

このように、戦略で差がつきづらい場合、戦略で差別化することが競争力につながる、ということも覚えておきましょう。

マーケティング戦略と戦術の決め方

戦略と戦術の考え方については、イメージが着きましたでしょうか?ここからは、マーケティングにおける戦略と戦術の決め方についてご紹介していきたいと思います。

マーケティングは、商品やサービスを売る市場において売るための戦略を立てて、その実行のための戦術をつくり、実行するまでの一連の活動を表す言葉です。非常に幅広い概念ですが、マーケティングプロセスは、大きく分けると戦略プロセスと戦術プロセスに分かれています。

マーケティングプロセスは、それぞれのプロセスの頭文字から「RSTPMM-I-C」と呼ばれることもあります。

マーケティングの戦略や戦術は、「誰に」「何を」「いくらで」「いつ」「どこで」「どうやって」売るのかを明確化することによって策定されますが、マーケティングプロセスを実行することで、これらを明確にすることができます。

各プロセスについて、順番に見ていきましょう。

マーケティング戦略の決め方

マーケティング戦略の決め方についてご紹介します。マーケティング戦略とは、経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間)を配分し、自社の商品やサービスを展開するための領域を「決める」ことを指します。

ただし、「決める」と言っても、勘や経験に頼ってしまうと、経営資源が適切に配分できず、競合との争いに敗れてしまうことになりかねません。そのため、定性・定量の両面から、できるだけ客観的な「事実」を集めて合理的に判断してから決める必要があります。

マーケティングプロセスでは、RSTPが戦略のプロセスになります。

まずは、リサーチを行い、事業を取り巻く環境の分析を行います。分析には外部分析と内部分析があり、代表的な分析のフレームワークとしては、外部分析にPEST分析ファイブフォース分析、内部分析にVRIO分析バリューチェーン分析があります。また、外部分析と内部分析の双方に用いられるフレームワークにSWOT分析3C分析があります。

続いて、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)を行います。セグメンテーションでは、市場を年齢、性別、地域、購買行動など、さまざまな切り口で分類します。ターゲティングでは、どのセグメンテーションにアプローチするかを決めます。ポジショニングでは、顧客にどのように認知されたいのかを決めます。

ターゲットを決めることで、

    ターゲット ≒ 誰に

が明確になります。

このように、RSTPの戦略立案のプロセスを経て、マーケティング上の戦略として、どの市場に対して経営資源を投下していくのかを決めることが、マーケティング戦略の立案になります。

マーケティング戦術の決め方

続いて、マーケティング戦術の決め方についてご紹介します。マーケティング戦術とは、マーケティング戦略で決めたターゲットに対して、決めた商品・サービスの訴求をどのように行って競合優位性を築いていくのかの「具体的なプラン」を決め、実行していくことを指します。

マーケティングプロセスでは、MM-I-Cが戦術のプロセスになります。

マーケティングミックス(MM)では、ターゲットに働きかけるために4つの要素をどのように組み合わせるかを具体的に決めます。

4つの要素は、企業からの視点では、製品(product)、価格(price)、流通(place)、販促(promotion)と整理することができ、それぞれの頭文字から、4Pと呼ばれています。また、顧客の視点からは、顧客価値(Customer Value)、経費(Cost)、顧客利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)と置き換えて4Cと呼ばれます。

4つの要素を決めることで、

    製品(product) ≒ 何を
    価格(price)≒ いくらで
    流通(place)≒ いつ、どこで
    販促(promotion)≒ どうやって

が明確になり、戦略達成のために実行する内容が決まります。

実行(I)を確実なものにするために、実行するためのプラン(施策のスケジュール)と目標(数値目標)を設定し、関係者で認識を合わせるようにしましょう。また、他のプロセスとの連携も考慮に入れましょう。

また、評価(C)も大切です。マーケティング施策の実行中や実行後に評価を行い、マーケティング施策の効果を見極め、必要に応じて改善できるように仕組みを整えておきましょう。

BtoBマーケティングにおける具体例

ここからは、BtoBマーケティングにおける具体例を確認していきましょう。本記事では、モノタロウ社を例に、マーケティング戦略と戦術について確認していきたいと思います。

<具体例:モノタロウ>
企業名:株式会社MonotaRO(モノタロウ)
設立年:2000年
事業概要:日本最大級のBtoBオンラインストア「モノタロウ」の開発・運営を通じ、事業者向け工場用間接資材の販売をしている企業さまです。ITエンジニアリングやデータサイエンスを駆使し、1800万点のアイテムから欲しいものがすぐに見つかる「高い検索性」、50万点の商品は当日出荷が可能な「短納期の利便性」を実現されています。

◎戦略プロセス(RSTP
まずはリサーチ(R)です。
外部環境の主なトピックを挙げてみます。

  • 日本国内のBtoB-ECの市場規模は353兆円
  • 間接資材領域の市場規模は約8兆円
  • オンライン比率はいまだ10%程度
  • BtoB ECの市場も年6〜7%成長、それに伴い、オンライン比率は増加傾向
  • 間接資材メーカー、金物商社、工具商社のEC参入が増加傾向
  • AmazonのBtoB領域への参入
  • 働き方改革に伴う業務コスト削減のニーズ増
  • 景気停滞による間接資材コスト削減のニーズ増

内部環境の主なトピックを挙げてみます。

  • 1800万点のアイテムから欲しいものがすぐに見つかる「高い検索性」
  • 50万点の商品は当日出荷が可能な「短納期の利便性」
  • 商社を介さない直販体制
  • 直販体制によって蓄積された膨大な顧客リストと購買データ

次に、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)です。
モノタロウ社のセグメンテーションの切り口を推測してみます。

  • 業種
  • 職種
  • 会社規模
  • 購入方法
  • 品揃え
  • 価格
  • 納期
  • 配送地域
  • 業務コスト

モノタロウ社のターゲティングの切り口を推測してみます。

  • 業種:製造業、建設・工事業、自動車整備業等
  • 職種:現場作業に従事する方
  • 会社規模:中小企業
  • 購入方法:インターネットで購入したい方
  • 品揃え:幅広い品揃えを必要とする方
  • 価格:安く購入したい方
  • 納期:短納期でほしい方
  • 配送地域:日本全国
  • 業務コスト:小売店にモノを買いに行く手間を省きたい

モノタロウ社のポジショニングの切り口を推測してみます。

  • 業種:製造業、建設・工事業、自動車整備業等
  • 職種:現場作業に従事する方
  • 会社規模:中小企業
  • 購入方法:インターネットで簡単に購入
  • 品揃え:1800万点の品揃え
  • 価格:低価格(規模の経済によって実現)
  • 納期:50万点の商品は当日出荷が可能
  • 配送地域:日本全国
  • 業務コスト:全てが揃う品揃え、小売店にモノを買いに行く手間を省く

以上の情報から導き出される戦略は、モノタロウ社のIR資料にもあるように、以下のようになります。

    主な競合:訪問工具商・金物屋・自動車部品商、インターネット通販サイト等
    主な顧客層:製造業、建設・工事業、自動車整備業等(中小企業が中心顧客)
    経営戦略:
    ・インターネットを活用し規模の経済を実現し幅広い商材と高い検索性で差別化
    ・累積する受注・顧客データベースを分析したマーケティングで顧客を囲い込む
    ・ソフト開発からコンテンツ制作まで自社で行うことで高い生産性を実現する

◎戦術プロセス(MM-I-C
続いて、戦術プロセスです。
モノタロウ社のマーケティングミックス(MM)は、

    製品(product) ≒ 事業者向け工場用間接資材を
    価格(price)≒ 低価格で(規模の経済によって実現)
    流通(place)≒ 直販で(顧客データの蓄積と在庫、納品の効率化を実現)
    販促(promotion)≒ インターネットにて集客、販売まで一気通貫

となっています。

直販体制を引くことにより、累積する受注・顧客データを整備分析したマーケティングが可能になり、更にインターネットを活用した全国展開、幅広い商材を取り扱うことによって、規模の経済、範囲の経済の恩恵を享受し、競合に比べて低価格を実現しています。

また、インターネットにて集客、販売まで一気通貫しているため、実行(I)と評価(C)のプロセスも非常に効率化され、かつ改善の繁栄もしやすいため、その点も同社の競争力が高い要因の一つとなっていると考えられます。

非常にざっくりとした分析で恐縮ですが、マーケティングプロセスに沿ってモノタロウ社の戦略・戦術を考察してみると、戦略と戦術に一貫性と合理性があり、それが高いレベルの競争力に繋がっていることが推測できます。

参考:ランチェスター戦略

日本で誕生した有名な戦略理論に、ランチェスター戦略という考え方があります。経営コンサルタントの田岡信夫(1927-1984)によって確立されたため、田岡式とも呼ばれます。

ランチェスター戦略は、ランチェスターの法則という戦争理論をビジネスに応用することで誕生した経営戦略理論です。大きな市場シェアを占めている大企業に小さい企業が勝つための戦略についてもまとまっています。

さいごに

本記事では、マーケティングを理解するためにどうしても必要な「戦略と戦術」の考え方についての基礎知識や、モノタロウ社の事例を交えながらマーケティング戦略、戦術の考え方について解説してきました。

戦略は、目的を達成するためにどのように資源を配分するか決めること、戦術は、戦略を実行するための具体的なプランであることを覚えておきましょう。

また、戦略や戦術を立てる際には、求められる前提条件(成果や制約)を満たすことができるか、また、立てた戦略と戦術に一貫性や合理性があるか、注意して確認するようにしましょう。

この記事の内容が皆さまのお役に立てば幸いです。