営業がアプローチするよりも前に、相手側が競合製品の購入を決めてしまっているということがあります。そのため、相手側の購買意欲が顕在化し始める前から、認知と信用を得るための努力をしておくことが大切な時代になってきています。
リードナーチャリングは、このような背景から注目されています。
本記事では、売上アップにつながるリードナーチャリングが実行できるよう、リードナーチャリングの効果を改善したいときに見直したい3つのポイントについて解説します。
目次
リードナーチャリングとは
リードナーチャリングとは、まだまだ十分に買う気になっていない見込み客に対するコミュニケーションを取りながら、自社の商品やサービスへの認知と信用を得るためのプロセスのことを指します。
リードナーチャリングの目的
リードナーチャリングの目的は、自社が保有・管理しているリード情報(見込み客情報)からの商談機会を最大化させることです。つまり、商談機会の取りこぼしを防ぐことが目的となります。
法人取引では、商品やサービスを認知してから購入に至るまでの検討期間が長くなる傾向があります。これは、担当者が個人的に良いと思ったとしても企業として購入が必要なタイミングでなければ、社内の承認を得ることが難しいためです。
しかし、すぐに具体的な商談に繋がらなかったからといってその見込み客をフォローせずに放置してしまっていると、具体的に検討をはじめるタイミングで適切なフォローアップができず、商談機会の取りこぼしてしまう可能性があります。
そのようなことがないように、見込み客側の購買意欲が顕在化し始める前から自社や商品に対する認知と信用を得るための努力と定期フォローをしておくことが大切です。
以下の図のように、利用メリットの理解度と課題解決の緊急度がともに高くなる状態(商談につながる状態)に促していくことを念頭におきながら、見込み客とのコミュニケーションを図っていきましょう。
購買意欲が顕在化したときに、相手側から指名していただけるような関係を築くことができると理想的だと思います。
リードナーチャリングの種類
一言にリードナーチャリングといっても実施するための手段はいくつも存在します。
例えば、オンラインで実施するウェビナー、メールマーケティング、コンテンツマーケティング、インサイドセールス、あるいはオフラインで実施する展示会やセミナーなど、さまざまな施策がリードナーチャリングを実施するための手段となり得ます。
どのような内容のコミュニケーションをしたいか、またはどのくらいの人を対象としてコミュニケーションを図ることを目的にするかによって、リードナーチャリングを実施する上で適切な手段は変化します。
一般的には、オンラインよりオフライン、1対Nよりも1対1の方がコミュニケーションの質が向上すると言われています。しかし、オンラインよりオフライン、1対Nよりも1対1の方がコミュニケーションにかかる費用も高くなる傾向があるため、必要に応じて適切な手段を選択することが大切です。
参考:放置された見込み客は他社製品を購入している
米国のシリウスディシジョン社の調査によれば、営業担当者が「見込みなし」と判断してフォローしなかったリードのうち、実に8割が2年以内に競合他社から製品を購入している、という結果が公表されています。
この調査結果からも分かるように、商談機会の取りこぼしを防ぐためには、すぐに商談に繋がらなかった見込み客をただ放置するのではなく、具体的に検討をはじめるタイミングを見極めるための継続的なコミュニケーションとそのための仕組みが必要となります。
リードナーチャリングの効果を改善したいときに見直したい3つのポイント
リードナーチャリングの取組みは既に始めている、という企業様も増えてきています。ただし、なんとなくメルマガを配信しているだけで、実際のところ効果的なリードナーチャリングになっているのかよくわからない、という人もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからは、売上アップにつながるリードナーチャリングが実行できるよう、リードナーチャリングの効果を改善したいときに見直したい3つのポイントについて解説します。
定期的にコンタクトがとれているか
一つ目のポイントは、定期的にコンタクトがとれているかという点です。BtoBビジネスでは、購入検討のタイミングが来るまでに期間が長い傾向がある一方、タイミングは突然来て一瞬で閉じてしまう、という傾向もあります。
これは、社内での合意形成が取れないとなかなか購入に至らないというBtoBビジネスの特徴はありつつも、経営者(あるいはオーナー)の意向、あるいはインシデント発生などによって、急な対応を迫られる事案が発生する可能性があるからです。また、担当者が変更になったことにより、急に導入検討が進むということもあります。
そのため、突然やってくる商談機会を取りこぼさずに済むように、定期的なコンタクトをとっておくことが大切です。リードナーチャリングの効果を改善したいとき、まずは見込み客と定期的にコンタクトがとれているかを確認するようにしましょう。
定期的にコンタクトが取れていない場合には、大きく2つの要因が考えられます。
一つ目の要因は、資源不足(ヒト)や行動量が足りずにコンタクトできていないケースです。
解決策としては、採用や配置転換によるリソースの追加、あるいは個々の生産性向上やコンタクト方法を仕組みかすることによって生産性を向上させることが必要です。しかし、中小企業やスタートアップの場合、資源不足(ヒト)や行動量の大幅な増減はなかなか見込めない、ということもあります。
そのような時は、MAの導入・活用により資源不足(ヒト)をツールで補うことも検討してみましょう。
シナリオ機能によってフォローアップメールを自動で配信することによりフォローの抜け漏れを防ぐことや、スコアリング機能によってフォローアップの優先順位を把握することも可能になります。
二つ目の要因は、見込み客側から嫌われてしまい、こちらがコンタクトすることを拒否されてしまうケースです。
相手の状況を把握・考慮せずに一方的なコンタクトを続けてしまうことによって、結果的に連絡しても無視される、あるいは反応してもらえなくなってしまうことがあります。
例えば、相手が購入検討のタイミングでないのにも関わらず、毎回連絡してきては「そろそろどうですか?」の繰り返しのみだった場合、連絡を受けた相手側からすれば、自分本位で失礼な営業行為を受けたように感じてしまうでしょう。
相手の目線に立って考え、適切な頻度・手段・コンテンツでリードナーチャリングを実施するようにしましょう。
リードナーチャリングの手段やコンテンツを検討する方法については、別記事「リードナーチャリングに最適なコンテンツとは?製作前のチェックポイントやネタの探し方について解説します」に詳しくまとめております。合わせてご覧ください。
検討動向を把握できているか
二つ目のポイントは、見込み客の商品やサービスの購入に関する検討動向を把握できているかという点です。
リードナーチャリングによって見込み客と定期的にコンタクトがとれていたとしても、商品やサービスの購入に関する検討動向を把握し、適切なタイミングで商談の機会を設定できなくては商談機会を取りこぼしてしまうことになります。
そのため、検討動向を把握するための仕組みをつくっておく必要があります。本記事では方法を二つ紹介します。
一つの目の方法は、BANT-CH条件に関する情報を取得し、MAやSFAで管理しておくことです。
BANT-CH条件とは、
- Budget(予算)
- Authority(決裁フロー)
- Needs(ニーズ)
- Timeframe(導入時期)
- Competitor(競合相手)
- Human resources(人的資源)
の頭文字を取った言葉で、商談を進めるためにヒアリングが必要な要素をとりまとめて表したものです。
BANT-CH条件を確認するための方法は、営業やインサイドセールス、またはカスタマーサクセスによる接触時のヒアリング、あるいは、ウェビナーやフォーム登録時に記入してもらうアンケートの項目を工夫して把握するなど、さまざまな方法が考えられます。
BANT-CH条件を取得・管理しておき、適切なタイミングの見込み客に対して商談の機会を依頼できるようにしておくことが大切です。
BANT-CH条件については、別記事「BANT条件(BANT-CH条件)とは?法人営業におけるヒアリングの代表的なフレームワーク」に詳しくまとめております。合わせてご覧ください。
スコアリングとは、主にMAで活用される、多数の見込み客の中から優先して接触すべき見込み客を抽出するための機能です。マーケティングオートメーションが記録した行動を、スコアリングの設定に基づいて数値(スコア)に変換します。
スコアリングを活用すれば、購買意欲が高い見込み客が閲覧すると想定されるページへ、より高いスコアリングの重み付けを設定し、該当するリードをHOTリードとして抽出することができます。
前述したとおり、BtoBビジネスでは、購入検討のタイミングが来るまでに期間が長い傾向がある一方、タイミングは突然来て一瞬で閉じてしまう傾向があるため、MAのスコアリング機能は使い方次第でそのタイミングを検知する有効な手段となり得ます。
MAのスコアリング機能については、別記事「スコアリングとは?活用するメリットと使い方をわかりやすく解説します」に詳しくまとめております。合わせてご覧ください。
自社商品について理解してもらえているか
三つ目のポイントは、自社商品について理解してもらえているかという点です。
商品やサービスに対して利用メリットの理解度が低い見込み客に対してリードナーチャリングを行う際には、商品やサービスに対する理解度を高めるためのコンテンツ(事例、活用ノウハウなど)を定期的に提供していくことも大切です。
ただし、取り扱っている商品やサービスの特性次第では、相手側もメールなどの文章情報だけではわかりにくかったり、口頭で一方的に説明されてもよくわからないと感じてしまったりします。
そのような場合には、動画コンテンツを用意したり、試しに無料で使ってもらったりするなど、相手に自社の商品やサービスの良さがより伝わるように工夫することが大切です。
また、前述したとおり、一般的にはオンラインよりオフライン、1対Nよりも1対1の方がコミュニケーションの質が向上すると言われているため、必要に応じて適切な手段を選択するようにしましょう。
コツ・留意点
リードナーチャリングの効果を改善する際のコツ・留意点です。
KPIの設定方法を工夫しよう
一つ目のコツ・留意点は、KPIの設定方法の工夫です。
リードナーチャリングは、COLDリード(購入意欲の低い見込み客)からHOTリード(購入意欲の高い見込み客)に転換のためのアプローチのフェーズと、HOTリードから商談に転換させるためのアプローチのフェーズで運用やKPIをわけることが鉄則です。
COLDリードに対していきなり商談の依頼をかけてしまうと、オプトアウト(連絡拒否)が増える、あるいは確度の低いゆるい商談が増えるなどのデメリットも発生してしまうため、あまりおすすめしません。
MAを有効活用しよう
二つ目のコツ・留意点は、MAを有効活用することです。
MAツールには、リードの管理・育成・選別といった、リードナーチャリングのために必要な運用を効率よく行うための機能や、それらを自動化・省力化して運用するための機能が備わっています。
リードナーチャリングの対象とする見込み客のデータ量が増えれば増えるほど、MAツールを活用しないで運用するのは難しくなってきます。
あらかじめMAツールを導入していれば、申込フォームなどから見込み客情報の登録があったタイミングでCookieデータを紐付けて管理することができ、今後のマーケティング活動に役立てていくことが可能となるというメリットもあるため、MAツールは早めに導入しておくことをおすすめします。
MAツールを導入するメリットや、MAツールを利用したリードナーチャリングの設計例に関しましては、別記事「マーケティングオートメーションとは?導入するメリットと使い方をわかりやすく解説します」に詳しくまとめております。合わせてご覧ください。
さいごに
本記事では、売上アップにつながるリードナーチャリングが実行できるよう、リードナーチャリングの効果を改善したいときに見直したい3つのポイントについて解説してまいりました。
BtoBビジネスにおいても各市場は飽和の傾向にあります。そのため、消費者側からすると、自社商品と競合他社商品の違いが一見するとわからないという可能性も高くなってきています。
適切なリードナーチャリングを実施することができれば「相手にとって」役に立つ存在であることを示すことにもつながることでしょう。
さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。マーケティングの基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。