VUCAという言葉をご存知でしょうか?
元々は軍事用語で、冷戦終了後の国際情勢を説明する用語として使われはじめました。現在では近年のビジネスを取り巻く環境を表す用語として使われています。
この記事では、VUCAという用語の解説や、VUCAの時代において企業や個人がどのような備えをするべきなのかについて解説します。
また、VUCAの時代においては、OODAループというフレームワークがセットで語られることが多くあります。OODAループについても合わせてご参照ください。
目次
VUCAとは
VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」のという、4つの言葉の頭文字を取った用語です。
Volatility(変動性)
はじめに「Volatility(変動性)」についてご説明します。「Volatility(変動性)」とは、変化が激しい状態のことを指します。
具体例としては、スマートフォン、SNSなどこれまでの延長線ではないイノベーションの発生により、社会や人々の生活様式が大きく変動したことなどが挙げられます。近年におけるITの急速な発達と普及により、ビジネスの前提となる社会環境や個人の生活様式の変化がより大きくなり、頻度も高くなってきています。
前提が変わりやすい環境なので、 ネガティブに捉えるといつまでもビジネスの勝者で居続けることが難しくなったと言えます。 一方、ポジティブに捉えると市場の優劣をひっくり返すチャンスが多くなったと捉えることもできます。
以上が「Volatility(変動性)」の説明です。
Uncertainty(不確実性)
次は「Uncertainty(不確実性)」についてご説明します。「Uncertainty(不確実性)」とは、確定していない要素が多いために左記の見通しが付きづらい状態のことを指します。
具体例としては、地球温暖化による気候変動や未知のウイルスなど、ビジネスを取り囲む環境における変数において、不確実な変数が多くなっていることなどが挙げられます。
Volatility(変動性)とも密接に関わっていて、変化が激しいことにより不確実な要素が増えているとも考えられます。このことから言えることは、確定情報が増えるのを待っていては変化においていかれるため、確実な情報が限られて状況の中でビジネスを推進していく必要があるということです。
以上が、「Uncertainty(不確実性)」の説明でした。
Complexity(複雑性)
3つ目は、「Complexity(複雑性)」です。「Complexity(複雑性)」とは、一つの事象に対して、影響を与える変数・要素が多く、かつお互いに関係しあっているために、事象に対する解決策をシンプルに導くことが難しい状態のことを指します。
具体例は、仮想通貨に対する規制が国ごとに異なっていることや、これまでサービスの享受者だと考えていた個人がサービスの提供者となるCtoCという考え方の登場などが挙げられます。
目に見える起きた事象の裏側には複数の要因や要素が存在しているために、問題解決の難易度が上がっているとともに、解決策が1つではないことも増えてきています。つまり、複雑性をはらむ環境の結果、多様性も発生しているということを認識する必要があります。
以上が、「Complexity(複雑性)」の説明でした。
Ambiguity(曖昧性)
最後は、「Ambiguity(曖昧性)」についてご説明します。「Ambiguity(曖昧性)」は、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)などの状況が併存した結果として生じる状況といえます。
つまり、ビジネスを推進したり、問題解決をしたりする際の、明瞭な解が存在しない状況のことです。
VUCAの時代に起こること
VUCAの時代にはどんなことが起こるのでしょうか?
現代社会は、既にVUCAの時代だと言えます。そのため、現在においてビジネスを推進するにあたり、自社を取り巻く環境にどういうことが起こりうるのかを知っておきましょう。
過去の成功パターンが通用しなくなる
VUCAの時代には、まず過去の成功パターンや勝ち筋が通用しなくなります。
価値観が単一で変化の速度が遅かった時代では、問題の解決策が明瞭で、問題解決ができるサービスや製品を開発すれば、市場に受け入れられる時代でした。しかし、VUCAの時代では前提とする外部環境が異なるため、異なる前提のもとでの成功事例はそのまま活用することができなくなってきています。
例えば、新型コロナが発生する前はシェアオフィスやサービスが充実したオフィスが流行していましたが、リモートワークが普及してオフィスにいくという前提条件が崩れ去った瞬間、そもそもオフィスの形態というソリューションが通用しなくなりました。
人々の価値観は、変動性と複雑性が絡み合った結果、多様性を持ちました。しかも価値観は、一定ではなく絶えず変化し続けるものとなりました。過去の成功パターン通用しない、それどころか、昨日までの成功パターンも通用しなくなる可能性があるのがVUCAの時代です。
前提としていた構造が崩れる
先述のリモートワークとシェアオフィスの事例でも紹介しましたが、ビジネスの前提としていた条件や構造が変わってしまうことも、VUCAの時代に起こりうる事象です。
有名なUber Eatsは、出前は飲食店の従業員が配達することが当たり前、という前提を覆し、働きたい個人が複数の飲食店の配達を代行できるという環境を構築しました。コロナ禍を経てUber Eatsのような宅配形式の方が主流になってしまったので、まさに前提としていた構造が崩れてしまった事例と言えます。
このように、ビジネスの前提としている環境や市場構造自体が変化する可能性があるのがVUCAの時代の特徴です。
VUCAの時代に企業に求められること
では、VUCAの時代に企業はどのようなケイパビリティ(能力)を保有すべきなのでしょうか?
VUCAの時代を乗り越えるためには、
- ビジョンやパーパスを明確にする
- 学習し続ける
- 変革を恐れずに変革を起こしにいく
という能力が必要となります。
ビジョンやパーパスの明確を明確にすること
まず1つ目は、ビジョンやパーパスを明確にすることです。
VUCAの時代は、不確定要素が多く変化も激しいので、目の前の状況をなんとかするために近視眼的になりがちです。近視眼的になりすぎると、大きな方向性を見誤ってしまうリスクがあります。
企業として大きな方向性を謝らないように、企業の目指すビジョンや自社のパーパス(存在意義)を明確に定めて、紆余曲折を経たとしても最終的にはどこに向かっているのかを企業全体として合意形成をした上で、社員全体に方針を浸透させる必要があります。
学習し続ける組織と人材マネジメントをすること
2つ目は、学習し続ける組織と人材マネジメントをすることです。
VUCAの時代は変数が多く、変化も激しいため、自社を取り巻く外部環境がどういう状態なのかを常に情報収集しておかなければなりません。企業としては、各従業員がそういう意識を持ち、行動をしてくれるようにマネジメントをする必要があります。
また、組織として学習する必要があります。各従業員が学習していても組織の方針や営業方法が変わらなければ意味がないので、各人が学習した内容を組織の知見として昇華させる活動も各組織のリーダーに対して動機づけをするマネジメントをする必要があります。
変革を先行して起こしにいくスタンスを持つこと
3つ目は、変革を起こしにいくスタンスを持つことです。
VUCAの時代は変化が激しく、変数が多く、不確定要素が多い時代です。そのため、変化に対して受け身を取るだけではなく、自ら変化を起こしにいくスタンスが必要です。
変化を起こしにいくためには、自社を取り巻く環境を正しく事実として捉えた上で、この後どういう変化が起こるのかを不確実な中でも予測・仮説立てして、仮説に基づいて競合よりも早く手を打っていくという行動が必要です。
VUCAの時代に個人に求められること
VUCAの時代において個人が求められることはなんでしょうか?
企業は個人の集合体ですので、求められることも大きくは変わりませんが、個人の行動により近い表現で求められることを解説します。
継続的な情報収集
1つ目は、継続的な情報収集です。
VUCAという環境は企業だけを取り巻いているのではありません。よって、企業と同様に個人も変化する外部環境についての情報を常に収集し続けることが求められます。
自社で成果を出したい場合も、転職をしたい場合も、現状がどういう状況なのかがわからなければ、正しい判断や提案をすることができません。
まずは、自らの周囲に起きている変化を事実として正しく捉えましょう。
情報の解釈
次に、情報の解釈をすることが求められます。
VUCAの時代に限らず、事実を収集してその事実から読み取れることを解釈する必要があります。VUCAの時代では、単一の解は存在しないため、誰も答えを持っていません。
答えのない状況で、自らのキャリアを前進させるためには、事実を解釈する力が必要となります。
スピーディーな意思決定
最後に迅速な意思決定をすることが求められます。
情報収集→事実の解釈→意思決定のサイクルを回すスピードを早めなければ、意思決定に迷っている間に前提となる状況が変わってしまう可能性もあります。
行動するか、行動しないかは正解がありませんが、どちらにするのかを決めるという行動(=意思決定)は早ければ早いほどよいのがVUCAの時代です。
VUCAの時代に役立つ考え方
VUCAの時代に企業や個人が求められることはお分かりいただけましたか?
最後に、求められることを実行するための補助となる、考え方やフレームワークを解説します。
OODAループ
VUCAの時代に役立つ考え方の代表格として、OODAループという考え方があります。
OODAとは、
- Observe(観察)
- Orient(状況判断)
- Decide(意思決定)
- Act(行動)
の頭文字を表しています。
OODAループとは、Observe(観察)→Orient(状況判断)→Decide(意思決定)→Act(行動)→Observe(観察)…とループさせながら状況をか改善させていく、変化が激しい状況下においても短時間で意思決定をすることを目的としたフレームワークです。
まさにVUCAの時代におけるフレームワークと言えます。
OODAループについては、別記事「OODAループとは?PDCAサイクルとの違いと使い方を解説します」で詳細に解説していますので、合わせてご覧ください。
さいごに
本記事では、VUCAという用語の解説や、VUCAの時代において企業や個人がどのような備えをするべきなのかについて解説してまいりました。VUCAという時代の意味と、その時代を乗り越えるために必要なことをご理解いただけたのではないでしょうか。
さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。ビジネスリーダーが知っておきたいフレームワークを中心にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。