※KPIに関する詳しい解説(KGIやKSFとの違いも解説に含みます)はこちら
KPIとは、組織の目標達成度合いを定量的に表現したものです。組織が目指すゴールに到達するための成功の鍵を数値で定義したもの、と言い換えてもいいでしょう。
本記事では、KPI指標の中でも「カスタマーサクセス」で一般的に使われるKPI指標の意味・設定例について解説していきます。
単純な用語解説にとどまらないように、実務に活用できるように解説をさせていただきますので、ぜひご自身の業務をイメージしながらご覧ください。
目次
Churn Rate(解約率)
Churn Rate(チャーンレート)とは、契約中あるいはサービス利用中の顧客がサービスを解約した割合です。
カスタマーサクセスの取り組みにおいて必ず見ている重要指標の一つとされています。特にサブスクリプション型のサービスなど、成約後に利用継続していただくことで利益を上げていくビジネスモデルにおいては収益化のスピードに影響するため、非常に重要視されます。
また、チャーンレートは大きく分けて2種類存在します。顧客数を起点として考える「カスタマーチャーンレート」と、収益を起点として考える「レベニューチャーンレート」です。
カスタマーチャーンレート
カスタマーチャーンレートとは、特定期間内で解約した顧客の数を割合で示したものです。
計算式は以下のようになります。
カスタマーチャーンレート=特定期間内で解約した顧客数÷特定期間における期首の顧客数
例えば、以下の図における2021年4月〜2022年3月におけるカスタマーチャーンレートを計算するときは以下のように計算します。
上の図でも分かるように、カスタマーチャーンは指定期間の期首における契約顧客(あるいは利用中顧客)を分母とするため、期中に契約開始した顧客は顧客数の分母に入れません。同様に、解約した顧客数も期首に契約があり、期中に解約した顧客の数をカウントします。(期中に契約開始、期中に解約済顧客はカスタマーチャーンの考え方には現れてこないことになります。)
よって、[解約した顧客 1社]÷[期首の顧客数 4社]=[カスタマーチャーンレート 25%]となります。
レベニューチャーンレート
レベニューチャーンは、収益(=売上)を起点にして考えます。
レベニューチャーンレートとは、ある時点で発生している収益のうち、特定の期間内で減少した収益の割合を示すものです。
レベニューチャーンレートはさらに2種類に分類することができます。「グロスレベニューチャーンレート」と「ネットレベニューチャーンレート」です。
1)グロスレベニューチャーンレート
グロスレベニューチャーンレートは、特定の期間内における、解約やダウングレードなど、収益が減少する要因にのみ注目して、収益の減少率を表すものです。
計算式は以下のように表せます。
グロスレベニューチャーンレート=特定期間内での収益減少額÷ある時点での全体の収益額
例えば、以下の図における2021年4月〜2022年3月におけるグロスレベニューチャーンレートを計算するときは以下のように計算します。
上の図のように、計算時点(2022年3月時点)ではD社以外が契約中ですが、E社は期首時点で契約がないため計算の対象外とします。つまり、計算時点での全体の収益額はA~C社における収益である250万です。また、グロスレベニューチャーンレートにおいては収益の減少額部分について注目するので、C社のアップグレードによる収益の増加分は考慮しません。
よって、[収益の減少額 150万]÷[全体の収益額 250万]=[グロスレベニューチャーンレート 60%]となります。
2)ネットレベニューチャーンレート
ネットレベニューチャーンレートは、特定の期間内における、収益が減少する要因に加えて、アップセルなど収益が増加する要因も考慮して収益の減少率を表すものです。
計算式は以下のように表せます。
ネットレベニューチャーンレート=(特定期間内での収益減少額-特定期間内での収益増加額)÷ある時点での全体の収益額
例えば、先ほどのグロスレベニューチャーンレートの説明で使用した図の同期間における、ネットレベニューチャーンレートを計算するときは以下のように計算します。
上の図のように、収益の減少部分は150万ですが、C社の50万→100万のアップグレードが存在するため、分子は150万ではなく100万です。
よって、([収益の減少額 150万]-[収益の増加額 50万])÷[全体の収益額 250万]=[ネットレベニューチャーンレート 40%]となります。
オンボーディング完了率
オンボーディング完了率はカスタマーサクセスの取り組みにおいて最も重要な指標の一つと言えます。
そもそもオンボーディングとは、顧客がサービスの利用を開始してから運用が定着するまでの状態を指します。どういう状態になったら運用が定着したと言えるのかは、サービスごとに条件を定義するため一般的に共通の条件はありません。
オンボードを定義する際にはオンボードの条件を満たすことで解約率が下がるなど、解約率との相関が重要となります。
よって、オンボーディング完了率とは、サービスごとに定義した条件をクリアした顧客の割合を指します。
計算式は以下のように表せます。
オンボーディング完了率=オンボーディング完了顧客数÷オンボード対象の全顧客数
計算式はシンプルですが、オンボーディングの定義とオンボード対象顧客の定義がカスタマーサクセスの取り組みにとっては非常に重要かつ難易度が高い要素です。
NRR(売上継続率)
NRRは、Net Revenue Retention Rateの略で、既存顧客における収益が前年比で、継続されている割合を意味する指標です。
NRRは、前年度から現時点までの収益の維持率を定量で表す指標のため、翌年度の収益を推測するために使われることも多い指標です。NRRが100%以上であれば、既存顧客におけるアップセルやクロスセルなどの収益増大に寄与する要素の方が、解約やダウングレードなどの収益減少に寄与する要素よりも大きく、好調であると解釈することができます。
NRRは売上の成長率と相関関係が強く、サービスの成長性を判断するためにも用いられる指標です。
例えば、アメリカで上場しているSaaS企業におけるNRRの中央値は117%と言われています。(参照元:SaaS IPO Net Dollar Retention Benchmarks)
計算式は以下のように表せます。
NRR=(A)÷(B)
(A)…前年度の同月に新規獲得または契約更新した顧客における、今月のMRR(*)
(B)…前年度の同月に新規獲得または契約更新した顧客における、当時のMRR
(*)MRR…Monthly Recurring Revenueの略。毎月くり返し得られる収益のこと。
例えば、先ほどのネットレベニューチャーンレートの事例をもとにNRRを説明します。
上の図のように、前年度同月におけるMRRは、6月契約開始のE社を除くA~D社で350万です。(…(B))一方、前年同月時点の顧客における今月のMRRは、解約済みのD社を除くA~C社で250万です。(…(A))
よって、NRRは250万÷350万=71%となります。
NPS(Net Promoter Score)
NPS®はNet Promoter Scoreの略で、顧客推奨度とも呼ばれます。サービスや商品、企業など評価対象について、他者に勧めたいかを数値化した指標です。
NPS®の評価方法は、サービスに対する信頼度や愛着度が高ければ、自身の家族や友人に推奨したくなるという考え方を前提として、他者への推奨度を尋ねる質問に対して、0〜10までの11段階で回答をすることで評価をします。
得られた評価によって、顧客を「批判者(0~6)」「中立者(7~8)」「推奨者(9~10)」の3分類に分けて、回答者全体における推奨者の割合から、批判者の割合を引いた値がNPS®となります。
計算式は、以下のようになります。
NPS®=[推奨者(評価9~10)の割合]÷[批判者(評価0~6)の割合]
NPS®が満足度と異なるのは、「未来の行動」を質問している点です。
一般に、満足度調査は過去の体験に基づく過去や現在の感情を質問しますが、NPS®では「家族や友人に推奨しますか?」という、「未来の行動」について質問をしています。
つまり、NPS®が満足度評価よりも、より業績の変化と連動する性質を持つということが言えます。
よって、NPS®は業績の見立てに使われることも少なくありません。
LTV(顧客生涯価値)
LTVは、Life Time Valueの略で、特定の顧客が自社と取引を始めてから終了するまでの期間において、自社にもたらした収益または利益の総額を指します。
計算式は複数存在しますので、代表的なものをいくつかご紹介します。
各計算式についての詳細やLTVを最大化する方法に関しては、別記事「【関連】LTV(顧客生涯価値)とは?計算方法や最大化するための方法についてわかりやすく解説します」に詳しくまとめております。合わせてご覧ください。
さいごに
カスタマーサクセスにおけるKPI指標について、解説をしました。
単純な用語解説にとどまらないように、実務に活用できるように解説をさせていただきました。
ぜひみなさまの業務にお役立てください。
さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。ビジネスリーダーが知っておきたいフレームワークを中心にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。