働き方改革とは?管理職(マネジメント)視点で働き方を改革するための3つのステップ

2018年に働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が公布されてから早数年が経ち、2020年からのコロナウイルスの流行もあり、リモートワークや時短勤務、副業の解禁など、多様な働き方を採用し始めている企業が増えてきています。

働き方改革と言われても、あまりピンとこない話題かも知れません。しかし、労働時間に制約が生まれるということは、今まで意識せずに使っていた営業活動のための時間にも制限が生まれるということでもあります。

とはいえ、事業の成長は経営者や事業責任者の目指すところであり、マーケティング部門や営業部門にとっては、制約が生まれた労働時間の中で、より売上を増やさなくてはなりません。

本記事では、主に管理職(マネジメント)の視点から、働き方改革とは何かということや、働き方を改革するための3つのステップについてわかりやすく解説します。

働き方改革とは

働き方改革とは、日本国内における一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジとして、今まで当たり前とされてきた「日本企業の労働環境を大幅に見直す取り組み」を指します。働き方改革の背景には、昨今、問題視されている日本の課題が深く関係しています。

※厚生労働省の調査を参照

◎労働人口の減少
日本が直面している課題の一つ目は、労働人口の減少です。労働力の中核といわれる生産年齢(15歳以上65歳未満)人口は、1995年を境に減少傾向に転じており、今後、人手不足が深刻化する見通しとなっています。

◎長時間労働と過労死
日本が直面している課題の二つ目は、長時間労働と過労死です。長時間労働に起因する過労死は、依然として少なくありません。働き方改革を通じて、長時間労働の是正、働く人が健康で活躍できる就労環境の整備が目指されています。

◎労働生産性の低さ
日本が直面している課題の三つ目は、労働生産性の低さです。日本の労働生産性は主要先進国の中では特に低い状況です。労働人口が減少する中、1人あたりの生産性を高めることで、少ない人員でも成果を出していく必要があります。

働き方改革の目的

働き方改革の目的(期待されていること)は、一人ひとりの意思や能力、個々の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会を追求していくことで、「労働者にとっての働きやすさ」を実現していくことにあります。意欲のある人が、無理なく働けるようになることで、次のような効果が期待できると考えられています。

◎国としての目的(労働者の増加と税収増)
高年齢者も含め、意欲のある人が幅広く労働力として活躍できる体制を作ることで、労働者の増加と税収増が期待できます。

◎企業としての目的(人材確保と生産性向上)
一人ひとりの意思や能力、個々の事情に応じた、多様で柔軟な働き方に対応することで、人材確保と生産性向上が期待できます。

◎個人としての目的(QOLの向上)
多様で柔軟な働き方が選択可能となることで、QOL(Quality of Life:生活の質)を向上させ、私たちが生きる上での満足度を高めることが期待できます。

働き方改革関連法とは

働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)とは、2018年に公布された8本の労働法の改正を行うための法律です。働き方改革法による8つの法改正事項と、各項目の適用開始時期については以下のとおりです。既に、多くの法改正事項が適用され始めています。

働き方改革関連法の8つの項目

働き方改革は、法的な効力も持つ制度です。働き方改革法による法改正事項についてご紹介いたします。

残業時間の「罰則付き上限規制」
労働者の過労死等を防ぐため、残業時間を原則月45時間かつ年360時間以内、繁忙期であっても月100時間未満、年720時間以内にするなどの上限が設けられ、これを超えると刑事罰の適用もあります。

5日間の「有給休暇取得」の義務化
年10日以上の有給休暇が発生している労働者に対しては、会社は必ず5日の有給休暇を取得させなければならない義務を負うことになります。

「勤務間インターバル制度」の努力義務
疲労の蓄積を防ぐため、勤務後から次の勤務までは、少なくとも10時間、あるいは11時間といった、心身を休める時間を設けることが望ましいとされ、努力義務が設けられます。

「割増賃金率」の中小企業猶予措置廃止
中小企業には適用が猶予されていた、月の残業時間が60時間を超えた場合、割増賃金の割増率を50%以上にしなければならないという制度が全ての規模の企業に適用されるようになります。

「産業医」の機能を強化
従業員の健康管理に必要な情報の提供が企業に義務付けられ、その一環として事業主には客観的な方法での労働時間把握義務が課されることになります。

「同一労働・同一賃金の原則」の適用
正規・非正規の不合理な格差をなくすため、判例で認められてきた「同一労働・同一賃金の原則」が法文化されます。

「高度プロフェッショナル制度」の創設
年収1,075万円以上で、一定の専門知識を持った職種の労働者を対象に、本人の同意等を条件として労働時間規制や割増賃金支払の対象外とする制度が導入されます。

「3ヶ月のフレックスタイム制」が可能に
最大で1ヶ月単位でしか適用できなかったフレックスタイム制が、2ヶ月単位や3ヶ月単位でも適用することができるようになります。

働き方改革のメリット・デメリット

働き方改革のメリット・デメリットについて見ていきましょう。

企業側のメリット・デメリット

まずは、企業側の視点に立った際のメリット・デメリットについてご紹介します。

◎企業側のメリット
・働き方改革に熱心な企業という社会的な評価
・人材確保が以前よりも容易になる

◎企業側のデメリット
・多様な働き方に対応できる体制の構築が必要
・同一労働・同一賃金の原則により、人件費が高騰する可能性がある
・従業員の総労働時間が減っても、企業を成長させる必要がある

◎企業視点で議論されていること
・多様な働き方に対応できる体制(人事制度・就業環境)の構築に関する議論
・人件費の高騰への対応(人件費の最適化)に関する議論
・生産性の向上(効率化・自動化・IT化)に関する議論

従業員側のメリット・デメリット

続いて、従業員側の視点に立った際のメリット・デメリットについてご紹介します。

◎従業員側のメリット
・自分にあった働き方を選択できるようになる
・ストレスが緩和される
・残業時間の上限値が法律で決められるので、適度な休息をとることができる

◎従業員側のデメリット
・残業手当が大幅に減り、総賃金が減る可能性がある
・一般社員は過労働から解放される反面、管理職の負担が増える可能性がある
・労働時間が減っても、今までと同等以上の成果が求められてしまう

◎従業員視点で議論されていること
・賃金や評価制度に関する議論
・労働負荷の偏りの是正に関する議論
・生産性の向上(無駄な業務を減らし、本来やるべき業務に集中したい)に関する議論

働き方改革の実情

働き方改革の実情について、3つの視点で紹介します。

生産性の向上に取り組まざるを得ない

働き方改革は、企業・従業員の双方がメリットを享受できますが、反面、生産性が向上できないと成り立たない改革でもあります。しかし、働き方改革は、法的な効力も持っている制度のため、生産性の向上に取り組まざるを得ないのが実情です。

管理職(マネジメント)の負担が増加

パーソル総合研究所の調査によると、働き方改革が進んでいるものの、管理職(マネジメント)の業務量、そして組織の業務負担の増加や人手不足から、管理職(マネジメント)が負担を感じる割合が増加してきています。

※パーソル総合研究所の調査を参照

働き方改革が進んでいる企業の方が、進んでいない企業と比べて管理職の業務量が増えている、という皮肉な結果も出ています。

生産性が向上できないまま、働き方改革のもとに部下の労働時間が減ったことで、管理職(マネジメント)の業務量が増えてしまっていると考えられます。働き方改革が成り立っている状態とは言い難く、多くの管理職がしわ寄せを受けてしまっている状態です。

フォーカスすべきポイント

管理職(マネジメント)の業務量を増やさずに生産性の向上に取り組み、働き方改革を成り立たせるためには、どのような点に注力すべきでしょうか?

業務にはコア業務とノンコア業務と呼ばれる区分けがありますが、結論から申しますと、このノンコア業務をできるだけ省力化・効率化させることが、働き方改革を実施する上でフォーカスすべきポイントになります。

コア業務とは、営業活動やマーケティング活動、戦略立案や人材育成など、本来実施することを期待される、事業の利益に直結する業務です。言い換えれば、業務の付加価値を最大化するために行う業務です。

それに対してノンコア業務とは、データの集計や社内資料作成、雑務といったその業務自体で利益は生まれないものの、業務を遂行するためには行う必要のある業務です。

働き方改革のためにフォーカスすべきポイントは、ノンコア業務の効率化です。

ノンコア業務は定型化されている一種の「作業」であるケースが多いため、ノンコア業務をできるだけ省力化・効率化させ、付加価値の高いコア業務の比重をシフトすることができるようになります。

管理職(マネジメント)視点で働き方を改革するための3つのステップ

管理職(マネジメント)視点で働き方を改革するためには、以下の3つのステップについて考えていく必要があります。

業務の見える化

一つ目のステップは、業務の見える化です。どのような業務があるのかを洗い出して見える化し、把握することが大切です。

例えば、マーケティング部門であれば、マーケティング活動全体を通して得たリード数は把握していても、各施策別にはどのくらい獲得できたか、あるいは獲得したリードから営業部門に引き渡したリードがどのようにフォローされているかなどはリアルタイムで把握する術がなく、社内報告の度に確認・集計の手間が発生している、ということがあるかも知れません。

営業部門でも同様に、受注件数や売上は把握していても、営業担当者別の仕掛かりの商談数と各商談の状況、提案書の提出数、あるいは新規見込客への訪問数や架電数などはリアルタイムで把握する術がなく、社内報告の度に確認・集計の手間が発生しているかも知れません。

このように、マーケティング部門や営業部門においても、さまざまなノンコア業務が発生しています。洗い出して確認しなければ「あの人がそんな作業までやっていたなんて今まで知らなかった」という業務も少なからず出てくることでしょう。また、経営層や他部門への報告業務を担う管理職では、ノンコア業務の比率が大きくなる傾向があります。

改善可能な業務を探す

二つ目のステップは、改善可能な業務を探すことです。どのような業務があるのかを洗い出して見える化し把握したら、次は改善可能な業務を探しましょう。

上記のマーケティング部門や営業部門のノンコア業務の例であれば、データの集計や社内報告業務などは、定型化されている一種の「作業」であると考えることができます。

この業務の手間を改善することができれば、より生産性の向上に直結するコア業務に時間を充てることができる可能性があります。

業務を省力化・自動化する

三つ目のステップは、業務を省力化・自動化することです。改善可能な業務を見つけたら、実際に業務を省力化・自動化していきましょう。

上記のマーケティング部門や営業部門のノンコア業務の例であれば、MASFAなどの顧客管理システムを導入すれば、データの取りまとめやレポート作成を自動化することができるようになる可能性が高いです。

また、関係者にシステム内でレポートを確認してもらう、あるいは通知メールなどで定期的にレポートを送って確認してもらうことによって、報告業務自体を省力化、あるいは自動化して作業自体を無くすことができる可能性もあります。

このようにノンコア業務をできるだけ省力化・効率化させることができれば、仕掛かり中の商談を受注につなげるための戦略を立てたり、顧客へのアプローチ数を増やしたりするなど、付加価値の高いコア業務の比重を増やし、限られた時間での生産性を高めることができるようになります。

生産性向上のためのソリューション

生産性向上のためのソリューションについてもご紹介します。

ITツールの活用

一つ目のソリューションは、ITツールの活用です。ITツールを使うと様々な業務において業務効率化を実現でき、生産性の向上につながります。

先程のマーケティング部門や営業部門の例であれば、MASFAなどの顧客管理システムなどのITツールを活用すれば、ノンコア業務を大幅に削減することができるようになります。

また、経理部門であれば経費生産システム、購買部門であれば購買管理システムと、さまざま業務に対して業務効率化のためのITツールが存在します。

この業務は手作業で行うしかない、とはじめから諦めてしまわずに、ITツールによって業務の置き換えができる可能性がないか、情報を集めてみることをおすすめします。

アウトソージングの活用

二つ目のソリューションは、アウトソージングの活用です。最近ではBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)と呼ばれることもあります。

生産性向上の阻害要因として定型業務に時間を取られてしまうこととは別に、はじめて行う専門的な業務に大きく時間を取られてしまい、結果としてコア業務に時間を割けないといったケースもあります。

先程のマーケティング部門や営業部門の例であれば、MASFAなどの顧客管理システムの選定や導入、導入後のシステム設定に関わる一連の作業、あるいはホワイトペーパー作成業務などがそれに当たります。

ITツールの活用と同様に、既に社内で定型化されている業務をお願いすることもできますが、専門性を伴う業務を効率的に行うためにアウトソージングを活用することも、必要に応じて検討することをおすすめします。

さいごに

本記事では、主に管理職(マネジメント)の視点から、働き方改革とは何かということや、働き方を改革するための3つのステップについて解説してまいりました。

働き方改革は、企業・従業員の双方がメリットを享受できますが、反面、生産性が向上できないと成り立たない改革でもあります。皆さまが大きなしわ寄せを受けることのないよう、生産性の向上に取り組みながら働き方改革との両立を実現しましょう。

さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。マーケティングの基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。

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