AISASモデル(アイサスの法則)|マーケティングに利用される購買行動プロセスのフレームワーク

消費者の購買行動は複雑で多様化しています。効果的なマーケティング戦略を構築し、顧客を引きつけるためには、購買行動プロセスの理解が不可欠です。そこで注目されるのが、AISASモデル(アイサスの法則)です。

本記事では、AISASモデルがマーケティングにおいてどのように利用され、企業が消費者の心に響くコミュニケーションを構築するのに有益か否かに焦点を当てます。

AISASモデル(アイサスの法則)の概要

AISASモデルは、Attention(注意)・Interest(興味)・Search(検索)・Action(行動)・Share(共有)の頭文字を組み合わせた消費者の購買行動プロセスを理解するための有力なマーケティングのフレームワークです。このモデルは、一連のステップを通じて消費者に魅力を提供し、商品やサービスに関する意思決定を促進します。

マーケティングに利用される購買行動プロセスのフレームワーク

顧客が商品を認識して契約に至るまで、さまざまな検討や行動をとります。これらの行動を大まかに段階分けし、購買行動モデルの一環として確立されました。2005年に電通が商標登録したこの用語は新しくもあり、今の時代に沿った購買行動プロセスのフレームワークであると言えるでしょう。

AISASモデルは、顧客が製品やサービスに注目し、それに関心を持ち、詳細な情報を検索し、具体的な行動を起こし、そしてその経験を共有する一連のプロセスを包括しています。このモデルは、購買行動プロセスを理解する上で非常に有益なフレームワークとなっています。特に、消費者のオンライン活動がますます重要視される現代において、AISASモデルの理解と活用は極めて重要です。

参考:AIDMAモデル(アイドマの法則)との違い

AISASモデルとAIDMAモデル(アイドマの法則)は、どちらもマーケティングにおける購買行動のフレームワークですが、それぞれ異なるアプローチや焦点を持っています。

AISASモデルでは、Attention(注意)・Interest(興味)・Search(検索)・Action(行動)・Share(共有)の五つのステージから成り立っています。これは、顧客が商品やサービスに注目し、興味を持ち、検索を行い、行動に移り、最終的にはその経験を共有するという流れを表しています。特に、AISASはデジタル時代におけるオンラインでの購買行動を考慮しています。

一方で、AIDMAモデルはAttention(注意)・Interest(興味)・Desire(欲望)・Action(行動)の四つのステージから成り立っています。AIDMAは、商品やサービスに対する顧客の欲望や需要を強調し、その欲望を具体的な行動に結びつける点が特徴です。このモデルは、感情や欲望に焦点を当て、商品やサービスに対する顧客の深い関与を強調しています。

これらの異なる要素を強調するAISASモデルとAIDMAモデルは、企業が特定の市場や商品に対してどのようなアプローチを取るかに影響を与えます。どちらのモデルも、顧客の購買行動を理解し、効果的なマーケティング戦略を構築するための重要なツールとなっています。

AIDMAモデル(アイドマの法則)については、別記事「AIDMAモデル(アイドマの法則)|購買行動プロセスの基礎理論を具体例付きで紹介」に詳しくまとめております。合わせてご覧ください。

AISASモデル(アイサスの法則)による消費者の購買行動プロセス

AISASモデル(アイサスの法則)による消費者の購買行動プロセスは、Attention(注意)、Interest(興味)、Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)の5つのステップから成り立っています。それぞれのステップがどのような意味を持ち、購買行動にどのように影響を与えるかを見ていきましょう。

A:Attention(注意)

AISASモデルの最初のステップは、商品やサービスに対する顧客の注意を引くことです。広告、キャッチフレーズ、視覚的な要素などを活用して、顧客が商品やサービスに注目するきっかけを作り出します。

I:Interest(興味)

一度注意を引いたら、次は興味を持ってもらうことが重要です。商品やサービスの魅力や利点を伝え、顧客に興味を抱かせる要素を強化します。クリエイティブなコンテンツや特長的な情報を提供することで、興味を引き立てます。

S:Search(検索)

顧客が興味を持ったら、次は詳細な情報を求める検索のステップです。顧客が主体的に情報収集を行い、商品やサービスに関する詳細な情報を見つけることが期待されます。ウェブ検索や口コミ、レビューなどが活用されます。

A:Action(行動)

情報収集が終わったら、行動に移る段階です。具体的な購買、契約、申し込みなど、顧客が望むアクションを起こすことが期待されます。スムーズで効果的な行動を促すことが重要です。

S:Share(共有)

最後のステップは、顧客が自らの経験や意見を共有する段階です。ソーシャルメディアでのシェアや口コミの発信などがこれに当たります。良い体験が他の顧客にも広まり、商品やサービスの認知度向上に寄与します。

このように、AISASモデルは消費者の購買行動を具体的な段階に分け、各ステップでのマーケティング施策を考えるのに役立つフレームワークとなっています。

AISASモデル(アイサスの法則)の活用

AISASモデルは、マーケティング戦略の構築において非常に有益ですが、その活用にはいくつかのケースがあります。

AISASモデルの活用に向いているケース

活用に向いているケースの一つ目は、オンラインプレゼンスが強い場合です。AISASモデルはデジタル時代におけるオンラインでの購買行動を考慮しています。オンラインプレゼンスが強く、デジタルチャネルを効果的に活用する企業やブランドにとって適しています。ソーシャルメディアやウェブ広告などのデジタルメディアが注目を集める中で、AISASは顧客の注目を引きやすくします。

活用に向いているケースの二つ目は、感情的なつながりを強調する商品やサービスの場合です。AISASモデルは、共感や感動といった感情的な要素に焦点を当てています。したがって、感情的なつながりを強調する商品やサービスに適しています。例えば、ライフスタイル製品やエンターテインメント関連の商品は、AISASを用いたアプローチで顧客との深い関与を築くことができます。

活用に向いているケースの三つ目は、顧客のコミュニケーションが重要な場合です。AISASはShare(共有)という要素を含んでおり、顧客が商品やサービスの経験を他者と共有することを想定しています。製品の口コミやシェアがビジネスにとって重要な場合、AISASモデルは効果的です。

AISASモデルの活用に不向きなケース

活用に不向きなケースの一つ目は、冷静な合理的判断が求められる商品の場合です。AISASは感情やインスピレーションを強調するモデルであるため、冷静で合理的な判断が求められる商品やサービスには適していません。例えば、BtoB向けの専門的な製品やサービスなどが該当します。

活用に不向きなケースの二つ目は、購買プロセスが複雑で長期的な場合です。AISASは比較的単純な購買行動を前提としています。もし購買プロセスが複雑で長期的なものであり、多くの段階や専門的な情報が必要な場合、より詳細なモデルが必要です。

活用に不向きなケースの三つ目は、オフライン取引が主体の場合です。AISASは主にデジタル時代を対象にしています。オフラインでの購買行動が主体の場合、AISASよりも従来の手法やAIDMAモデルが適しているかもしれません。

AISASモデルの適否は、企業や商品の特性、ターゲット市場などによって異なります。戦略の検討段階でこれらの要因を考慮し、適切なモデルを選択することが重要です。

AISAS活用の成功事例

この段落では、AISASモデルを活用して成功を収めた企業の具体的な事例を紹介し、その成功の要因やモデルの活用法に迫ります。

Apple

一つ目の事例は、Apple 社です。Apple社は卓越したマーケティング戦略によって数々の成功を収めています。以下に、Apple社がAISASモデルの各ステージでどのように顧客の購買行動を促進してきたかを解説します。

◎Attention(注意)
Appleは斬新で洗練された製品デザイン、魅力的な広告キャンペーン、そして新製品発表イベントなどを通じて、世界中の顧客の注意を引くことに成功しています。例えば、iPhoneの発表会では独自のプレゼンテーションスタイルでメディアの注目を浴び、顧客に新製品に対する期待感を高めました。

◎Interest(興味)
Appleは製品の特徴や性能に焦点を当て、独自のエコシステムを築くことで顧客の興味を引きました。これにより、製品に対する深い理解と関心が生まれ、他社との差別化が図られました。

◎Search(検索)
顧客がApple製品に関する情報を探す際には、公式ウェブサイトや専用のストア、信頼性の高いレビューサイトが提供する情報が豊富です。Appleはこれらのプラットフォームを活用し、購買前に顧客が十分な情報を得られるようにしました。

◎Action(行動)
購買行動に移行する段階では、Appleはオンラインストアやリテールストア、販売代理店を通じてスムーズで利便性の高い購買体験を提供しました。加えて、限定的な商品や期間限定のキャンペーンを通じて購買を促進しました。

◎Share(共有)
Apple製品は卓越したユーザーエクスペリエンスと品質を提供することで口コミが生まれ、顧客は自らの満足度を友人や家族と共有することが一般的です。Appleはまた、ソーシャルメディアを活用して顧客の共有行動を後押しし、製品の認知度向上に寄与しています。

Apple社のAISASモデルへの巧妙な適用により、製品への期待、関心、購買行動が継続的に促進され、世界的な成功を収めています。

スターバックス

二つ目の事例は、スターバックス社です。スターバックスは、AISASモデルを巧みに活用して、世界中で人気のコーヒーブランドとして成功を収めています。以下に、スターバックスがAISASモデルの各ステージでどのように顧客の購買行動を促進しているかを解説します。

◎Attention(注意)
スターバックスは、独自のカフェ体験やコーヒーカルチャーを提供することで、顧客の注意を引いています。特有のロゴや緑色のカップもブランドを象徴し、視覚的な認知度を高めています。

◎Interest(興味)
店内では様々なコーヒー豆の香りや豊富なメニューが顧客の興味を引きます。また、季節ごとの限定商品や、独自のリワードプログラムなども興味を維持し、リピート購買を促進しています。

◎Search(検索)
オンラインプラットフォームや公式アプリを通じて、スターバックスは詳細な商品情報や店舗検索、リワードプログラムの利用方法などを提供しています。これにより、顧客は簡単に必要な情報を検索できます。

◎Action(行動)
スターバックスは店頭でのスムーズな注文体験や、オンラインでのアプリを通じた事前注文・決済サービスを提供しています。これにより、顧客は迅速で便利な購買体験を享受しやすくなっています。

◎Share(共有)
スターバックスはソーシャルメディアを積極的に活用し、ユーザーが店舗や商品に関する体験を共有しやすい環境を整えています。また、友達や同僚との集まりに利用されることが多く、口コミや共有が自然に発生しています。

スターバックスはこれらの要素を組み合わせ、顧客が注意を引き、興味を持ち、検索をし、行動に移り、その体験を共有するというAISASモデルを成功裏に適用しています。その結果、スターバックスは世界的に愛されるコーヒーブランドとしての地位を確立しました。

キーエンス

キーエンスは、その先進的な技術と製品ラインにより、AISASモデルを活用した成功事例が豊富です。以下はキーエンス社のAISASモデルを通じた成功事例の一部です。

◎Attention(注意)
キーエンスは、高性能で革新的なセンサーや計測機器により、産業界の注目を集めています。彼らの製品は精密な測定や品質管理において重要な役割を果たし、これが業界や専門家からの注目を集める原動力となっています。

◎Interest(興味)
キーエンスの技術革新と製品の優れた性能により、企業や製造業者の興味を引き寄せています。これは特に、製造プロセスの効率向上や品質管理の向上に関心を持つ企業にとって重要です。

◎Search(検索)
企業やエンジニアが特定の課題や要件に対して解決策を探す際、キーエンスの製品は高い検索性能を発揮しています。オンラインや専門的なコミュニティでの情報共有においても、キーエンスの製品に関する積極的な検索が行われています。

◎Action(行動)
興味を持ち、検索を通じて必要な情報を得た企業や技術者は、積極的にキーエンスの製品を導入し、生産プロセスの向上や効率化を実現しています。これは製造業や工業分野での具体的な行動として表れています。

◎Share(共有)
キーエンスの製品や解決策を導入した企業やエンジニアは、その成功体験や成果を積極的に共有しています。これが口コミや専門的なイベントなどを通じて、他の関連業界や企業に影響を与え、キーエンスの製品を推奨する要因となっています。

キーエンスはAISASモデルを通じて、顧客の注意を引き、興味を持たせ、検索・行動を促し、そして成功事例を共有することで、産業用センサーや計測機器の分野において強力な影響力を発揮しています。

成功事例からもわかるように、特に先進的な製品やサービスを提供する企業は、AISASモデルを通じて継続的な顧客エンゲージメントを築いています。このモデルはデジタル時代の購買行動にマッチし、顧客との深い関係を築くための手法として広く活用されています。企業はAISASモデルを戦略的に導入し、顧客との対話を通じてブランドの価値を最大化することで、競争激化する市場で差別化を図ることができるでしょう。

AISASモデル(アイサスの法則)は古い?

AISASモデルは一部で古いとされる意見がありますが、その有効性は依然として高いと言えます。ただし、特定の要因によっては適切でない場合もあります。

市場の飽和による影響

市場が過剰に飽和している場合、消費者の選択肢が膨大であるため、AISASモデルだけでは際立った差別化が難しいことがあります。このような状況では、他のマーケティング手法や新しいアプローチが求められるかもしれません。企業はオリジナリティを追求し、よりクリエイティブで効果的な戦略を模索する必要があります。

BtoBには不向きなのか

BtoBでは、AISASモデルが直接的に適用されるケースが限られることがあります。ビジネスの取引や契約は通常、複雑で長期にわたるプロセスを伴います。そのため、AISASモデルの各ステージが一貫して適用されるわけではなく、より専門的なアプローチが求められることがあります。BtoBにおいては、顧客との信頼関係の構築や専門的なニーズに焦点を当てた戦略が有効です。

総じて、AISASモデルは依然として有用であるが、市場の特性やビジネスの性質によっては他の手法と組み合わせるなど柔軟に運用することが求められます。

さいごに

AISASモデル(アイサスの法則)は、消費者の購買行動を理解し、ターゲットオーディエンスに対して的確かつ効果的なアプローチを提供する強力なフレームワークです。注意を引きつけ、興味を喚起し、検索や行動へと導く各ステージは、デジタルマーケティング全盛時代の複雑な市場環境においても有効です。

しかしながら、AISASモデルも常に進化し続けるマーケットにおいては、柔軟性が求められます。新たなトレンドや技術の浸透に敏感であり、顧客の期待に応えるためには創造的で柔軟なアプローチが不可欠です。

さいごになりますが、プロレクトでは、コンテンツマーケティングの支援を通じてクライアント様の認知度向上やリード獲得に貢献します。当社のコンテンツマーケティング支援パッケージは、戦略の構築から具体的な実行までを包括的にサポートします。質問や相談、そして具体的なご要望については、お気軽にお問い合わせください。

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