商談の事前準備とは、商談のアポイントが取れてから、相手に会うまでにしておかなければならない準備です。商談前には、自社や自社の商品やサービス、面談の目的を事前に伝えておく必要があります。また、お客さまの課題やニーズを想定して仮説を立てておくことも、この段階でしておかなければなりません。
本記事では、営業担当者なら抑えておきたい、商談の成功率を高めるための事前準備の8つのステップについてご紹介いたします。
目次
商談の事前準備が大切な理由
商談はお客さまに時間を割いていただく場でもあります。そのため、お客さまに商談の時間が有意義だったと感じていただくためにも、しっかりと準備をして訪問する必要があります。何事も基本は大切です。
商談の機会というものは、必ずしも次があるものではありません。法人営業の場合、なおさらその傾向は強くなります。法人営業が向き合う商談には、以下の2つの特性があるからです。
- 商品やサービスの導入を検討する機会はそう頻繁に発生しないため
- (初回訪問時は特に)企業間取引に値する相手かどうかを判断されるため
法人は、商品やサービスの購入の際に社内の承認を得る必要があります。無計画に購入するということはほとんどなく、購入の計画を立てている商品やサービスを除いては、法人が商品やサービスの導入を検討する機会はそう頻繁に発生しないのです。そのため、目の前の商談の機会に全力を注ぐ必要があるのです。
また、法人は商品やサービスの購入の際に「なぜその商品やサービスなのか」「なぜその会社から購入するのが良いのか」など、社内に説明することも必要です。そのため商談の場は、企業間取引に値する相手かどうかを見定めるための場でもあるのです。
このような理由から、一つひとつの商談を成約につなげる可能性を最大化するために、事前準備を行うことが大切になります。
顧客理解の方法に関しては、別記事「顧客に会う前にやっておきたい、顧客理解のための10の具体的方法」でもご紹介しております。合わせてご覧ください。
商談の成功率を高めるための事前準備8つのステップ
ここからは、商談前にどのような準備が必要なのか、実際に見ていきましょう。商談の成功率を高めるための事前準備は、次の8つのステップに分かれています。
お客さまへの事前情報提供
一つ目のステップは、お客さまへの事前情報提供です。自社や自社商品・サービスに対するお客さまの理解度を把握し、事前に理解度を上げておくことを目的に行います。
初対面の人を相手に商談をするときには、はじめに自社や自社の商品・サービスについて知って貰わなければなりません。しかし、訪問して会ったときに一から説明するのは時間がかかります。そのため、相手が自社や自社の商品・サービスについてどのくらい理解しているのか、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
事前に自分の会社や商品・サービスに関する資料を送っておくことも有効です。最初の商談の時に話がスムーズに進みます。
- 「以前にも○○を検討されたり、実際に利用されたことはありましたでしょうか?」と確認しておく
- 「事前に○○の資料をお送りさせていただいてもよろしいでしょうか?」と確認しておく
- 自分の会社や商品・サービスに関する資料を事前にメールや郵送で送っておく
◎チェックリスト
お客さまの事前理解
二つ目のステップは、お客さまの事前理解です。企業に関する情報を得ないまま営業活動に行くのは無謀です。相手も「当社のことをよく調べているなあ」と感じたら、より詳しい内部の情報を教えてくれるかもしれません。逆に、何も知らない(知る気がない)相手には何も話してくれないでしょう。
また、企業の情報収集だけではなく、面談する相手についてもできるだけ情報を集めておいた方が良いです。人によって立場(職種や役職)によってニーズは異なるからです。
相手企業や担当者について事前に調べておくことで、相手との関係構築やヒアリングを円滑に行うことができるようにしておきましょう。
- 企業について情報収集しておくこと(事業内容、社員数、全国の事業所など活動エリア、主力製品・サービス、売上の伸び率、ビジネスモデル、IR情報(上場企業の場合)、与信評価(銀行の格付)、競合相手など)
- 担当者について情報収集しておくこと(相手の立場を知る(部署や役職、決裁権がある人か否か)ブログやSNSなどから情報を収集する(出身や経歴、志向性など))
◎チェックリスト
アポイント内容の事前確認
三つ目のステップは、アポイント内容の事前確認です。些細なミスやトラブルが起きることを防ぐことが目的となります。
営業成績の良い営業マンにとっては当たり前のことですが、営業成績の奮わない営業マンや新人営業マンはなかなか取り組めていないのがこのステップです。事前確認を怠ると、些細なミスやトラブルが起きやすくなってしまいます。
アポイント当日は、何人を相手に面談するのか、何を話すのか、資料を印刷して持参した方が良いのかなど、前日までに確認と認識合わせを行いましょう。
- 面談目的、日時・場所、参加メンバー、同行者、準備物・持参物、などを確認しておく
◎チェックリスト
お客さまの「ニーズ」の想定
四つ目のステップは、お客さまの「ニーズ」の想定です。お客さまのニーズを想定しておくことで、できるだけスムーズにヒアリングから提案につなげることが目的となります。
このステップから、事前準備において重要な「仮説を立てる」という段階に入ります。仮説を立てるとは、お客さまのニーズとは「何かを解決したい」もしくは「改善したい」という願いのことです。それを商談に入る前にあらかじめ想定しておくことが大切です。もし、社内に同業他社の案件があるのなら、その案件をもとにニーズを想定するのもおすすめです。
また、お客さまのニーズが想定できたら、そのニーズが正しいといえるか理由づけをします。自分の思いつきや思い込みではなく、なぜ、どのように、何のためにその仮説を立てたのか、過去の事例を調べたり、資料を読み直していま一度検証してみましょう。
- 面談目的、日時・場所、参加メンバー、同行者、準備物・持参物、などを確認しておく
- ニーズを想定したら、理由(論拠)を洗い出し、お客さまにも説明できるようにしておく
- 新人営業マンであれば、上司や先輩にも確認するようにしましょう。
◎チェックリスト
想定を確認する方法の決定
五つ目のステップは、想定を確認する方法の決定です。自分が想定したニーズがあっているか、面談時にお客さまに確認し、答え合わせを行うことを目的に、あらかじめ決めておく必要があります。
ニーズの仮説が立てば、それをどのようにお客さまに確認するのか方法を考えていきます。お客さまに確認する方法はお客さまとの関係構築がどのくらいできているかで変わってきますが、ストレートに聞いてみる、確認したい内容に関連するテーマの話をふり、関連する話を聞き出すところから始める、など、さまざまな方法が考えられます。
- 自分が想定したニーズがあっているか、面談時にお客さまに確認するためのトークを準備する
- 新人営業マンであれば、上司や先輩にも確認するようにしましょう。
◎チェックリスト
提案内容の企画立案
六つ目のステップは、提案内容の企画立案です。自社の商品やサービスについて、お客さまに知っておいていただきたい要点をまとめておき、提案に対する理解度をあげてもらうことを目的に行います。
ニーズをある程度想定したら、お客さまに商品やサービスを提案するための資料を作成します。初回面談ならば、無関心を克服するための事例紹介のための資料だったり、2回目以降の提案の面談ならば、提案書を作成するなどです。商談全体のステップに応じて準備が必要です。
また、商品やサービスの価値を実感してもらうためには、データが強力な味方になります。お客さまと同じ業種で、同じような悩みを抱えていた企業が商品やサービスを導入することでどう変わったのか、できれば数字も交えながら説明すると説得力が増します。これも事前に作成しておくと良いでしょう。
- 1ページから数ページで簡潔に要点をまとめた資料を準備しておく
- 会社ごとにフォーマットがあるなら、それに沿った内容で資料を作成する
- 類似企業の事例の資料がないか確認しておく
- 類似企業の事例について、数字も交えながら説明ができるようにしておく
◎チェックリスト
お客さまの「抵抗」の想定
七つ目のステップは、お客さまの「抵抗」の想定です。お客さまの抵抗の芽に気がついたら早い段階で摘んでおくことが大切です。また、お客さまが商談の場で不満を漏らしたら、即座に解消できるように準備をしておくことが大切です。
仮説を立てるとき、ネガティブな状況もあらかじめ想定しておかなければなりません。難色を示されたとき、あるいは無関心だったとき、そのままプレゼンテーションを続けるとますますお客さまの気持ちは離れていくでしょう。
また、お客さまの抵抗を想定できたら、模範解答を用意しておきましょう。お客さまが不満を漏らしたら、即座に解消できるようにしておきましょう。
◎お客さまの6大抵抗(代表的な6つの抵抗)
①金額 → 「ちょっと高すぎるんじゃないの」
②時期 → 「そのうちにね」「とくに急いでないから」
③効果 → 「本当にそんな効果があるの」「費用対効果を得られるかわからない」
④優位性 → 「他にもっと良い手立てがあるのでは」
⑤持続性 → 「いつまで使い続けられるのか」
⑥関係性 → 「すでに長年お付き合いしているところがあるので」
◎お客さまの6大抵抗(代表的な6つの抵抗)への切り返し例
①金額 → 誤解:「高くない」「見方を変えると安い」という証拠・事例を用意する
②時期 → 不要・不急:問題を放置してしまった場合のマイナス点と、問題を今解
決することのプラス点を明確に意識してもらうため、数値化、感覚化さ
せるための質問を用意する
③効果 → 無関心や不審:不審を解消する証拠・事例を用意する
④優位性 → 不審や誤解
⑤持続性 → 不審や誤解
⑥関係性 → 無関心や誤解
面談の落としどころを決める
八つ目のステップは、面談の落としどころを決めることです。面談の落としどころを決める目的は、ズルズルと話をするだけで終わらせず、効率的に商談を進めるためです。
お客さまのニーズを確認するところで終了、決裁者が上司であるときは、次回は上司の同席を求めるところまでお願いする、とその面談のゴールを決めておきます。効率的に商談を進めるためにも、ゴール設定は面談の度に事前に設定しておきましょう。
- ゴール設定は面談の度に事前に設定しておく
- 設定したゴールを達成するために必要であれば、上司の同席もお願いしておく
◎チェックリスト
さいごに
本記事では、商談の事前準備の8つのステップについてご紹介いたしました。「商談の事前準備なのに、やることが多すぎる・・・」と思った方もいらっしゃるかもしれません。しかし、商談は事前準備が9割といわれるように、精度の高い事前準備を行い、一つひとつの商談を大切にすることが、商談の成功率を高めための近道になります。
ぜひ、事前準備の8つのステップを当たり前にこなせるように、訓練していただければと思います。営業力が飛躍的に高まることが実感できるでしょう。
さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。法人営業の基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。