USP(ユニーク・セリング・プロポジション)とは? USPを見極めるためのデータ分析の手順について解説します

消費者があなたの会社の製品やサービスを購入するとき、多かれ少なかれ競合他社と比較・検討してから購入しています。

競合他社と比較・検討されても自社の製品やサービスが選ばれる理由を知ることができれば、独自の優位性がある製品やサービスとして、自信を持って消費者に購入を促すことができるようになります。

結果、マーケティングや営業の生産性は上がります。

本記事では、競合他社と比較・検討されても自社の製品やサービスが選ばれる理由、USP(ユニーク・セリング・プロポジション:Unique Selling Proposition)と、USPを見極めるためのデータ分析の手順について解説します。

USPとは

USP(ユニーク・セリング・プロポジション:Unique Selling Proposition)とは、製品やサービスが持っている独自の強みを意味します。

1940年代にアメリカの広告業界で有名なロッサー・リーヴス氏が提唱した法則で、他社が提供していなく、自社だけが提供できる価値の中で、本当に顧客に求められている部分が、自社が最も強みを発揮できる、競争優位ポイントだと説いています。

USPの重要性

マーケティングや営業を行う上で、自社の商品やサービスのUSP(言い換えれば、セールスポイント)を伝えることができなければ、競合と比較検討されたときに負けてしまいます。

また、企業間取引(BtoB)の場合、USPを伝えることができなければ、見込み客側でも購入のための稟議を起案することができない可能性もあります。製品・サービスを購入する際に、関係者への説明責任が発生するためです。

逆に、自社のUSP(セールスポイント)を理解し、見込み客に上手く伝えることができれば、マーケティングや営業の生産性は上がります。

良いマーケティング担当者や良い営業担当者は、相手に自社のUSPを上手に伝えることに長けています。あなたの知っている良いマーケティング担当者や良い営業担当者も、USPを上手に伝えることに長けているのではないでしょうか?

実際に、明確なUSPを持つことは、マーケティング戦略の成功の35%に相当すると報告している海外のレポートもあります。

バリュープロポジションとの違い

USP(ユニーク・セリング・プロポジション:Unique Selling Proposition)とよく似た言葉に、VP(バリュープロポジション:Value Proposition)という言葉があります。

バリュープロポジションは、1980年代にアメリカのコンサルティングファーム、マッキンゼー&カンパニー社が提唱した概念で、大手企業を中心に広く普及しているマーケティング用語です。

USPとバリュープロポジションも「製品やサービスが持っている独自の強み」を導き出し、マーケティングや営業に活用するという基本的な考え方は同じです。そのため、USPとバリュープロポジションは同じ意味で捉えていただいて問題ありません。

感覚値ですが、営業系の方はUSP、マーケティング系の方はバリュープロポジションを用いることが多いような気がしています。

バリュープロポジションについては、別記事「バリュープロポジションとは?その意味と作り方をわかりやすく解説します」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください

USPを見極めるためのデータ分析の手順

USPが重要なことはご理解いただけと思います。では、実際にUSPを見極めるためには、どのような手順を辿れば良いでしょうか?

USPを見極めるためには、前提としてマーケティングや営業のパイプラインを整備し、かつ見込み客とのやりとりから確認できる定性的な情報をSFAなどに記録し集めておく必要があります。

ただ、マーケティングや営業のパイプライン管理ができ、かつ必要なデータが取得できていれば、データ分析からUSPを見極めることができるようになります。

USPを見極めるためのデータ分析の3ステップは以下のとおりです。

受注率の高い市場セグメントを特定する

一つ目のステップは、受注率の高い市場セグメントを特定することです。市場セグメントが変化すれば、消費者の置かれている立場や状況、購買プロセス、比較対象される競合プレイヤーも変化します。

そのため、まずはUSPを見極めるべき市場セグメントを特定します。経営資源の投下を集中させるべき、受注率の高い市場セグメントを見つけることから始め、USPを特定していくことをおすすめします。

受注率の把握が大切な理由についても詳しく解説します。次の図をご覧ください。

上図では、商談数だけを見ると「建設」が親和性の高い業界だという印象を受けます。また、受注数だけをみると「製造」が親和性の高い業界だという印象を受けます。

しかし、受注率で判断すると、実際には「人材」が自社の商品やサービスに最も親和性の高い業界だということがわかります。

自社の製品やサービスと本当に親和性の高い業界を見極めるためには、商談数や受注数の把握だけでは足りません。特定の業界向けに実施した施策の数などによって結果が大きく揺らいでしまうためです。

そのため、受注率の高い市場セグメントを特定することから始め、USPを特定し、経営資源の投下していくことをおすすめします。

受注率の高いニーズを特定する

二つ目のステップは、受注率の高いニーズを特定することです。受注率の高い市場セグメントが特定できたら、受注顧客をニーズ別に分類し、ニーズ別の受注率も調査してみましょう。

すると、市場セグメントのどんなニーズに対し、自社の製品やサービスが競争力を発揮しているのかわかります。次図は、前図の「人材」市場セグメントを更にニーズ別に分類したものです。

上図では、商談数だけを見ると「ニーズC」が親和性の高いニーズだという印象を受けます。また、受注数だけをみると「ニーズE」が親和性の高いニーズだという印象を受けます。

しかし、受注率で判断すると、実際には「ニーズA」を持つ見込み客が、最も親和性の高いターゲットだということがわかります。

そのため、市場セグメントを分類した際と同様に、受注率を調査し、受注率の高い市場セグメントを特定することが大切です。受注顧客をニーズ別に分類するためには、商談目的や受注理由をヒアリングしておき、 SFAに記録を残しておかなければなりません。

USPを特定する

三つ目のステップでは、いよいよUSPを特定します。USP を特定するためには、受注要因を調べる必要があります。SFAに記載されている商談記録を参照しましょう。

商談目的や受注理由をヒアリングしておき、SFAに商談の記録を残しておくことで、はじめて受注要因を調べることができ、USPを特定できるようになります。

例えば、「他社製品と比較の結果、○○の点で評価された」といった記録を見つけることができれば、そこに書かれている要因がUSP(独自優位性)である可能性が高いです。

SFAの記録から読み取ることが難しければ、実際にお客さまとやりとりしていた営業担当者やお客さまに直接ヒアリングしてみましょう。

USPの活用例

USPが特定できたら、USPをマーケティングや営業に活かしましょう。特に集客からUSPに価値を感じるターゲットに狙いを定めることができれば、商談や受注につながる可能性が高まります。

本記事では、以下の4つの活用例をご紹介します。

ターゲティングに活用

一つ目は、ターゲティングに活用することです。USPはターゲティングに活用できます。どの市場セグメントのどんなニーズに対してUSPを伝えるべきか見直しましょう。

また、ターゲティングを行う市場セグメントを特定する際には、6Rと言われる以下の6つの要素も考慮して決めましょう。

・Realistic scale(有効な規模)
・Rate of growth(成長率)
・Rival(競合)
・Rank(優先順位)
・Reach(到達可能性)
・Response(測定可能性)

USPをターゲティングに活用するという前提上、競合優位性は問題ないと思いますが、特に、有効な規模があるか、という点はよく確認しておくことをお勧めします。

もし、今持っているUSPが成立する市場セグメントだけでは事業が成り立たないのであれば、十分な市場で戦えるだけのUSPを築き上げるという別問題に対処する必要があります。

価値訴求に活用

二つ目は、USPは独自優位性を持つ価値訴求そのものです。例えば、安さ、品質、特徴的なサービスなど、他にはないメリット、自社だけが提供する価値を訴求することで、効果的な広告出稿につながります。

また、SEO記事を作成する際のキーワード選定にも役立ちます。例えば、人材業界のニーズAを持っていそうな人が検索しそうなキーワード、あるいはキーワードの組み合わせで検索されるようにSEO記事を制作することができれば、その記事を閲覧した方が自社の製品やサービスに興味を持つ可能性は高くなります。

クロージングに活用

三つ目は、クロージングに活用することです。USPは、購買ニーズの顕在化している見込み客をクロージングする際に役立ちます。

前述したとおり、良いマーケティング担当者や良い営業担当者は、相手に自社のUSPを上手に伝えることに長けています。USPを魅力的に伝えることができれば、相手に「よし、買おう!御社に決めました!」と言っていただけることでしょう。

クロージングについては、別記事「クロージングとは?クロージングまでの流れと成約率を向上させるためのコツ」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください

リードナーチャリングに活用

四つ目は、リードナーチャリングに活用することです。USPは、あなたの製品やサービスのセールスポイントです。そのため、潜在的な購買ニーズを持っている見込み客の興味・関心を育てるのに役立ちます。

リードナーチャリングについては、別記事「リードナーチャリングとは?実施するメリットと設計する手順をわかりやすく解説します」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください

コツ・留意点

USPを見極めるためのコツ・留意点です。

まず、マーケティングや営業のパイプラインを整備し、データ分析ができるように仕組みをつくりましょう。パイプラインを整備し分析することで、受注率の高い市場セグメントを見つけ、経営資源の投下を集中させるべき市場セグメントが判断できるようになります。

MA/SFA/CRMは早い段階から導入を検討しておくことをおすすめします。見極めたUSPをマーケティングや営業に有効活用するためにも、MA/SFA/CRMを活用してデータ基盤の整備、業務オペレーションの自動化・省力化を進めておくことをおすすめします。

また、USPと同義のバリュープロポジションには、バリュープロポジションの整合性を見極めるためのフレームワーク(バリュープロポジション・キャンパス)が存在します。このフレームワークを活用して、導き出したUSPの整合性を検証してみるのも良いでしょう。

さいごに

本記事では、USPとUSPを見極めるためのデータ分析の手順について紹介しました。

受注率の高い市場セグメントを見つけ、受注率の高いニーズを特定し、自社の製品やサービスが選ばれる理由を知り、活用することができれば、マーケティングや営業の生産性は一気に向上します。

データ分析をする過程で、今までUSPだと思っていたものがそうでは無かった、逆にUSPだと思っていなかったものがUSPとして評価されていた、というように、新たな発見があるかも知れません。自社のMAやSFA/CRMに蓄積されているデータを活用し、分析してみてはいかがでしょうか。

当社では、マーケティングの基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、あわせてご活用いただければ幸いです。

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