CAC(顧客獲得コスト)とは?概要や計算方法、LTVとの関係について解説します

ビジネスにおいて一人当たりの顧客を獲得するためにかかるマーケティング費用は、一般的には安くはありません。

そのため、マーケティング活動に使うお金を増やそうと思っても、関係者から「それだけのお金を何に投資して、どれだけの新規顧客の獲得を見込んでいるのか」という説明を求められることになります。

ここで重要になるのが、CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得コスト)という考え方です。

本記事では、CAC(顧客獲得コスト)の概要や計算方法、LTVとの関係についてわかりやすく解説します。

CAC(顧客獲得コスト)とは

CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得コスト)とは、新規顧客を獲得するためにかかる費用のことです。

具体的には、広告費や販売員の人件費、キャンペーン費用、Webサイトの制作費用や運用費用などが含まれます。これらのコストを新規顧客数で割ることで、1人あたりの獲得コストがわかります。

CAC(顧客獲得コスト)が重要な理由

CAC(顧客獲得コスト)が重要な理由は、以下のような点があります。

    ①顧客獲得に必要なコストが把握できるため、ビジネスの効率性を高めることができます。
    ②CACが高い場合は、獲得した顧客があまり利益をもたらさない可能性があります。そのため、ビジネス戦略の見直しが必要となります。
    ③CACとLTV(顧客生涯価値)を比較することで、顧客の獲得にかかるコストが、その顧客から得られる価値を上回っているかどうかを判断することができます。

以上のような理由から、ビジネスの成長戦略や販売マーケティング戦略を立てる上で、CACの把握は非常に重要となります。

CAC(顧客獲得コスト)の3つの分類

CACは、獲得経路(チャネル)によって以下のように分類されます。

Organic CAC

Organic CAC は、自然流入によって獲得した顧客の獲得コストを指します。つまり、企業自身が努力することなく、顧客が自然に企業に集まってきた場合の獲得コストのことです。例えば、口コミや検索エンジンの検索結果などが、自然流入の一例となります。Organic CACは、特にブランド力が強い企業にとって重要な指標となります。

Paid CAC

Paid CAC は、広告費やマーケティング費用など、有料で取得した顧客の獲得コストを指します。つまり、企業がマーケティングに費やした費用を考慮して、有料で獲得した顧客のコストを算出することができます。Paid CACを下げるためには、マーケティング戦略の最適化や費用対効果の改善が必要となります。

Blended CAC

Blended CACは、有料および自然流入が混在している場合に、平均的な顧客獲得コストを表す指標です。具体的には、広告費用、マーケティング費用、および顧客サポートにかかる経費などを含め、総合的なコストを見て算出されます。Blended CACは、企業が新規顧客の獲得にかけた総費用を把握するために活用されます。

参考:CPAとの違い

CACと良く似た指標に、CPAがあります。CPA(Cost Per Acquisition:コンバージョン獲得単価)の略語で、コンバージョンを1件獲得するためにかかった費用のことです。

CPA(コンバージョン獲得単価)主にリスティング広告において活用されることが多く、一回のコンバージョンを獲得するのにかかる費用を表す際に用いられるのが一般的である点に違いがあります。

CAC(顧客獲得コスト)の計算方法

CACの計算方法は以下のようになります。

    CAC = 獲得にかかった費用 ÷ 獲得した顧客数

具体的には、広告費用やマーケティング費用、セールスコスト、プロモーション費用など、新規顧客獲得にかかる直接的なコストを算出し、その合計額を獲得した顧客数で割ります。

CAC(顧客獲得コスト)の計算例

以下は、CAC(顧客獲得コスト)の計算例のです。

例えば、ある企業が300万円の広告費をかけて、獲得した顧客数は500人だった場合、そのCAC(カスタマーアクイジションコスト)は以下のようになります。

    CAC = 獲得にかかった費用 ÷ 獲得した顧客数
    CAC = 300万円 ÷ 500人
    CAC = 6,000円

この場合、顧客1人あたりの獲得コストは6,000円となります。企業側はこのコストと新規顧客の付加価値を比較し、獲得するコストを決定することが重要となります。

LTV(顧客生涯価値)がCAC(顧客獲得コスト)の関係

次に、LTV(顧客生涯価値)がCAC(顧客獲得コスト)の関係についても解説します。

LTV(顧客生涯価値)とは

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、ある顧客が企業と取引を続ける期間中に、企業から得られる利益の合計額を指します。

顧客が企業との取引を続ける期間が長ければ長いほど、得られる利益が高くなるため、企業にとってはLTVの向上が重要な課題となります。LTVを計算する場合、顧客あたりの平均売上高や購入回数、顧客の継続期間などを考慮します。

LTV(顧客生涯価値)の計算方法には、以下のようなものがあります。

    計算式①:LTV=年間取引額×収益率×取引継続年数
    計算式②:LTV=平均購入単価×平均購入回数×平均継続期間
    計算式③:LTV=(売上高−売上原価)÷購入者数÷解約率

LTVが高いということは、購入頻度(もしくは購入単価)が高く、リピーターが多いということを意味しています。企業活動から得られる利益を把握するためには、顧客のLTVを把握しなければなりません。

LTVについては、別記事「LTV(顧客生涯価値)とは?計算方法や最大化するための方法についてわかりやすく解説します」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。

LTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得コスト)の関係

LTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得コスト)をすることができれば、一顧客あたりが事業に与える利益を把握することができます。利益を把握することは、マーケティングや経営そのものを考える上で非常に大切です。

    利益=LTV(顧客生涯価値)−CAC(顧客獲得コスト)

利益の計算式は非常にシンプルで、LTV(顧客生涯価値)からCAC(顧客獲得コスト)引けばわかります。つまり、LTV(顧客生涯価値)を上げて、CAC(顧客獲得コスト)を下げれば、利益は増大していくことになります。

また、LTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得コスト)は、ユニットエコノミクス(1顧客あたりの収益性)を算出する際にも用いられます。

    ユニットエコノミクス(1顧客あたりの収益性)=LTV(顧客生涯価値)÷CAC(顧客獲得コスト)

ユニットエコノミクスが1を上回っていれば、利益が出ていると言えます。反対に、ユニットエコノミクスが1を下回っていれば、売れば売るだけ赤字に陥ることになります。

このように、LTV(顧客生涯価値)やCAC(顧客獲得コスト)を計算することができれば、そこから一顧客獲得あたり見込める利益や、事業の健全性を測ることができるようになります。

CAC(顧客獲得コスト)を改善する方法

CAC(顧客獲得コスト)を改善するためには、以下のような方法が考えられます。

ターゲットを絞る

一つ目の方法は、ターゲットを絞ることです。ターゲットを絞ることで、リマーケティング戦略の優先順位を決めることやマーケティングのメッセージで焦点が絞ることできるようになり、コストを抑えることができます。

ターゲットを絞ることについては、別記事「ターゲティングとは?代表的なフレームワーク(STP分析や6R)やコツ・留意点を解説します」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。

パイプラインを管理・分析する

二つ目の方法は、パイプラインを管理・分析することです。パイプラインを整備し分析することで、受注率の高い市場セグメントを見つけることができ、業務オペレーションの自動化や省力化も検討することができるようになります。結果、CAC(顧客獲得コスト)を改善することができます。

パイプライン管理・分析については、別記事「パイプライン管理とは?限られた経営資源で売上を伸ばすマーケティングと営業の仕組みの作り方」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。

アトリビューション分析を活用する

三つ目の方法は、アトリビューション分析を活用する方法です。アトリビューション分析は、商材の購買など成果の発生に至るまでのプロセスにおいて、各施策が成果に対してどのくらい貢献したのかという効果を測定するための手法です。

アトリビューション分析については、別記事「アトリビューション分析とは?実践の手順と注意点を解説します」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。

ボトルネックを解消する

四つ目の方法は、ボトルネックを解消することです。ボトルネックとは、複数の工程を経て行われる業務において、もっとも処理能力や容量が小さく、その業務全体のアウトプットを規定する部分のことです。

マーケティングや営業のボトルネックを解消することで、投資に見合うリターンが得られるという見込みが立ちやすくなり、CAC(顧客獲得コスト)が改善します。

ボトルネックについては、別記事「ボトルネックとは?ボトルネックの見つけ方、解消方法についてわかりやく解説します」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。

以上のような方法により、CACを改善し、効率的なマーケティング活動を行うことができます。

さいごに

CAC(顧客獲得コスト)をLTV(顧客生涯価値)と組み合わせると、マーケティングや営業のROI(投資対効果)を改善するための方針を検討しやすくなります。また、収益目標を評価する強力なツールになります。

短期的には、顧客獲得コストを定量的に評価することができ、長期的には、顧客獲得からどれだけの収益が得られるかがわかります。

一つ質問です。あなたの事業では、CAC(顧客獲得コスト)やLTV(顧客生涯価値)を計算するためのデータ基盤が整っていて、すぐに計算することができるでしょうか?

CAC(顧客獲得コスト)やLTV(顧客生涯価値)を計算し、評価・分析するためにも、マーケティングや営業のパイプラインを整備し、データ基盤を整備しておくことが大切です。

さいごになりますが、当社ではマーケティングや営業のパイプラインを整備し、データ基盤を整備しておくためのノウハウをまとめたお役立ち資料もご用意しております。ご活用いただければ幸いです。

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