アトリビューション分析とは?実践の手順と注意点を解説します

アトリビューション分析は、商材の購買など成果の発生に至るまでのプロセスにおいて、各施策が成果に対してどのくらい貢献したのかという効果を測定するための手法です。

広告、展示会、メルマガ、営業など顧客の購買行動の手前には複数の施策が存在しているでしょう。経営者として、それぞれの施策に対する投資配分を考えるためには各施策の投資効率が分かっていないといけません。

この記事では、アトリビューション分析の基礎知識から実践方法まで網羅的に解説します。ぜひご覧ください。

アトリビューション分析とは

まずはアトリビューション分析とは何か、基礎知識からからご説明します。

前提:成果に影響を与えているのは最後の接点だけではない

アトリビューション分析の解説をする前に、アトリビューション分析の前提となる考え方をご説明します。
アトリビューション分析の考え方の前提には、成果に影響を与えているのは購買行動の直前での最後の接点だけではない、という考え方があります。

例えば、成果=自社への問い合わせとして考えてみましょう。自社への問い合わせの直前にある最後の接点はGoogleでの検索が多いかもしれません。しかし、Googleへのリスティング広告を増やせば増やすほど問い合わせが増え続けるのかというとそうではないことは想像に難くないと思います。

Googleでの検索をする前に、業界メディアで自社の商材とタイアップした記事を閲覧していたり、展示会でデモやプレゼンを見ていたりする場合、業界メディアの記事や展示会は問い合わせという成果に貢献していないでしょうか?当然、直前の接点以外も成果に貢献していると考えられます。

アトリビューション分析は成果に対する施策の貢献度を測定する手法

直前の接点以外の接点がどのくらい成果に貢献しているのかを明らかにするために生まれたのが、アトリビューション分析です。

感覚的には、顧客との接点となる複数の施策が成果に影響をしているだろうということは理解できていても、論理的かつ定量的に成果への影響(=貢献度)を説明できないと経営リソースであるヒト・モノ・カネの配分を決めることはできません。

そこで生まれたのがアトリビューション分析です。

アトリビューション分析の代表的な5つのモデル

では、顧客とのそれぞれの接点における成果への貢献度はどのように評価するのでしょうか。
アトリビューション分析には代表的な5つのモデルがあるので、5つのモデルをご紹介します。

終点モデル

アトリビューション分析の1つ目のモデルは「終点モデル」です。

ラストクリックモデルとも呼ばれるモデルですが、これは従来の評価方法と同じで、最後の接点に100%の貢献度を割り振る考え方です。

アトリビューション分析の1つのモデルですが、アトリビューション分析を行なわない場合と同じ結果となります。

起点モデル

アトリビューション分析の2つ目のモデルは「起点モデル」です。ファーストクリックモデルとも呼ばれます。
起点モデルは、顧客との最初の接点に100%の貢献度を割り振る考え方で、新商品のリリースなど、ブランド認知を目的として新規接点数をKPIとするようなフェーズに用いられる考え方です。

線形モデル

アトリビューション分析の3つ目のモデルは「線形モデル」です。

線形モデルは、成果ポイントに至った顧客との接点すべてに対して、貢献度を均等に割り振る考え方です。線形モデルはすべての接点を均等に評価するため、バランスが良く使いやすいモデルです。

接点ベースモデル

アトリビューション分析の4つ目のモデルは「接点ベースモデル」です。

接点ベースモデルは、成果ポイントに至った顧客のすべての接点に対して貢献度を割り振りますが、割合を最初と最後の接点にそれぞれ40%を割り振って、残りを中間の接点に対して均等に割り振る考え方です。

線形モデルよりも、最初の接点と最後の接点を重く評価する考え方です。

減衰モデル

アトリビューション分析の5つ目のモデルは「減衰モデル」です。

減衰モデルは、成果ポイントに至った顧客のすべての接点に対して貢献度を割り振りますが、割合は成果ポイントに近づくほど割合を大きく評価する考え方です。

終点モデルに近い考え方ですが、最後の接点以外にも貢献度を割り振るため、比較的慎重な評価をする考え方となります。

アトリビューション分析の5つのモデルの使い分け

5つのアトリビューション分析のモデルをどのように使い分けるべきかをご説明します。
一般的な分析手法と同じく、アトリビューション分析のモデルの使い分けにも絶対的な正解はありません。自社の目的に合わせたモデルを使っていただくことを前提としますが、参考として使い分けをご提示します。

モデルの使い分けを考えるにあたって、アトリビューション分析をする商材の性質を「認知率」と「購買検討期間」で分類します。

・線形モデル
線形モデルはバランスが良く使い勝手のよいモデルなので、真ん中に位置します。

・終点モデル
次に右下の終点モデルですが、終点モデルは最後の接点のみを評価します。つまり、最後の接点以外は購買行動に影響を及ぼさないという考え方です。

例えば、商材のことはみんなが知っているが、競合も多く購買促進をしないと競合にシェアを奪われるような商材が適しているのでしょう。つまり、認知率が高く、購買検討期間が非常に短い商材におけるアトリビューション分析に用いるのが良いと言えます。

・起点モデル
逆に左下の起点モデルは、最初の接点のみを評価します。つまり、知ってもらいさえすれば成果に至るという考え方です。

例えば、市場における新規性や革新性は高いので認知率が課題であるが、商材認知が得られればすぐにでも購買行動につながるような商材が適しているのでしょう。つまり、認知率が低く、購買検討期間が非常に短い商材に向いていそうです。

・接点ベースモデル
一方、接点ベースモデルはすべてのプロセスを評価しつつも、最初の接点(認知形成)と最後の接点(購買促進)を重く評価するモデルです。つまり、知ってもらうフェーズと最後のひと押しをするフェーズが強く購買行動に影響を与えるのだという考え方です。

例えば、競合プレーヤーも多いが自社商材の認知率が課題となっている商材が適しているのでしょう。つまり、認知率が低く、購買検討期間は長いような商材におけるアトリビューション分析に用いるのが良いと言えます。

・減衰モデル
最後に、減衰モデルは終点モデルの変形版だと捉えることができます。
終点モデルが最後の接点のみを評価するのに対して、減衰モデルは最後の接点を重く評価しつつも、中間の接点も評価します。つまり、中間の接点も購買行動に影響を与えることを一定認めるモデルとなっています。

例えば、認知率が一定以上あるが、市場が成熟しているために競合プレーヤーも多くいる。しかも購買検討期間が長いため、長い期間をかけて購買意欲を形成していかなければならないという商材が適しているのでしょう。つまり、認知率が高くて、購買検討期間が長い商材に適したモデルだと言えます。

アトリビューション分析をしない場合の影響

アトリビューション分析をしないとどういう影響が発生するのでしょうか。経営リソースの投資効率の観点から見てみましょう。

成果に貢献している施策への投資を減らしてしまう

アトリビューション分析をしない影響の1つ目は、成果に貢献している施策への投資を減らしてしまう/やめてしまうことです。

アトリビューション分析を行なわないと、成果の直前にある接点のみを評価することになるため、自社商材を知ってもらうきっかけにつながるような施策は評価されなくなります。すると、認知率向上を担っている施策が評価されずに、予算を削減されてしまう可能性があります。その結果、市場における認知率が低迷していき、競合にシェアを奪われてしまうといった事象が発生してしまうかもしれません。

つまり、実は成果に貢献している施策であっても、アトリビューション分析を行なわないことによって、成果を創出していないとみなされてしまい、正しく評価できずに投資をやめてしまうリスクがあります。

施策の効果を見誤って投資効率を下げてしまう

アトリビューション分析をしない影響の2つ目は、施策の効果を見誤ることで投資効率を下げてしまうことです。

アトリビューション分析を行なわないと、最後の接点だけが評価されます。すると、最後の接点にリソースを透過し続ける意思決定がされやすくなります。何もしなくても認知率が最大で、購買検討期間もゼロに近い商材であれば購買促進をし続けるだけで、商材が売れるかもしれませんが、実際はそういった商材はレアでしょう。

認知率を拡大する施策によって自社の市場の分母が広がり、課題認識を醸成する施策によって購買意欲を高めているからこそ、最後の接点における施策が効果を発揮しています。最後の接点以外の施策へのリソースを最後の接点に寄せてしまうことで短期的には効果が大きくなるかもしれませんが、中長期的には施策効果が頭打ちになってしまうリスクが発生します。

アトリビューション分析をするメリット

では、アトリビューション分析をするメリットは何でしょうか。

アトリビューション分析をするメリット1:成果指標への貢献度を定量的に示せる

アトリビューション分析をするメリットの1つ目は、各施策が成果指標に対してどのくらい貢献しているのかを数値で示せることです。

どのモデルを使うかで貢献度の水準は変動しますが、いずれにせよ貢献度を定量的に表現することができるので、ヒト・モノ・カネの投資判断をしやすくなります。

アトリビューション分析をするメリット2:施策への投資効率を高められる

アトリビューション分析をするメリットの2つ目は、施策への投資効率を高められることです。

顧客との接点を正しく評価できるようにすることで、どの施策が成果への貢献度が高いのか、逆にどの施策が成果への貢献度が低いのかが発見しやすくなり、無駄な施策への投資をやめて効果の高い施策に投資を向ける事ができます。その結果、投資効率の全体最適を実現しやすくなります。

アトリビューション分析を実践する手順

では、アトリビューション分析を実践する手順を解説します。

1.仮説を立てて購買に至るまでの自社と顧客の接点を洗い出す

アトリビューション分析を実践する手順の1つ目は、自社と顧客の接点を洗い出すことです。自社で行っている施策や顧客のカスタマージャーニーマップを参考にして、顧客が自社の商材を認知し始めるところから実際に購買に至るまでのプロセスを仮説立てて、整理しましょう。

2.アトリビューション分析のモデルを選ぶ

次に、どのアトリビューション分析のモデルを採用するのかを決めます。自社事業のフェーズをもとにどのアトリビューション分析モデルを採用するのかを決めるのがおすすめです。

5つのアトリビューション分析モデルの使い分けの考え方は以下をご参考ください。
アトリビューション分析の5つのモデルの使い分け

3.接点ごとの成果への貢献率を算出する

接点を洗い出し、モデルを決めたら、接点ごとに成果に対する貢献度の実績を算出します。
Web上の動きであればWebアナリティクスツールやMAツール、営業などオフラインの接点であればSFAツールを使って、接点の実績を抽出しましょう。

成果の実績はSFAツールや顧客管理システム(CRM)などから抽出することで、データを突合できる状態になるでしょう。

4.投資配分を調整する

貢献率を算出して現状が可視化された状態になったら、投資効率の低い施策を特定しましょう。CPAやCACといった成果獲得あたりのコストを算出して、獲得あたりのコストが高くなっている施策を特定して、投資配分を調整しましょう。

ただし、獲得コストが高いからだめだという単純な考え方では片付けられないこともあるので注意しましょう。そもそも相対的にコストが高くなってしまう施策もあります。また、獲得コストが高いからやめるではなく、改善の余地があるかどうかという観点で投資判断をするのが適切でしょう。

5.PDCAを回す

最後はPDCAです。接点ごとの投資効率を可視化して、リソースの配分を意思決定したら終わりではありません。

その後パフォーマンスが悪化している接点がないか、逆に改善されている接点がないか、見立てと異なる傾向を示している指標がないかをモニタリングしながら、定期的に改善を行なっていきましょう。

アトリビューション分析を実践する際の注意点

最後にアトリビューション分析を実践する際の注意点をご説明します。

アトリビューション分析に向いている商材かを確認する

1つ目の注意点は、自社の商材がアトリビューション分析に適している商材かどうかを確認することです。
検討期間が極端に短い商材や、購買に至るまでのプロセス(=接点)が極端にシンプルでパタンが存在しないというケースはアトリビューション分析に不向きです。

アトリビューション分析は、最後の接点だけを評価すると正しく現状把握ができないから用いられる分析手法です。トイレットペーパーなど安価な消耗品のように検討期間が極端に短い商材や、交通機関の定期券など比較検討もされず購買に至るまでに複数の接点を経由しない商材は不向きです。

細部に囚われすぎない

アトリビューション分析で注意すべき2つ目のポイントは、細部に囚われすぎないことです。

アトリビューション分析は接点ごとの貢献度や成果に至るまでの接点回数など突き詰めていくとキリがありません。アトリビューション分析の目的は精緻な分析ではなく、投資効率の改善ですので、全体の大まかな傾向を掴んだら、仮説を立てて素早く改善行動に移しましょう。

投資配分を決めて終わらない

最後は投資配分を決めておしまいにしないということです。

当たり前ですが、アトリビューション分析を行なって投資配分を決めたらその後はずっと安泰ということはありません。ビジネスを取り巻く現代の環境はVUCAの時代と言われており、変化の激しい時代です。頻度高く現状把握をして、細かくPDCAを回していかなければ、気づいたときには手遅れになっているということもありえます。

さいごに

経営リソースの投資効率を高めるアトリビューション分析を解説しました。基本知識から実践の手順、注意点まで網羅的に解説しました。

さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。ビジネスリーダーが知っておきたいフレームワークを中心にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。

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