リードナーチャリングとは、まだまだ十分に購買の準備ができていない、もしくは十分に買う気になっていない見込み客に対して、買う気にさせるようなコミュニケーションをとりながら、リードとの良い関係を築くマーケティング・アプローチです。
本記事では、BtoBマーケターの皆さまが売上アップにつながるマーケティング活動を実行できるよう、BtoBマーケティングにリードナーチャリングが必要な理由をわかりやすく解説します。
目次
リードナーチャリングが必要な理由
BtoBマーケティングは最近始まったわけではありません。BtoBサービスを手がける企業でも、自社のブランド認知を高めたり知名度を上げたりすることを目的として広告を出稿したり、展示会への出展、自社セミナーの開催など、昔からマーケティング活動を展開してきました。これらのマーケティング活動では、リード(見込み客)の情報を効率よく獲得できます。
つまり、リード(見込み)を獲得する方法やプロセスについては、BtoBマーケティングの領域でも十分に確立されていると言えます。
リードはすぐに「商談」には繋がらない
しかしながら、マーケティング活動で獲得する見込み客のすべてがその後のビジネスにつながるわけではありません。
どのようなマーケティング活動経由(例えば、展示会、セミナー、広告など)で獲得したリードかによっても、すぐに具体的な商談につながるリードの割合は変わってきます。しかし、ほとんどの場合、獲得したリードの中ですぐに具体的な商談につながる割合は少なく、情報収集段階のリードがほとんどです。そのため、獲得したリードのほとんどがすぐに「商談」には繋がるわけではありません。
「展示会でリードはたくさん獲得できたけど、なかなか商談や受注に繋がっていない」といった悩みを抱えたことがある方も多いのではないでしょうか。
変化するBtoBの購買行動
BtoBの最近の購買行動では、業界の動向や企業が提供するソリューションの調査を、時間をかけて自社で行うことが多くなりました。以前なら、ソリューションや製品を持つ企業の営業マンへとコンタクトを取り、担当営業マンから色々と情報を引き出していました。
最近ではインターネットを使って情報を集める見込み客が増えました。それと同時に、製品やソリューションを提供する売り手側の企業では、自社のwebサイトで多くの情報を提供するようになっています。このような環境の変化につれて、見込み客は自分の都合の良いタイミングで自分の興味関心に合わせて情報収集を行い、買い手側のペースで検討、案件化していくように変化しています。
実際に、買い手が営業マンにコンタクトを取るタイミングでは、買い手の購買プロセスの57%が終わっているという調査データもあります。
嫌われる従来型の「プッシュ」型アプローチ
最近のBtoBの購買行動の変化により、マーケティング活動で獲得したリードに対して営業担当者が電話してアポ取りしようとしても、リード側のタイミングが合わなければ、不快でうっとうしい営業行為としてみなされてしまう傾向にあります。
営業担当者がリード側の企業から好ましく思われないだけでなく、そのときに感じた不快な印象がSNSやレビューサイトなどで拡散される可能性もあり、企業のブランドイメージにも影響します。このように、売り手本位の一方的なプッシュ型の営業アプローチは、買い手側に不快な印象を与えてしまうばかりか、例えばその会社がどんなに良い商品を持っていたとしても、その商品とは正反対の評判を生み出してしまう可能性があります。
プッシュ型の営業を余儀なくされる営業担当者は、アポが取れにくいだけでなく、見込み客に避けられ続けるため、ストレスがたまります。そのため、営業部門では「マーケティング部門からのリードは質が低い」との不満が溜まります。このような状況は、営業部門マーケティング部門の双方にとってメリットがありません。
イベントで獲得した名刺フォローでのアポ取得率は10~15%程度
(出典:見込客育成のためのお助けガイド)
だからこそ「今」リードナーチャリングが必要
会社からの指示により従来型のプッシュ型の営業活動を強いられる企業では、まだまだ買う気になっていない見込み客に対して営業活動を展開するケースが多々あります。
しかし、イベントなどのマーケティング活動で獲得したリードであっても、営業担当者との商談に応じてくれそうなリードは10〜15%しかいません。これではどうしても営業活動は効率化されません。
その一方で、マーケティング部門も問題を抱えています。展示会やセミナーなど、これまで成功してきたリード獲得のアプローチにいくら投資して多くのリードを得たとしても、ほんのわずかな割合の商談にしかつながりません。
このようにBtoBビジネスでは、非常に効率の悪い営業の新規開拓アプローチの問題と、展示会やセミナーなどで購買意欲が十分でないリードばかりしか得られないマーケティングの問題が同時に存在しています。
これらの問題を同時に解決するアプローチが「リードナーチャリング」です。リードナーチャリングは、売り手本位のアプローチではなく、買い手本位の視点にたったアプローチを目指す取り込みです。すぐに購入に繋がらないお客さまに対しても、ニーズにあった情報を定期的に提供していくことで、自社製品やサービスへの購買意欲を高めていきます。買い手側に「有益な相手」だと認識してもらうことができれば、将来的に購入してもらえる可能性も高まりますし、売り手側に不快な印象を持つことはありません。
リードナーチャリングの基礎知識
リードへ最適な情報を、最適なタイミングで提供するためには、リードの購買行動を良く理解しなくてはなりません。リードナーチャリングでは通常、リードのプロファイル情報や、リードの購買行動からそのリードのニーズを推測します。
通常BtoBの購買行動プロセスでは複数の人が関わります。場合によっては複数の部署が購買プロセスに関わるケースもあります。部署や役職の情報から、購買行動における役割が、そして行動履歴からニーズが推測できます。
属性情報から購買における役割を推測
リードの属性情報から、購買行動への関わり方が推測できます。技術に関連する部門や役職であれば、購買そのものを技術的な側面から判断する傾向にあるでしょう。スタッフレベルなら上長から承諾を得るための情報収集が欠かせません、ですので、より具体的な情報収集を行う傾向にあります。
行動情報からニーズを推測
リードの行動情報から、購買プロセスの段階と、リードが求める情報を推測できます。例えば、ターゲットに設定したリードが、あなたの製品の具体的な機能ではなく、ソリューションや業界の動向に関連するwebページばかりを閲覧しているなら、まだまだ購買行動プロセスの初期の段階で、情報収集をしているといえます。
購買プロセスの初期の段階に属するリードは、業界の傾向を示す調査・統計データ、アンケート結果や、ビジネス課題を解決するための方法論などの「情報」を好む傾向にあります。閲覧したページの内容や、検索サイトでの検索キーワードから、リードが抱く製品やサービス群と関連するビジネスの課題が推測できます。
このリードは今後、ビジネス課題の認識と、それぞれの課題の優先付けをしながら、自らのニーズを明確にしていきます。このリードの購買プロセスを次のステップへ推し進めるための情報やコンテンツを推測して、リードへとタイムリーに展開する活動をリードナーチャリングでは実施しています。
リードナーチャリングの効果
リードナーチャリングでは、リードに必要な情報を適切なタイミングで提供することによって、自社とリードの間でより良い関係を構築します。リードの購買プロセスの段階を把握して、リードが必要とする情報をタイムリーに提供できれば、リードを他社ではなくあなたの会社へとつなぎ止められます。その結果、購買前からリードのあなたの会社や製品に対するロイヤリティが高くなります。
BtoBの購買行動には複数人が絡んで、合理的な判断がなされると知られています。しかし、購買するスタッフも人間です。必ず感情に流されて購買を決断することがあります。リードにとって本当に役に立つ情報を提供し続ければ、あなたの会社や製品をひいきに取り扱ってくれることもあるでしょう。
リードナーチャリングの効果について、いくつかご紹介したいと思います。
効果①:ブランド力と顧客ロイヤリティの向上
効果の一つ目は、ブランド力と顧客ロイヤリティの向上です。リードナーチャリングがうまく機能すれば、BtoBの購買プロセスのずっと初期の段階、つまりリードが買う気になるよりずっと前から、リードの中にあなたの会社や製品・サービスのブランド・ロイヤリティを形成できるかもしれません。
信用できる知り合いや、他部門の同僚などが推奨する製品やサービスには好感度を懐きやすくなります。信頼できる知り合いに特定の商品やサービスを勧められた場合、購買の確率はグッと上がります。あなたの商品やサービス、会社名が広がれば、顧客のロイヤルティやブランド力の向上につながります。
ブランドは、信用や信頼の気持ちとも言えます。あなたの会社が業界でよく知られている会社であれば、おそらく信用と信頼があるでしょう。しかし、世の中には知名度がそこまで無い企業が大半です。このような企業が見込み客から信用を受ける近道は、見込み客にとって本当に役立つ優良な情報を提供し続けることに尽きます。
あなたの会社がリードナーチャリングを通じて新鮮かつ有益な情報を提供し続ければ、リードのロイヤルティが高まると同時に、市場でのブランドが徐々に形成されていくでしょう。
ブランディングについては、別記事「ブランディングとは?ブランド、ブランディング、ブランド戦略構築の手順についてわかりやすく解説しますに詳しくまとめております。合わせてご覧ください」
効果②:売上の向上
効果の二つ目は、売上の向上です。リードの購買プロセスの段階と、興味関心が高い商品やサービス、購買における社内の役割を理解できれば、適切なタイミングで適切な情報が提供できます。これは、リードナーチャリングの基本です。
リードの購買プロセスをしっかりと把握し、リードを次の購買プロセスの次の段階に進めるための情報やコンテンツを提供しましょう。リードナーチャリングを通じてリードの潜在的な購買意欲を刺激できます。
それと同時に、あなたの会社の商品やサービスの特徴や利用メリットをしっかりと啓蒙すれば、あなたの会社の商品やサービスのコンセプトに共感するかもしれません。その結果、最終的にあなたの会社から購入する確率が高くなります。
リードの購買プロセスの初期の段階からリードナーチャリングがしっかりできればできるほど、顧客数が増えて売上アップにつながりやすくなります。
効果③:顧客の購買行動の短縮
リードナーチャリングでの購買プロセスに合わせた適切な情報提供は、上手くいけばリードの購買行動の期間を短くします。BtoBの購買行動の初期の段階では見込み客はさまざまな情報を集めているためです。
例えば、マーケティング活動の一環としてMAツールの導入を検討するために情報を集めているリードがいるとします。はじめてツールを導入する場合には、選定のためのポイントも判断しづらく、一人で情報を調べ上げるのは大変です。
そんなときに「MAツールを導入する際にチェックしておきたいポイント10選」といったホワイトペーパーが手に入れられれば、時間をかけて情報収集する必要はありません。このようなホワイトペーパーは、リードの情報収集、知識取得を助ける役割を持っており、購買までの期間短縮が可能になります。
あなたの会社の商品やサービスに関連する検索キーワードで情報収集しているリードに対して答えを提供し、リードの購買行動の期間を短くしましょう。
効果④:費用対効果(ROI)の向上
マーケティングの全ての活動は、その結果が計測可能であるべきです。計測可能な結果は、マーケティング活動のレビューや見直しを通じて、マーケティング活動を改善する余地を見つけ出します。
あなたのマーケティング活動の目的が売上アップや事業の利益率の工場などのビジネス中心であるとしたならば、あなたのマーケティング活動の結果は、売上やコストに関する数値に置き換えるべきです。ROI(費用対効果)を確認できるようにしておくと良いでしょう。
リードナーチャリングもマーケティング活動のひとつですから、当然ROIは意識すべきです。
統計データによれば、リードナーチャリングによって
- リードナーチャリングされたリードでは、受注率が20%上昇。
(出典:Strategic IC社) - リードナーチャリングを実施したビジネスでは、33%のコスト削減を実現し、かつ売上が50%上昇。
(出典:Strategic IC社)
という効果もあがっています。コストを抑えて売り上げがアップするならば、確実にROIの向上につながります。
このように、リードナーチャリングには多くの実証された効果があります。リードナーチャリングによって購買意欲が刺激されたリードからより多くの購買額を期待できます。また、リードのロイヤルティが高くなるため、より少ない割引と短い購買行動サイクルであなたの製品やサービスを購入する可能性が高くもなります。
さいごに
本記事では、リードナーチャリングが必要とされる理由について解説いたしました。
リードナーチャリングは、購買プロセスを推し進めるために実施する一連のコミュニケーションです。有益な情報を継続的に発信しコミュニケーションを図ることによって、見込み客との関係性を深めていきましょう。
さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。マーケティングの基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。