パイプライン管理とは?限られた経営資源で売上を伸ばすマーケティングと営業の仕組みの作り方

限られた経営資源で売上を伸ばすには、どのように考えたら良いのでしょうか?

デジタルマーケティングに注目が集まり、新たにWEB広告やサイトの改善に取り組んでいる企業が増えていますが、その一方で、営業効果や売上へのインパクトがなかなか出なくて困っている、という方も多いのではないでしょうか?

本記事では、売上を増やしたい、そのために集客への投資を強化したけどいまいち商談や受注に結びつかない、というお悩みをお持ちの方向けに、解決策を導き出すための手法、パイプライン管理・分析についてわかりやすく解説します。

限られた経営資源で売上を伸ばすには

マーケティングや営業には、大きく5つのプロセスがあります。集客してデータを整備し、販売促進を行い、適切なタイミングを見極めて営業活動を行い、そして受注する、このような流れが一般的です。

マーケティングや営業のプロセスには、経営資源の差による影響が出やすいポイントもあります。

例えば、集客の際には広告費の差による影響が出やすく、集客以降の活動においては人的資源の差による影響が出やすくなります。

経営資源の乏しいスタートアップや中小企業の視点で考えれば、より多くの経営資源を持つ大企業と同じ条件で経営資源の投下合戦をしても、分が悪いと言えます。

では、一体どうすればいいのでしょうか?

限られた経営資源で売上を伸ばすための2つの切り口

限られた経営資源で売上を伸ばすには、生産性を向上させるしかありません。マーケティングや営業の生産性を向上させるための切り口は、大きく2つあります。

一つ目は、ROI(費用対効果)の向上です。受注率の高い市場セグメントを見つけ、経営資源の投下を集中させることができれば、生産性は向上します。

二つ目は、業務オペレーションの削減です。業務オペレーションを省力化・自動化し、人的資源の差による影響を減らすことができれば、これも生産性の向上につながります。

生産性向上のセオリーは、パイプライン管理です。パイプラインを整備し分析することで、受注率の高い市場セグメントを見つけ経営資源の投下を集中させることができ、また、業務オペレーションの自動化や省力化も検討することができるようになります。

次からは、パイプライン管理について詳しく説明します。

パイプライン管理とは

企業間取引(BtoB)のパイプラインとは、マーケティングが見込み客を獲得し、営業がアプローチして受注するまでの段階的なプロセスのことを指します。

また、パイプライン管理とは、マーケティングや営業のプロセスを可視化し、管理・分析しながら改善を図っていくためのマネジメント手法の事を指します。

パイプライン管理を実践し、マーケティングや営業のプロセスを可視化し、管理・分析することによって、プロセス上に存在するボトルネックを見つけることや、改善活動が可能になります。

ファネル管理との違い

パイプライン管理と良く似た用語に、ファネル管理があります。

ファネル管理も、マーケティングや営業のプロセスを可視化し、管理・分析しながら改善を図っていくためのマネジメント手法を示す用語として使われるため、パイプライン管理とほとんど同じ意味で使われています。

ただし、ファネル管理という用語はマーケティング部門で用いられることが多いため、マーケティングのプロセスを対象にしていることが多く、反対にパイプライン管理という用語は営業部門で用いられることが多いため、営業プロセスを対象にしていることが多いです。

そのため、パイプライン管理やファネル管理について議論をする際には、どこまでのプロセスを対象として捉えているのか、認識を合わせた上で議論した方が良いでしょう。

ファネル管理については、別記事「ファネル分析のやり方とコツ|限られた経営資源で最大の付加価値をあげる方法」でも解説しています。合わせてご覧ください。

パイプライン管理を実施するメリット

パイプライン管理を実施するメリットは、大きく3つあります。

目標達成に必要なリード数・転換率を逆算できる

一つ目のメリットは、目標達成に必要なリード数、転換率を逆算できる点です。

各フェーズにおけるリード数と転換率が把握できるようになれば、目標の受注数を獲得するためにどのくらいのリード数の獲得が必要か、あるいは転換率を上げる必要があるのか、判断できるようになります。

パイプライン上の漏れ(離脱)を減らせる

二つ目のメリットは、パイプライン上の漏れ(離脱)を減らせる点です。

パイプライン管理・分析によって離脱の大きいポイントが把握できれば、対策が打てるようになります。パイプライン上の漏れ(離脱)を減らせれば、ROI(費用対効果)は大きくなります。

受注率の高い市場セグメントを把握できる

三つ目のメリットは、受注率の高い市場セグメントを把握できる点です。

マーケティングや営業のROI(費用対効果)を最大化するためには、受注率の把握が大切です。商談数や受注数の把握だけでは足りません。受注率の高い市場セグメントを見つけ、経営資源の投下を集中させることが大切です。

上図では、商談数だけを見ると「建設」が親和性の高い業界だという印象を受けます。また、受注数だけをみると「製造」が親和性の高い業界だという印象を受けます。

しかし、受注率で判断すると、実際には「人材」が自社の商品やサービスに最も親和性の高い業界だということがわかります。商談数や受注数の把握だけでは見誤る可能性があります。

このように、受注率の高い市場セグメントを見つけ、経営資源の投下を集中させることが大切です。

マーケティングと営業のパイプラインの例

マーケティングと営業のパイプラインについての代表的な例をご紹介します。

マーケティングのパイプラインの例

まずは、マーケティングのパイプラインの例についてご紹介します。

マーケティング部門は、効率的に商談を生み出すための仕組みづくりを担います。

前述した通り、集客してデータを整備し、販売促進を行い、適切なタイミングを見極めて営業活動を行い、受注に結びつけることで売上アップを目指す、このようなパイプラインが一般的です。

営業のパイプラインの例

次に、営業のパイプラインの例についてご紹介します。

営業部門は、見込み客への提案活動・クロージングを担います。営業部門がマーケティングやカスタマーサクセスの役割を兼務していることもありますが、本記事では、主に提案活動・クロージングの役割を担うのが営業活動とします。

マーケティング部門から引き渡された見込み客にコンタクトしてアポイントを獲得し、サービス説明を行い、ニーズを把握して提案し、有効商談化した案件に対してクロージングを行う、このようなパイプラインが一般的です。

営業のパイプラインは、マーケティングのパイプラインの商談プロセスをより細分化したものになります。

マーケティングと営業のパイプラインは、前工程と後工程のような関係にあります。そのため、マーケティングと営業のパイプラインは別々に捉えるのではなく、一連の流れとして捉えた方が管理・分析しやすく、業務オペレーションの連携もしやすくなります。

マーケティングと営業のパイプラインを一連の流れとして捉えて管理・分析できるようになれば、目標の受注数を達成するためにはどのくらいのリード数が必要か、あるいは転換率を上げる必要があるのか、判断できるようになるでしょう。

パイプライン管理に活用できるツール

パイプライン上の数字を一元管理し、定点観測するための仕組みを作るためには、ツールの活用が必須です。パイプライン管理に活用される代表的なツールをいくつかご紹介します。

Excel(エクセル)

まずは、表計算ソフトのExcel(エクセル)です。

Excelは代表的な表計算ソフトであり、多くの人が使いなれているため、手軽に活用することができます。

上図でいえば、○○○経由がリード数、商談数、受注数ともに高い数字を出しており、他の施策と比べて効果が高いことがわかります。

簡単なExcel管理でも、数字を一元管理し、定点観測するための仕組みを作ることができれば、どの経路(または施策)経由で獲得したリードが商談や受注に繋がっているのか、傾向が掴めるようになります。

MA(マーケティングオートメーション)

次に紹介するのは、MA(マーケティングオートメーション)です。

MA(マーケティングオートメーション)は、マーケティングのパイプライン管理のために生まれたツールです。リード管理機能やフォーム作成機能、メール配信機能など、マーケティング施策を行う上で必要なさまざまな機能を兼ね備えています。

また、スコアリング機能やシナリオ機能など、マーケティングアプローチを省力化・自動化するための機能も備わっているため、マーケティング活動の生産性を向上させるのに役に立ちます。

マーケティングのパイプライン管理には、是非とも活用したいツールです。

MA(マーケティングオートメーション)については、別記事「マーケティングオートメーションとは?導入するメリットと使い方をわかりやすく解説します」でも解説しています。合わせてご覧ください。

SFA(セールスフォースオートメーション)

続いては、SFA(セールスフォースオートメーション)です。

SFA(セールスフォースオートメーション)は、営業のパイプラインを管理するために生まれたツールです。顧客管理、案件管理、商談管理、行動管理、予実管理の機能など、営業のパイプラインを管理し、営業計画を立てる上で必要なさまざまな機能を兼ね備えています。

また、TODO管理機能や通知機能、日報やチャットなどのコミュニケーション機能が備わっているツールも多く、営業マネージャーと個々の営業メンバーの日々の活動の生産性を向上させるのに役に立ちます。

営業のパイプライン管理には、是非とも活用したいツールです。

SFA(セールスフォースオートメーション)については、別記事「SFAとは?導入するメリットとMA・CRMとの違いをわかりやすく解説します」でも解説しています。合わせてご覧ください。

CRM(カスタマーリレーションシップマネジメントシステム)

最後は、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメントシステム)です。

CRM(カスタマーリレーションシップマネジメントシステム)は、顧客管理の専用ツールといえます。顧客管理を含め、経理などの部署が扱う顧客情報も一元的に扱うことが可能です。

見込み客とのやり取りだけでなく、受注後の顧客とのやり取りや、取引情報、支払情報など、様々な情報を管理することが可能です。複数の事業を行っている企業の場合、全社横断的に顧客管理を行うのに適しています。

最近では、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメントシステム)にMAやSFAの機能がセットになっているツールも存在しています。

CRM(カスタマーリレーションシップマネジメントシステム)については、別記事「顧客管理とは?顧客管理システムの種類やシステム導入時の注意点について」でも解説しています。合わせてご覧ください。

Excel(エクセル)が直面する4つの限界

Excel は非常に優秀なツールなのですが、マーケティングや営業のパイプライン管理・分析においては、やがて、4つの限界に直面します。

入力性の問題

一つ目は、入力性の問題です。Excel(エクセル)は情報を入力するための項目を増やす際に、横に列がどんどん積み上がっていく性質のため、入力項目が増えると入力漏れが起こりやすいのが特徴です。また、データ量が増えるとファイルが重くなり、展開することもコストになります。

拡張性の問題

二つ目は、拡張性の問題です。Excel(エクセル)はメールマーケティングなど、業務領域を拡張していく際にツール間のデータ連携に手動でのデータ移行作業が発生するため、マーケティング施策の数やセグメンテーションの複雑性が増すと、業務オペレーションが煩雑になり、生産性向上の取り組みの妨げになってしまいます。

通知性の問題

三つ目は、通知性の問題です。Excel(エクセル)は入力されたデータを起点として通知する機能(TODO機能など)がないため、適切なタイミングでアプローチを促すことが難しくなります。

営業担当者が数十名いる場合、それぞれの営業担当者のTODO管理や処理漏れをExcel(エクセル)内で確認するには膨大な時間がかかり、営業マネージャーの大きな負担になってしまいます。

安全性の問題

四つ目は、安全性の問題です。Excel(エクセル)は高いセキュリティ性を有しているわけではないため、情報漏洩や改ざんのリスクも高く、安全性の担保が難しいという課題があります。

顧客情報や営業活動上知り得た顧客の機密情報が漏洩されるということは企業にとって大きなリスクです。そのため、情報の閲覧履歴やバージョン管理、閲覧権限の設定などができるツールを活用して管理することが、経営上のリスクの軽減につながります。

MA/SFA/CRMはいつ導入を検討すべきか

Excel は非常に優秀なツールですが、Excelの抱える入力性の問題、拡張性の問題、通知性の問題、安全性の問題は、マーケティングや営業の人数や施策領域を拡大する際には技術的な負債となり得ます。

そのため、 MA/SFA/CRM は早い段階から導入を検討しておくことをおすすめします。MA/SFA/CRM を活用して技術的負債を無くしましょう。また、MA/SFA/CRMを導入する際には、自社で運用可能な使いやすいツールを選ぶことをお勧めします。

限られた経営資源で売上を伸ばす、マーケティングと営業の仕組みの作り方

ここからは、パイプライン管理・分析を通じ、どのようにマーケティングと営業の生産性を向上させていくのかについて解説します。

USP(ユニーク・セリング・プロポジション)を見極める

まずは、パイプライン管理・分析を通じ、製品やサービスのUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)を見極めることが大切になります。

USP(ユニーク・セリング・プロポジション)とは、製品やサービスが持っている独自の強みを意味します。他社が提供していなく、自社だけが提供できる価値の中で、本当に顧客に求められている部分が、自社が最も強みを発揮できる競争優位ポイントになります。

消費者があなたの会社から製品やサービスを購入するとき、ほとんどの場合、競合他社と比較・検討してから購入しているはずです。

そのため、USP(ユニーク・セリング・プロポジション)を見極めることができれば、どのようなターゲットに向けて、製品やサービスのどのような点をメリットとして訴求するべきかがわかるようになります。

USP(ユニーク・セリング・プロポジション)の概要や見極め方については、別記事「USP(ユニーク・セリング・プロポジション)とは? USPを見極めるためのデータ分析の手順について解説します」に詳しくまとめております。合わせてご覧ください。

USP(ユニーク・セリング・プロポジション)をマーケティングや営業に活かす

次に、見極めたUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)をマーケティングや営業に活かすことが大切になります。

例えば、パイプライン上のデータを分析した結果、○○業界の企業が抱える△△という課題に対し、自社製品の××機能が非常に高く評価されており、受注につながっていることが明らかになったとします。

この場合、マーケティングとしては、プロモーションを通じて○○業界の企業向けに「△△という課題をお持ちではありませんか?××という解決策があります」といったメッセージを届けることが有効になります。

同様に、営業においても、○○業界の企業向けに「△△という課題をお持ちの企業様には当社製品は喜んでいただけると思います。具体的には、××という機能が実装されておりまして…」といったトークから提案やクロージングにつなげることが有効になります。

このように、見極めたUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)をマーケティングや営業に活かすことができれば、費用対効果の高いターゲットに対して訴求力の高いメッセージを届けることができるため、広告費を抑えることができるようになります。

集客のタイミングから自社の製品やサービスと親和性が高く、興味・関心の高い見込み客を集めることが可能になるため、集客以降の活動もスムーズに進みやすくなるのです。

定型業務の自動化・省力化を検討する

続いて、定型業務の自動化・省力化も検討していきましょう。

パイプラインを整備していくと、各プロセスにおいて必要な業務オペレーションも固まってきます。非定型の業務に関しては自動化・省力化は難しいかもしれませんが、定型の業務に関しては、どんどん自動化・省力化することを検討していきましょう。

マーケティングや営業においても、新しい取り組みを追加すればするだけ業務オペレーションも増加します。そのため、業務オペレーションの自動化・省力化を積極的に行っていかないと、人的資源がボトルネックになり、新しい取り組みを追加しづらくなってしまいます。

事業を伸ばしていくためにも、定型の業務に関しては自動化・省力化を常に検討し、今行っている業務をもっと簡単に行い、空いた時間を活用して新しい取り組みを企画・実施していくことが大切です。

ボトルネックについては、別記事「ボトルネックとは?ボトルネックの見つけ方、解消方法についてわかりやく解説します」に詳しくまとめております。合わせてご覧ください。

さいごに

限られた経営資源で売上を伸ばすためのマーケティングと営業の仕組みとは、言い換えれば、ROI(費用対効果)の向上と業務オペレーションの削減の両立を目指すための取り組みに他なりません。

そのためにはパイプラインの整備からはじめ、PDCAを回しながらマーケティングと営業の生産性を高めていきましょう。

さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。マーケティングの基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。

BtoBマーケティングお役立ち資料