マーケティングや営業の施策を行う際、顧客視点を持って推進することが必要不可欠です。そのためにも顧客体験を可視化し、顧客視点に立ち返るものとしてカスタマージャーニーを作成することは有効です。
しかし、カスタマージャーニーを作成しても、活用されていないのであれば残念ながら作った意味がありません。作ることが目的となるのではなく、成果の向上につながるように活用することが大切です。
本記事では、カスタマージャーニーの作成している企業が陥りがちな3つの落とし穴とその対応策についてわかりやすく解説します。
目次
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを知ってから実際に購入するまでに辿る、一連の購買プロセスと各プロセスで得た体験を「旅」に例えたものです。
近年では消費者側のニーズも多様化しているため、自社HP、資料請求サイト、SNSなどのオンライン上での接点から、展示会やセミナーなどのオフラインでの接点、一言に顧客の購買プロセスと言ってもさまざまな接点が存在します。
そのような中、見込み顧客の購買プロセスの「旅」を出来るだけ明らかにし、購入に至る前後の経験にも価値を感じてもらうためにはどうしたらいいのか、顧客視点で考えていくことを目的にカスタマージャーニーは作成されます。
カスタマージャーニーを作成することで、具体的には以下のようなメリットが得られます。
- 顧客理解が深まる
- 複数担当者で共通認識を持つことができる
- 顧客視点でマーケティングや営業の施策を評価できる
また、対象の属性情報だけでなく、購買プロセスも加味したセグメンテーションを検討することができるようになります。
カスタマージャーニーの詳細ついては、別記事「カスタマージャーニーとは?概要とカスタマージャーニーマップの作り方について解説します」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。
カスタマージャーニーを作成している企業が陥りがちな3つの落とし穴
カスタマージャーニーを作成している企業が陥る可能性の高い、カスタマージャーニーの3つの落とし穴について解説します。
利用目的の落とし穴(作って満足して終わる)
一つ目の落とし穴は、利用目的の落とし穴です。
カスタマージャーニーを作成しても、活用されていないのであれば残念ながら作った意味がありません。しかし、顧客理解のためにカスタマージャーニーをつくろう!という曖昧な目的で作成をはじめてしまうと、作って満足して終わってしまう状態に陥ってしまいがちです。
皆さまの会社や所属している部門でも、事業目的に則した何かしらのKPIを設定していると思います。KPIとして設定した指標の何を改善するための示唆を得るためにカスタマージャーニーを作成するのか、あらかじめ利用目的を示しておかないと、作って満足して終わる可能性が高いです。
- 目的は顧客のインサイトを把握すること
- 目的は顧客の行動から示唆を得ること
と会話が関係者間から聞こえてきたら要注意です。一見するとそれっぽいことを言っていますが、示唆を得ること自体が目的になっているケースがほとんどです。
カスタマージャーニーを作成した上で得られる示唆を利用して○○の数値を改善するための具体的な施策に落とし込みたい、といったように、得た示唆を何に利用するのか、という大上段の目的の設定が必要です。
また、デバイスの変化や、新たに強力なメディアが登場するなどの外部環境の変化は、顧客体験にも多大な影響を与えます。カスタマージャーニーは一度作成して終わりではなく、外部環境の変化があれば見直し、必要に応じて修正するようにしましょう。
ペルソナの落とし穴(そんな人いる?)
二つ目の落とし穴は、ペルソナの落とし穴です。
自社の商品・サービスがターゲットとする顧客像が明確に定義されていない、あるいは複数の顧客像について優先順位がつけられていない場合、ペルソナ設定自体が曖昧になってしまい、カスタマージャーニー以前にカスタマーが誰かという認識が関係者間で合わないことがあります。
- そんな人いる?
- そういう人って、そもそもうちのターゲットだっけ?
と会話が関係者間から聞こえてきたら要注意です。
このような場合はペルソナ自体がぼやけてしまうため、カスタマージャーニーを作成しても、実際の顧客が取る行動や意識・感情と乖離してしまい、期待する成果に結びつかなくなってしまいます。
ペルソナ設定に関しては、別記事「ペルソナ設定とは?BtoBマーケティングにおけるペルソナ設定と活用のコツ」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。
ジャーニーの落とし穴(そんな行動する?)
三つ目の落とし穴は、ジャーニーの落とし穴です。
カスタマージャーニーを作成する際には、徹底した顧客視点が求められます。そのためには、多くの知見の蓄積が不可欠です。そのため、カスタマージャーニーを作成する際には顧客と直接的な関わりを持つ、営業部門やカスタマーサクセス部門と一緒に作成することが望ましいと言われます。
- そんな行動する?
- そんな行動、どうやって把握するの?
と会話が関係者間から聞こえてきたら要注意です。
お客さまに関する知見が不足した状態では、売り手側の願望だけが反映されたものとなってしまうので注意が必要です。実務レベルでカスタマージャーニーの利用を考えたときには、顧客がカスタマージャーニーの上のどの位置にいるのかを把握するための仕組みをつくり、適切なコミュニケーションがとれるようにしておかなければなりません。
事実(データ)に基づいたカスタマージャーニーを作成しよう
ここまで、カスタマージャーニーの作成を検討している企業が陥りがちな3つの落とし穴について確認してきましたが、ここからはその対策についてお話ししていきます。
結論から申しますと、事実(データ)に基づいたカスタマージャーニーを作成する、ということが3つの落とし穴に陥らないための対策になります。
事実(データ)を確認せず、仮説や憶測の域を出ない状態のままにペルソナ設定やカスタマージャーニーの作成をしてしまった場合、
- それって、あなたの意見(仮説や憶測)じゃないの?
という疑念を持つ人がどうしても出てきてしまいます。
そのため、できる限り事実(データ)に基づいたカスタマージャーニーを作成する、あるいは以前作成したカスタマージャーニーを見直すことが大切です。
ここからは、事実(データ)に基づいたカスタマージャーニーを作成するための6つのステップについて解説します。
作成の目的を決める
一つ目のステップは、カスタマージャーニー作成の目的を決めることです。前述したとおり、あらかじめカスタマージャーニーの利用目的を示しておかないと、作って満足して終わってしまう可能性が高いです。
作成の目的は、
- 受注数を増やすために、購入判断をしてもらう際にプラスに働いた要因を洗い出したい
- 解約数を減らすために、利用者が利用しなくなってしまうポイントとその要因を洗い出したい
といったように「○○のために、カスタマージャーニーを作成することで△△したい」くらいの粒度では答えられるように目的を決めておきましょう。
事業上のKPIの達成につながる内容であれば、営業部門やカスタマーサクセス部門など他部門への協力も得やすくなります。
顧客データを抽出する
二つ目のステップは、顧客データを分析することです。例えば上記の「受注数を増やすために、購入判断をしてもらう際にプラスに働いた要因を洗い出したい」ということが目的であれば、顧客情報を管理しているデータベースから契約に繋がった顧客のデータを確認し、実際に顧客がとった行動を事実(データ)に基にピックアップしていきましょう。
もしMAを導入していれば、MAで契約した顧客の行動履歴を分析しましょう。展示会、資料請求サイト、ウェビナー、メルマガといった施策の中からどの接点で反応したのかを簡単に確認することが可能です。
あるいは、SFAを導入していれば、どのようなきっかけで具体的な商談に至ったのか、契約につながった顧客はどのようなニーズを抱えていたのか、などについても商談記録から確認することができる可能性が高いでしょう。
MAやSFA(あるいはCRM)といった顧客管理システムに関しては、別記事「顧客管理とは?顧客管理システムの種類やシステム導入時の注意点について」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。
該当者や潜在顧客にヒアリングする
三つ目のステップは、該当者や潜在顧客にヒアリングすることです。抽出したリストから対象を選定し、日頃考えている事や悩みを調査します。
ヒアリングの対象が既存顧客であれば、実際に契約に至るまでの過程について詳しくヒアリングさせていただくようにしましょう。また、既存顧客側から了承がいただけるのであれば、カスタマージャーニーの作成のみに活かすのではなく、商品やサービスの導入事例として自社サイトに掲載させていただくようにすることもおすすめです。
導入事例の作成とインタビューの手順に関しては、別記事「導入事例とは?作成するための5つのプロセスについてわかりやすく解説します」に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。
カテゴリー別に分類して傾向を分析する
四つ目のステップは、カテゴリー別に分類して傾向を分析することです。ヒアリングした内容を付箋に書いてカテゴライズしたり、行動履歴を集計し共通項目を洗い出します。
カテゴリー別に分類するためのセグメンテーションの切り口としては、該当者の属性情報(所属する会社の業種や規模、あるいは職種や役職など)や行動情報(例えば、特定のセミナーに参加している、製品のデモンストレーションを受けているなど)を基にする方法があります。
ペルソナを設定する
五つ目のステップは、ペルソナを設定することです。ペルソナを設定する際には人物を細部まで作ります。基本属性や生活スタイル、思いなどの情報を詳細に設定しましょう。
また、BtoBビジネスにおいてペルソナを設定する際には、個人ペルソナだけではなく、企業ペルソナも設定するようにしましょう。
カスタマージャーニーを作成する
六つ目のステップは、いよいよカスタマージャーニーの作成です。
MAやSFA(あるいはCRM)といった顧客管理システムで日頃から情報を管理することが出来ていれば、顧客データを基に契約した顧客の接触ポイントをピックアップしてプロットし、事実(データ)に基づいたカスタマージャーニーの作成に活かすことができるでしょう。
他にも「契約に至った顧客はA社の事例ページを見ていることが多い」「デモ機の貸し出しを行った見込み客がそのまま契約する割合が高いから、多少費用がかかっても実施すべき」など、本当の効果に繋がったマーケティング施策を確認する手段としても活用できます。
このように、事実(データ)に関する情報を日頃から管理しておく仕組みさえ作っておけば、事実(データ)から逆算して精度の高いカスタマージャーニーを作成することができるようになります。
さいごに
本記事では、カスタマージャーニーの作成している企業が陥りがちな3つの落とし穴とその対策について解説して参りました。
カスタマージャーニーを作成しても活用されない、という状態を防ぐためには、
- 作成の目的を決めておく
- 事実(データ)に基づいてペルソナとカスタマージャーニーを作成する
ということを意識するようにしましょう。
しかし、事実(データ)から逆算して精度の高いカスタマージャーニーを作成するためには、MAやSFA(あるいはCRM)といった顧客管理システムの導入は正直なところ必須です。
近年では比較的安価に利用することができるサブスクリプション型のMAやSFA、CRMが登場しているので、まだ自社では導入していないという場合には、早めに導入することをおすすめします。
さいごになりますが、当社ではBtoBマーケティングの業務に役立つお役立ち資料を複数ご用意しております。マーケティングの基礎知識と実践方法を体系的にまとめたお役立ち資料などもご用意しておりますので、ご活用いただければ幸いです。