※KPIに関する詳しい解説(KGIやKSFとの違いも解説に含みます)はこちら
KPIとは、組織の目標達成度合いを定量的に表現したものです。組織が目指すゴールに到達するための成功の鍵を数値で定義したもの、と言い換えてもいいでしょう。
本記事では、KPI指標の中でも「セールス全般」で使われるKPI指標の意味・設定例について解説していきます。
目次
一人当たり売上高
一人当たり売上高とは、一人の営業担当者がどれだけの売上高を上げているかをみるための指標です。この指標の数値が高ければ、少ない営業担当者で高い売上高を上げていることになり、営業組織の生産性が高いと判断できます。
計算方法としては、以下の方法があります。
・売上高÷営業担当者数
設定例としては「今期の営業目標は、営業メンバー一人当たり5,000万円の売上が必要だ」といったような設定の仕方が多いです。この数字は、売上目標や営業担当者数、会社の一人当たり人件費などと合わせて検討されることが多いです。
一人あたり売上高は、後述する一人当たり売上総利益(粗利)と合わせて確認するようにしましょう。極端な話ですが、売上高がいくら高くても、売上総利益(粗利)が大きくなっていないのであれば、安易な安売りや採算を度外視した無理な受注などが発生している可能性があります。
このように、一人あたり売上高は営業担当者と営業組織の生産性を測る上で重要な指標ではありますが、売上総利益(粗利)の確保と両立できないのであれば、必ずしも生産性が高い状態とはいえません。
一人当たり売上総利益
一人当たり売上総利益とは、一人の営業担当者がどれだけの売上利益(粗利)を上げているかをみるための指標です。一人当たり獲得粗利と呼ばれることもあります。
計算方法は、以下の方法があります。
・(売上高-売上原価)÷営業担当者数
設定例としては「今年度の一人当たりの売上高の目標は1億円、一人当たりの売上総利益は売上の50%に当たる5,000万円を目指そう」といったように、売上高の目標に対して○○%と設定されることが多いです。一人当たり売上総利益は、一人当たりの営業担当者が会社にどれだけの利益をもたらしているかを確認する上でも重要な指標になります。
売上の数字が高くても、売上総利益が低ければ、会社にもたらされる実質的な収益も低くなってしまいます。一人当たり売上総利益まで着目することによって、営業担当者の平均的な生産性を確認することもできますし、平均以上の売上総利益を出している担当者とその傾向(例えば、売上総利益率が高い商品をより販売している、など)や、平均以下の売上総利益しか出せていない担当者とその傾向(例えば、値下げしての販売が多く売上総利益率が低い、など)を把握することが容易になります。
新規顧客数
新規顧客数とは、その期に新たに獲得した顧客の数をみるための指標です。どのようなビジネスであれ、既存顧客との付き合いだけで成長できる企業はありません。常に次の成長の原動力となる新規顧客の開拓は必要です。それゆえ多くの企業では、売上高や売上総利益、総顧客数のみを見るのではなく、この指標も同時に確認するのです。それゆえ、この指標は企業の今後の成長性を表しているともいえます。
設定例としては「今後の成長戦略を考えると、既存顧客維持率を80%とした場合、今年は50件の新規顧客数が必要だ。これを10名の営業担当者に目標として割り振ろう」といったような決め方になります。
この数字は特に事業責任者や営業責任者が意識する数字です。実務的には営業担当者個々人にも新規顧客獲得数の目標が割り当てられることが多いです。売上高や売上総利益が好調でも、新規顧客の開拓ができていなければ中長期的な売上停滞を招きます。そのため営業がしっかりしている企業では、営業担当者に売上目標だけでなく新規顧客開拓数もKPIとして設定しているケースがほとんどです。
また、新規顧客数をカウントする際には、何を持って新規顧客とみなすのかの線引きを決めておくことが必要です。例えば、既に親会社と付き合いがある状態で、最近分社化した子会社と取引を始めたときにそれを新規顧客とみなすか、既存顧客への深耕営業の一環とみなすかということです。企業単位ではなく、購買の意思決定を行う部門単位で新規か否かを判断する方が適切、という場合もあるでしょう。
商談数
商談数とは、自社の商品やサービスを販売することを目的に実施した打合せの件数を表す指標です。商談件数、あるいは案件数と呼ばれることもあります。一般的には、この数字が多いほど自社の商品やサービスを提案できる機会が多いことを示します。
設定例としては「毎月受注数5件を達成するためには、商談からの提案率が5割前後、提案からの受注率が3割前後なので、毎月30件〜40件程度の商談数が必要だ」といったような決め方になります。
商談数をカウントする際にも、何を持って商談とみなすのかの線引きを決めておくことが必要です。ただし、どのくらいの角度以上の打合せを商談とみなすのかは、企業によって判断が異なります。仮に1%でも可能性があれば商談(案件)とみなすということにすれば商談数は増えますが、営業の効率が落ちるため、営業担当者の時間を無駄遣いしてしまうことになりかねません。一方で、50%以上の角度がないと本格的な営業活動は行わないというのであれば、商談数を伸ばすのはなかなか難しいでしょう。
商談数は、商談の前工程に当たるMQLやSQLをどのように定義するかによって、大きく数が増減します。そのため、商談の定義はマーケティングと営業が連携して「このくらいの角度の商談であれば、毎月○○件くらいは必要だ」というように、受注数を最大化させるためにはどのように商談を定義するのが望ましいか、決めるようにしましょう。
提案数
提案数とは、商談に至った見込み客に対し、見込み客の持っている課題に対する解決策としての自社商品やサービスを具体的に提案した件数を表す指標です。提案件数、あるいは、RFP数(提案依頼書数)とも呼ばれます。提案件数を示す指標となるため、この数字が多ければ多いほど、受注できる可能性が高まります。
設定例としては「毎月受注数5件を達成するためには、提案からの受注率が3割前後なので、毎月15件程度の提案数が必要だ」といったような決め方になります。企業によっては、提案数=商談数という判断を行い、提案まで至らない商談を商談数にカウントしていない場合もあります。
BtoBビジネスにおいては、買手側が組織的(複数の関係者間で協議)して商品やサービスの購入を決めます。そのため、売り手側もお客さまの持つ課題に対する解決策として自社の商品やサービスを提案する必要があるケースがほとんどです。必ずしも企画書という形の資料に落とし込む必要がないビジネスもありますが、提案要素が高い業界(IT業界やコンサルティング業界など)では、提案数はKPIとして重要視される傾向があります。
また、注意したい点としては、企業によっては実質的に発注先が決まっているにもかかわらず、体裁的に相見積もりをとる必要があるために他の業者にも提案書の提出を依頼することがある、ということです。このような買い手側の意図を売り手側が見抜くのは容易ではないですが、提案数をKPIとする際には、単純な数だけを追うのではなく、このような「確度」を意識し、トータルとして受注予測をするようにしましょう。
受注数
受注数とは、その名のとおり最終的に受注に至った(見込み客が購入した)件数を表す指標です。成約数と呼ばれることもあります。いかに商談数や提案数が多くても、受注に至らなければ最終的な結果に結びついていないということになります。そういった意味でも、受注数は非常に重要な指標になります。
設定例としては「今期の目標売上10億円を達成するためには、一件当たりの平均受注単価が1,000万円なので、年間の受注数の目標は100件、月当たり9件の受注数を目標にしよう」といったような決め方になります。
受注数は重要な指標ですが、実際の営業活動においては、前後の指標(商談数や提案数)とのつながりや、売上や売上総利益との相関性も確認しながら活用する必要があります。例えば、営業計画外の予期せぬラッキーな受注(代理店が予想よりも多く売ってくれた、特別需要によって買いたいという問い合わせが増えた)が多かったとします。営業計画外からの受注が多い場合、来期以降も同じように受注数を増やすことができるかというと、そこに再現性があるとは言い切れません。
そのため、営業の基礎活動(アプローチ→商談化→提案→受注)からどのくらいの受注が生まれているか、という観点から受注数を確認することも忘れないようにしましょう。
また、受注率を計算する際には、どの活動を母数におくか(商談数をおくか、提案数をおくか、など)で数字が変わってきます。関係者間の認識齟齬につながりやすいので、注意するようにしましょう。
受注期間
受注期間とは、営業案件が受注に結びつくまでに要した時間を表す指標です。どの段階からの機関とするかは企業によって考え方が異なります。営業に要する期間は一般的には短い方がいいと言えますが、業界や金額、商談相手に決裁権があるかどうかなどでも期間に差異が出やすくなります。
設定例としては「今年はコロナ禍の影響もあり景気が悪そうだから、顧客の意思決定期間も伸びるだろう。昨対比で受注期間がプラス1ヶ月程度に収まるようにアプローチ方法を考えよう」といったような決め方になります。
受注期間を把握することにより、営業目標(受注数など)を達成するために、どのくらい前から必要な量の営業活動を始めておく必要があるか、推し量ることができるようになります。また、受注期間の短い顧客に共通する要素(特定の課題を持っているなど)やアプローチ手法を分析することができ、営業組織全体の業務効率化を検討することができるようになります。
価格維持率(値引率)
価格維持率(値引率)とは、商品やサービスの定価に対し、実際の売価がいくらだったのかを表す指標です。営業担当者にとって、楽な販売方法は値引きです。しかし、値引きは売上総利益(粗利)に大きな悪影響を及ぼします。
設定例としては「新製品については5%、他の商品については10%までの値引きであれば認めるが、それ以上の値引きは認めない」といったような決め方になります。
売上が上がっていない営業担当者ほど、安易に値引きをしてでも売上を作ろうとする傾向があります。値引きはある意味麻薬のようなもので、目の前の売上を取れる可能性は高まります。しかし、値下げがどんどん他にも波及してしまうと、全体として必要な売上総利益を確保できなくなったり、ブランドイメージを毀損してしまうことにもつながりかねません。
そのため多くの企業では、事業部別、商品・サービス別、営業担当者別などで価格維持率をKPIとして測定し、安易な安売りが行われていないかをモニタリングしています。この指標は、商品の競争力や営業の規律を反映する数字といえます。
さいごに
以上、今回はセールス全般でよく使われるKPI指標について意味や設定例を解説いたしました。本記事で取り上げたKPI指標は数あるKPI指標のうちの一部分に過ぎませんが、シンプルで使いやすいものを中心にご紹介いたしました。
KPIを設定する際には、KPIを達成し続ければKGIも達成することができるという構造になっているか、などにも注意を払いながら、自社のビジネスにとって適切なKPIを設定するようにしましょう。
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