ポジショニングは、マーケティング・マネジメント・プロセス(R–STP–MM-I-C)の中でも、セグメンテーション・ターゲティングと、マーケティング・ミックス(MM)をつなぐ、マーケティング戦略の中核とも言える重要なプロセスです。
本記事では、ポジショニングとは何か?ということや、ポジショニング戦略を成功させるための4つの条件について、わかりやすく解説していきます。
目次
ポジショニングとは?
ポジショニングとは、ターゲット顧客に自社や自社製品を好ましい形で認識してもらい、競合他社との差別化イメージを図るための活動を指します。マーケティング戦略策定の代表的なフレームワークであるSTPの中核となるプロセスです。
優れた製品であっても、まずその魅力や価値を顧客に認知してもらえなければ、数ある製品の中からターゲット顧客に選んでもらうことはできません。そのため、何がメリットなのか、何が競合他社と違うのかがわかりやすいポジショニングを得ることは、競合他社に対して優位に立つことにつながります。
ポジショニングマップとは?
ポジショニングを検討する際の代表的な手法として、ポジショニングマップがあります。ポジショニングマップとは、まず、ターゲット顧客のニーズにあった訴求ポイント(KBF:購買決定要因)を2つの軸にとり、その中で自社製品を有利な位置に置くことで、魅力を一目でわかるようにする手法です。
ポジショニングマップを活用し、競合他社と自社・自社製品の差別化ポイントを明らかにすることで、ターゲット顧客に対し、便益と独自性(バリュープロポジション)を強調することができるようになります。
ポジショニングマップの作り方
実際に、自社や自社製品のポジショニングマップを作ってみましょう。ここで注意したいのは、ターゲット顧客に自社製品の魅力を伝えようとするときにはどうしてもたくさんの優れた点を伝えたくなってしまうということです。例えば、台所用洗剤であれば、汚れがよく落ちる、漂白できる、一回に使う量が少なくて済む、除菌ができる、手に優しい、など特徴をいくつもあげたくなってしまいます。
しかし、ターゲット顧客の意思決定の時間が短いBtoC向けの製品や、BtoBでも競合製品が多い場合、多くの魅力を伝えようとすると、結局、何が良いのかがわかりにくくなり、ターゲット顧客の印象に残らなくなってしまいます。
一人の顧客が特定の製品について強く認識する特徴は2つまでと言われています。そのため、たくさんある特徴から2つに絞り、それを軸にします。これが、ポジショニングマップの作成において、軸となる訴求ポイントを2つの軸に絞る理由です。
訴求ポイントの軸の決め方
では、ポジショニングマップの2つの軸はどのようにして決めれば良いのでしょうか?適切な軸を決めるためには、まずは自社製品の特徴をいくつも洗い出します。そのとき、機能だけではなく、製品に付随するイメージも出してみることが大切です。先程の台所用洗剤であれば、汚れがよく落ちる、という機能に加えて、人や環境に優しい、と行ったイメージも洗い出すと良いでしょう。
洗い出した自社製品の特徴から、2つの軸を決める必要があります。適切な軸を選ぶためには、大事なポイントが2つあります。
一つ目は、顧客の視点で選ぶことです。例えば、炊飯器や洗濯機などの家電製品について、メーカーとして機能が多いという軸を打ち出したいとします。ですが、もし顧客が操作が簡単な製品を求めていた場合には魅力的だと感じてもらえません。ターゲット顧客のニーズに訴求するポイントを軸に選ぶことが重要です。
二つ目は、競合との差がわかりやすいことです。いくらターゲット顧客のニーズを満たしていても、競合製品も同じであれば、自社製品を選んでもらえるとは限りません。競合と差別化できるかという視点も重要です。
以上の2つを意識しながら、ターゲット顧客に「この製品が好きです。なぜなら〜」と言ってもらえる特徴を2つの軸に選んでください。顧客の共感を得られて競合と差がつく軸を選び、ポジショニングマップ上自社が優位になる立ち位置を検討しましょう。
ポジショニングの例
ポジショニングの例として、アップル社のiPhoneの事例をご紹介します。iPhone発表の際に、スティーブ・ジョブス氏は「アップルが望んでいるものは、どんなケータイよりも賢く、超カンタンに使えるもの。これがiPhoneです。」と説明しました。この説明からもわかるように、iPhoneのポジショニングマップの2つの軸は、賢さ(機能性)と使いやすさになります。
iPhoneの例のように、自社や自社製品の便益と独自性(バリュープロポジション)をわかりやすく表現するポジショニングのアプローチが有効です。
ポジショニング戦略を成功させるための4つの条件
ポジショニングが成功するためには、以下の4つの条件を満たしていることが重要です。
- ポジショニングのターゲットサイズが適切であること
- 売り手の考えるポジショニングが、ターゲット顧客に正確に伝わること
- 売り手の考えるポジショニングに、ターゲット顧客が共感すること
- 売り手である企業自体のポジショニング(企業理念、ポリシーなど)と、製品のポジショニングに整合性があること
ポジショニングが適切であっても、事業を成立させるために有効なターゲットサイズが無ければ、残念ながら成功は望めません。また、企業自体のポジショニング(企業理念、ポリシーなど)と、製品のポジショニングに整合性があり、マーケティング・ミックス(MM)に続くマーケティング戦術との一貫性を担保できていることも大切です。
留意点
ポジショニングにおける留意点について説明します。
一つ目の留意点は、売り手の考えるポジショニングとターゲット顧客の認識には往々にしてズレが生じてしまうということです。例えば、自社は高品質なのに安いというポジショニングをしているつもりが、顧客側は安かろう悪かろうという認識だった、というのはよくあることです。常にターゲット顧客とコミュニケーションを取ったり、定期的にマーケティングリサーチを行ったりしながら、自社のポジショニングがターゲット顧客からどのように認識されているのか把握するようにしましょう。
二つ目に、既存の差別化軸に囚われ過ぎなくてもいいということです。まだ競合が注目していない新しい差別軸を考えることも大切です。例えばソニー社のウォークマンは、発売された当時の既存の差別化軸からすれば、録音機能のない簡易的なラジカセと捉えられる可能性も十分にありました。しかし、外でも音楽を自由に楽しむことができるものといった新しい差別軸を打ち出すことでライバルに差をつけることができのだと思います。顧客が何を魅力と感じているかに注目し、適切なマッピングを行いましょう。
さいごに
ポジショニングの概要とその重要性について、ご理解いただけましたでしょうか?
自社や自社製品のポジショニングは、ターゲット顧客から見た場合、競合他社との相対評価で決まります。そのため、ある時点では通用していたポジショニングが競合他社が増えてきてしまったために差別化につながらなくなってしまう、ということも現実ではおこりえます。
そのため、ポジショニングを強固なものしていくためには、ポジショニングの初期設計に準ずるよりも、アップデート思考で進化していくことが大事かな、とも思っています。自社や自社製品のポジショニングは、一度確立できたと思っても、定期的に振り返りや見直しを図っていきましょう。
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